個人事業主が提出する開業届の書き方とは?提出するメリットもわかりやすく解説

個人事業主として事業を始める際には、税務署に「開業届」を提出する必要があります。書類は1枚とシンプルですが、記載内容に不備があると再提出が求められることも。正しく書けば青色申告の適用や屋号の活用など、多くのメリットが受けられます。本記事では、開業届の書き方を項目ごとにわかりやすく解説し、あわせて提出するメリットや注意点についても丁寧にご紹介します。
開業届とは?個人事業主が提出すべき理由

開業届とは、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人事業主として事業を開始する際に税務署へ提出する書類です。この書類を提出することで、税務署に「事業を始めました」と報告することになり、確定申告や税務処理の前提となる情報が登録されます。
個人事業主にとっての開業届の位置づけ
法人とは異なり、個人事業主になるために特別な登記や許認可は不要です。しかし、事業として所得を得るのであれば、税務署へ開業届を提出するのが基本です。特に青色申告を希望する場合は、開業届の提出が前提条件となっているため注意が必要です。
つまり、開業届は個人事業主が税制上のメリットを得るための第一歩であり、税務署との関係を正式に築く重要な書類なのです。
開業届は誰でも出せる?提出義務はある?
基本的には、継続的に収入を得る意思を持って事業を行う人は、開業届を提出することが推奨されます。たとえばフリーランスのライターやデザイナー、せどりやハンドメイド販売、副業で収入がある人も対象です。
法律上、開業届の提出は「義務」と明記されているわけではありませんが、税務署に対して正しく申告する責任はすべての納税者にあります。また、開業届を出していないと、青色申告ができなかったり、銀行口座や補助金の申請で不利になったりするケースもあります。
開業届を提出すべき理由とは?
個人事業主として活動するなら、開業届の提出には以下のような明確なメリットがあります。
青色申告ができるようになる
最大65万円の特別控除が受けられる青色申告を活用するには、開業届の提出が必須です。節税効果が高く、経費計上の自由度も広がります。
屋号付きの銀行口座が開設できる
開業届に記載した屋号を使って銀行口座を開設すれば、事業用とプライベートの資金管理を分けやすくなります。金融機関によっては、開業届の控えの提示を求められることもあります。
社会的信用が得られる
開業届を提出することで、取引先やクライアントに「事業者として活動している」という証明ができます。特に法人との契約や融資審査などでは、この信用が重要視されます。
補助金・助成金の申請に使える
自治体や中小企業庁が提供する各種の支援制度の中には、開業届の写しを提出書類として求めるケースが多くあります。事業をスムーズに拡大したい方にとっては大きな利点です。
このように、個人事業主が開業届を提出することには多くの実務的メリットがあります。書き方自体も難しくなく、税務署の窓口やWebサイトから簡単に入手・提出できます。
参考:開業届とは?書き方や必要書類、提出するメリットなどを徹底解説【記入例付】
開業届の提出が必要なタイミングと対象者

開業届は、個人事業主として事業を開始する際に提出する重要な書類です。しかし、「いつ出せばいいのか」「自分は提出すべき対象に当てはまるのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
結論からいえば、開業届は事業を始めた日から1か月以内に提出することが推奨されています。また、対象となるのは、事業として継続的に所得を得る意思のあるすべての個人です。たとえ小規模な収入でも、一定の基準を満たせば「開業」と見なされ、提出が求められるケースがあります。
以下では、開業届の提出が必要になる具体的なケースと、副業やフリーランスとして活動している方が該当するかどうかを詳しく解説していきます。
開業届が必要になるケース
開業届の提出が必要となるかどうかは、「継続性」「独立性」「営利性」が判断基準となります。国税庁や各種ガイドラインでも、この3つの要素を持つ事業活動は「開業」と見なされるとされています。
たとえば、以下のようなケースは開業届の提出が必要です。
- 継続的に収益を得る目的で業務を行っている場合
例:自宅でWeb制作業を開始し、複数クライアントから継続的に案件を受注している - 自分の名前または屋号で事業活動をしている場合
例:知人から受託して個人名義でライティング業務を行うフリーランス - 利益を得るために商品を販売している場合
例:ECサイトでハンドメイド商品や中古品を定期的に販売している
これらはすべて「事業所得」が発生する行為とされ、税務署へ開業届を提出することが原則です。なお、事業所得と雑所得の違いは曖昧になりがちですが、営利目的で反復継続して行われるものは、基本的に事業所得として扱われます。
また、開業届の提出は青色申告の申請に必要不可欠です。青色申告を希望する場合は、開業日から2か月以内に「青色申告承認申請書」とともに開業届を出さなければなりません。
したがって、事業をスタートした日が明確になった時点で、速やかに開業届を提出することが理想的です。
副業やフリーランスの場合はどうなる?
近年、会社員をしながら副業をする人や、フリーランスとして独立する人が増えています。こうしたケースでも、開業届の提出が必要かどうかは、その活動の内容や収益規模に応じて判断されます。
副業でも開業届が必要なケース
副業であっても、以下のようなケースでは開業届を提出すべきとされます。
- 毎月のように案件を受注している
- 取引先と契約書を結んで業務を継続している
- 複数のクライアントと取引している
- 将来的に独立・本業化を考えている
これらはすべて「継続性」「独立性」が認められるため、個人事業主として開業届を提出することが望ましいです。税務署としても、副業か本業かではなく、事業としての実態があるかどうかで判断します。
単発・スポット収入は提出不要な場合も
一方で、たまたま報酬を得た程度の収入であれば、開業届を提出しなくても問題ない場合があります。たとえば、1年に1回だけ報酬を受け取った講演や、友人に頼まれて1回だけデザインを作ったなどは、事業としての継続性が認められず「雑所得」に分類される可能性があります。
ただし、収入が少ないから提出しなくてよい、という判断は誤りです。金額の多寡よりも「継続性」や「独立性」が重視されるため、少額の副業でも継続して収入を得ていれば、開業届を提出すべきです。
フリーランスの場合は原則として提出が必要
デザイナーやエンジニア、ライターなどのフリーランスは、原則として開業届を提出する対象です。フリーランスとして複数のクライアントと取引している場合は、明確に「事業」として認識されます。
また、フリーランスは青色申告を活用することで、節税メリットを最大限に得ることができます。そのため、早めに開業届を提出しておくことで、税務処理がスムーズになるだけでなく、社会的信用の獲得にもつながります。
参考:開業届の書き方は?必要なものや手続きする際のポイントなどを解説
開業届の提出期限と提出先

開業届は、個人事業主として事業をスタートする際に、必ず知っておきたい基礎手続きのひとつです。提出のタイミングや提出先を誤ってしまうと、青色申告の適用が受けられなかったり、補助金や融資などの申請がスムーズに進まなかったりする場合があります。
ここでは、開業届の提出期限や提出先について詳しく解説します。書き方だけでなく、提出時期や提出場所も正しく理解しておくことが、個人事業主としての円滑なスタートにつながります。
提出期限は「開業から1か月以内」
開業届の提出期限は、原則として「開業日から1か月以内」と定められています。これは国税庁の公式サイトや各種税務書類にも明記されており、開業届の記入欄にも「開業・廃業等日」という項目があります。
開業日とはいつのこと?
ここで気をつけたいのが「開業日」の定義です。法律上、開業日には明確な定義はありませんが、一般的には以下のいずれかのタイミングが基準とされます。
- 初めて請求書を発行した日
- 初めて業務に関連する経費を支払った日
- 屋号付きの口座を開設した日
- 事業用のホームページやSNSを開設・運用し始めた日
- クライアントや顧客との契約書を締結した日
これらのいずれかが事業活動の開始とみなされることが多く、事業としての「実態」が発生した日が開業日になります。
そのため、たとえば副業からフリーランスに移行した場合などは、どの時点を開業日とするか慎重に検討する必要があります。
開業届の提出が遅れた場合はどうなる?
提出期限の1か月を過ぎたからといって、罰則があるわけではありません。しかし、青色申告の特典を受けたい場合は、提出遅れが大きなデメリットになります。
青色申告を行うには、開業届の提出と併せて「青色申告承認申請書」を開業日から2か月以内に提出しなければなりません。これに間に合わなければ、白色申告での対応となり、最大65万円の控除などの優遇を受けられません。
また、開業届がなければ、個人事業主としての事業活動を証明できないため、以下のような不都合も生じる可能性があります。
- 補助金・助成金の申請ができない
- 屋号付きの銀行口座を開設できない
- 取引先からの信用を得にくい
このように、開業届の提出時期は、税務上・事業上の信用獲得において非常に重要なポイントです。提出期限をしっかり把握し、開業日を迎えたらなるべく早く手続きを進めましょう。
参考:【記入例付き】開業届の書き方や必要書類、提出方法を解説
提出先は納税地を管轄する税務署

開業届の提出先は、個人事業主の「納税地」を管轄する税務署です。納税地とは、一般的には「住民票がある住所地」を指しますが、事業の形態や活動場所によっては「事業所所在地」を納税地とすることも可能です。
納税地の選び方
開業届には「納税地」欄があり、次の3つから選択します。
- 住所地(居住地)
通常の個人事業主はこれを選択するのが一般的です。 - 事業所等
住所以外に事業を営む固定の場所(例:事務所、店舗など)がある場合。 - その他の住所地
上記2つ以外で税務署に届け出た場所がある場合。
納税地によって、提出先となる税務署が決まります。自分の納税地がどの税務署の管轄かを知りたい場合は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページで住所を入力することで簡単に検索できます。
税務署への提出方法
開業届は、以下の3つの方法で提出可能です。
- 税務署の窓口に持参して提出する
控えに収受印をもらえば、後日必要になる場面(銀行口座開設など)で有効な証明書になります。 - 郵送で提出する
控え用にもう1部コピーを同封し、返信用封筒(切手付き)を入れておけば、控えも返送してもらえます。 - e-Taxを使ってオンラインで提出する
マイナンバーカードとICカードリーダー、またはスマートフォン対応が必要ですが、自宅から24時間提出できて便利です。
freee開業やマネーフォワードなどの会計ソフトでは、開業届の自動作成・電子申請にも対応しており、書き方が不安な方にとっては非常に便利なツールとなっています。
開業届の入手方法と準備する書類
個人事業主として事業を始める際には、開業届を入手し、必要な書類とあわせて提出する必要があります。開業届は特別な費用もかからず、手軽に入手・提出が可能です。ただし、提出時にはいくつかの確認書類も必要になるため、あらかじめ準備しておくことが重要です。
ここでは、開業届の入手方法と、提出時に必要な書類について詳しく解説します。正しい書き方とあわせて理解しておくことで、個人事業主としての開業手続きがスムーズに進みます。
開業届の入手方法:税務署/国税庁サイト
開業届の用紙は、次の2つの方法で入手できます。
1. 税務署で直接もらう
全国の税務署では、開業届の用紙を無料で配布しています。最寄りの税務署に出向き、窓口で「個人事業の開業・廃業等届出書をください」と伝えればすぐにもらえます。職員に相談しながら書き方を確認することもできるため、書類に不安がある方にはおすすめの方法です。
2. 国税庁のWebサイトからダウンロード
もっと手軽に済ませたい方は、国税庁の公式サイトから開業届のPDFをダウンロードできます。印刷して手書きで記入することも、PDF形式のままパソコンで入力して印刷することも可能です。
国税庁の「申告・納税手続に関する案内」ページの中にある「個人事業の開業・廃業等届出書」の様式からダウンロードできます。書き方の記載例や記入要領もあわせて確認できるので、初めての方でも安心です。
加えて、freee開業やマネーフォワード開業などのサービスを利用すると、質問に答えるだけで自動的に開業届が作成されるため、書き方に自信がない方には非常に便利です。
提出時に必要なもの(本人確認書類・マイナンバーなど)
開業届を提出する際には、用紙本体に加えていくつかの書類が必要です。不備があると受付ができない場合もあるため、事前に必要書類を確認し、確実に準備しておきましょう。
開業届の提出に必要なもの一覧
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
1部提出用、1部控え用(収受印をもらうため) - 本人確認書類のコピー
運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど - マイナンバーが確認できる書類
・個人番号カード(裏面)
・通知カード+本人確認書類
・マイナンバー記載の住民票の写し - 返信用封筒(郵送提出の場合)
控えを返送してもらうため、切手を貼った封筒が必要です。
なお、e-Taxを利用してオンライン提出する場合は、マイナンバーカードとICカードリーダー、もしくはマイナポータル連携済みのスマートフォンが必要になります。
参考:開業届の書き方(見本付き)と必要な書類や提出方法を解説
開業届の書き方を記入例付きで解説

個人事業主として事業を始める際に提出する「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」は、書類の形式に慣れていない人にとっては難しく感じられるかもしれません。しかし、実際には記載項目さえ理解しておけば、記入はそこまで複雑ではありません。
ここでは、各項目の意味と書き方を丁寧に解説しながら、よくある記入例を紹介していきます。書き方のポイントを押さえて、正確に開業届を作成しましょう。
提出先・提出日
開業届の冒頭には、提出先と提出日を記載する欄があります。
【提出先の税務署名】
この欄には、納税地を管轄する税務署の名称を記入します。国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページで、住所から該当する税務署を検索できます。
記入例:○○税務署長
※「税務署名」の後ろに「長」を付けるのが正しい形式です。
【提出日】
開業届を税務署に提出する日を記載します。実際に窓口へ持参する日、郵送する日、またはe-Taxで申請する日を記入してください。
記入例:令和7年4月1日
和暦での記入が一般的ですが、元号と西暦を併記しても問題ありません。
納税地・住所・氏名・生年月日・個人番号
このセクションでは、あなたの基本情報を記載します。
【納税地】
「住所地」「居所地」「事業所等」のいずれかにチェックを入れ、該当する住所を記載します。通常は住民票のある住所(住所地)を選びますが、事務所などを別に設けている場合は「事業所等」でも構いません。
記入例:〒123-4567 東京都新宿区西新宿1-1-1 サンプルマンション101号室
【上記以外の住所地・事業所等】
自宅以外に事業所がある場合は、その所在地を記入します。該当しない場合は空欄で問題ありません。
【氏名・フリガナ】
本人の氏名を記載し、フリガナもカタカナで記入します。
記入例:山田 太郎(フリガナ:ヤマダ タロウ)
【生年月日】
西暦または和暦で正確に記入します。
記入例:昭和60年1月1日
【個人番号(マイナンバー)】
12桁の個人番号を記入します。正確性が求められるため、間違いのないように注意しましょう。
記入例:123456789012
※郵送や窓口提出の場合、本人確認書類とマイナンバー確認書類の添付が必要です。
職業・屋号・届出の区分・所得の種類
このセクションでは、個人事業主としての活動内容や事業形態を記載します。
【職業】
実際に行う業務の職種を記入します。曖昧な表現ではなく、具体的な業種を記載するのがポイントです。
記入例:Webデザイナー、ライター、イラストレーター、ITコンサルタント、カメラマンなど
【屋号】
屋号とは、事業用の名称のことです。名刺や請求書、銀行口座に使用する名称になります。記載は任意ですが、事業用口座の開設などで必要になることもあるため、あらかじめ考えておくとよいでしょう。
記入例:Yamada Design Studio、Taro Worksなど
※個人名が入っていなくても構いません。
【届出の区分】
新規開業の場合は「開業」にチェックを入れます。「廃業」「変更」などの選択肢もありますが、個人事業を始める場合は「開業」に丸をつければOKです。
【所得の種類】
主に該当するのは「事業所得」ですが、業務内容によっては「不動産所得」「山林所得」などもあります。通常のフリーランスや自営業は「事業所得」にチェックを入れましょう。
参考:開業届の職業・事業の概要欄の書き方は?記載の注意点も解説
開業日・事業の概要・給与支払状況

最後に、事業の開始日や概要、従業員を雇うかどうかを記載します。
【開業・廃業等日】
個人事業を開始した日を記入します。請求書を初めて発行した日や、事業用の契約を結んだ日などが目安となります。
記入例:令和7年4月1日
この日を基準に、青色申告承認申請書の提出期限(2か月以内)が計算されます。
【事業の概要】
ここでは、事業の内容を簡潔に説明します。具体的な業務内容を20〜30文字程度でわかりやすく記載しましょう。
記入例:ホームページ制作およびデザイン業務/ライティング業務を受託し報酬を得る
「職業」欄よりも少し具体的に書くのがポイントです。
【給与等の支払の状況】
従業員を雇って給与を支払う予定があるかどうかを記入します。家族に給与を払う場合も該当します。雇用予定がなければ「無」に丸をつけましょう。
記入例:無(雇用なし)
雇用がある場合は、支払い開始年月日なども併せて記入します。また、源泉所得税の納期の特例に関する申請書の提出有無も問われるため、必要に応じて確認しておきましょう。
参考:開業届の書き方を見本とあわせて解説!提出するメリットや必要書類は?
開業届の提出方法は3つ

個人事業主として開業する際に必要な「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」は、提出方法を3つの中から選ぶことができます。いずれの方法も無料で利用でき、手続き自体はそこまで難しくありませんが、提出方法によって必要な準備や注意点が異なります。
ここでは、税務署に直接持参する方法、郵送による提出、そしてe-Taxを利用したオンライン提出の3つの方法について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。
税務署に直接持参する
最も一般的で確実な方法が、開業届を税務署の窓口へ直接持参して提出する方法です。自分の納税地(通常は住所)を管轄する税務署に足を運び、開業届と必要書類を提出します。
メリット
- その場で職員に記入内容を確認してもらえる
- 不備があってもその場で修正できる
- 控えに収受印(受付印)をもらえる
収受印の入った控えは、屋号付きの銀行口座開設や補助金申請などで事業証明として使える重要な書類になります。そのため、窓口での提出は特に初めて開業する個人事業主におすすめです。
デメリット
- 平日の営業時間内(通常9時~17時)に税務署へ出向く必要がある
- 混雑する時期には待ち時間が発生することも
仕事や育児などで平日に動けない人は、次に紹介する郵送かe-Taxでの提出を検討しましょう。
郵送で提出する
税務署まで行けない場合は、開業届を郵送で提出する方法が便利です。書類を封筒に入れて、管轄の税務署宛に送付すればOKです。
必要なもの
- 開業届の原本(1部)
- 控え用のコピー(1部)
- 返信用封筒(自分の住所を記載し、切手を貼る)
控えには収受印を押して返送してもらえるので、必ずコピーを同封し、返信用封筒も忘れずに入れてください。
メリット
- 自宅にいながら提出できる
- 収受印付きの控えを受け取れる
- 郵便局の営業時間内であれば提出可能
デメリット
- 不備があった場合にやり取りに時間がかかる
- 書類の到着・返送に数日かかる
正確な書き方を把握している人には便利な方法ですが、不安がある場合は記入例をよく確認するか、税務署に電話で問い合わせてから送付するのがおすすめです。
e-Taxでオンライン提出する
デジタルに慣れている方には、e-Taxを使ったオンライン提出が最も効率的な方法です。パソコンまたはスマートフォンから国税庁のe-Taxサイトにアクセスし、必要情報を入力すれば、24時間いつでも提出可能です。
利用に必要なもの
- マイナンバーカード
- ICカードリーダー(またはマイナポータル連携スマートフォン)
- 利用者識別番号と暗証番号(初回登録時に取得)
また、freee開業やマネーフォワードなどのクラウド会計サービスを使えば、開業届の作成からe-Tax提出までを簡単に完結させることも可能です。
メリット
- 自宅から24時間いつでも提出できる
- 税務署に出向く手間が省ける
- 書類の印刷・郵送が不要
デメリット
- マイナンバーカードや環境設定が必要で、初期登録に手間がかかる
- 控えの収受印が紙で手元に残らない(電子データでの控えとなる)
電子データでの控えでも、基本的には銀行口座開設や補助金申請に対応していますが、紙の控えが必要な場合は、郵送または窓口提出が確実です。
参考:開業届の書き方は?提出方法・必要書類などについて徹底解説!
開業届を提出する5つのメリット

個人事業主として事業を開始する際に提出する開業届は、単なる事務手続きにとどまらず、さまざまなメリットをもたらしてくれる重要なステップです。開業届を提出しているかどうかで、税制上の優遇措置を受けられるか、ビジネスを円滑に進められるかが大きく変わることもあります。
ここでは、開業届を提出することで得られる代表的な5つのメリットについて詳しく解説します。これらを理解することで、開業届の提出がいかに重要かを実感できるはずです。
青色申告ができて節税につながる
開業届を提出する最大のメリットのひとつが、「青色申告を選択できるようになること」です。
青色申告は、税務署に事前申請することで認められる申告方法で、最大65万円の特別控除を受けられるなど、白色申告に比べて大幅な節税効果があります。青色申告をするためには、「青色申告承認申請書」を開業届とあわせて、開業日から2か月以内に提出することが条件です。
さらに、青色申告には以下のようなメリットもあります。
- 赤字を最大3年間繰り越して、翌年以降の所得から控除できる
- 家族に支払う給与を「専従者給与」として経費計上できる
- 減価償却資産の特例や、30万円未満の少額資産の即時償却が可能
つまり、開業届を提出して青色申告を選択すれば、節税対策として非常に有利なポジションを確保できるのです。個人事業主として長く安定して事業を続けたい人にとっては、青色申告は必須ともいえる制度であり、その入口にあたるのが開業届です。
屋号付きの銀行口座を開設できる
開業届には、事業名として使う「屋号」を記載する欄があります。ここに記載された屋号をもとに、屋号付きの銀行口座を開設することが可能になります。
例えば、「山田太郎(ヤマダ タロウ)」という名前で、「Yamada Design Works」という屋号を開業届に記載した場合、「Yamada Design Works ヤマダ タロウ」名義の口座を作成できる銀行も多く存在します。
屋号付き口座を持つメリットは次のとおりです。
- 事業用の入出金とプライベートを明確に分けられる
- 請求書や見積書に記載する銀行口座に屋号を表示でき、信頼性が高まる
- 事業としての取引先との関係がスムーズになる
特にフリーランスやクリエイター、個人経営者にとっては、ビジネス上のブランディングの一環としても重要な要素になります。屋号を利用したビジネス展開を考えている場合は、開業届の提出がその第一歩となります。
社会的信用が得られる
開業届を提出していることは、事業を正式に開始した証拠となり、社会的信用の裏付けとなります。個人事業主がビジネスを展開していくうえで、この「信用」は非常に重要です。
以下のような場面で、開業届の控えが「事業実態の証明書類」として役立ちます。
- 取引先との業務委託契約時に提出を求められる
- 銀行や信用金庫での事業資金の融資申請
- オフィス賃貸や設備リースの契約
- クラウドソーシングサイトやマッチングサービスへの登録
一方、開業届を提出していない場合、「事業者ではない」「収入が不安定」と見なされ、契約や審査で不利になることがあります。
開業届を提出することで、対外的に「個人事業主としての信頼性」が可視化され、より良いビジネスチャンスを掴みやすくなるのです。
補助金・助成金申請時の証明書になる
開業届の控えは、各種補助金・助成金の申請時に提出書類として求められるケースが非常に多くあります。
たとえば、中小企業庁や自治体が提供する以下のような制度では、申請時に「開業届の写し」が必須書類とされることがあります。
- 小規模事業者持続化補助金
- 創業支援補助金
- 各市町村の起業支援制度
- 雇用促進関連の給付金制度 など
これらの補助金・助成金は、事業の立ち上げ費用や広報費、設備投資などを一部補助してくれる貴重な制度ですが、開業届の提出が前提となっているため、届出をしていないとそもそも対象になりません。
また、申請時に収受印が押された控えが必要になることもあるため、税務署窓口で提出するか、郵送の場合は控えと返信用封筒を用意しておくのがポイントです。
小規模企業共済や共済年金に加入できる
個人事業主には、会社員のような厚生年金や退職金制度がありません。その代わりとして活用できるのが、「小規模企業共済制度」です。この制度に加入するには、開業届を提出して個人事業主として登録されている必要があります。
小規模企業共済の主なメリットは次のとおりです。
- 掛金は全額が所得控除の対象になり、節税効果が高い
- 共済金は廃業や退職時に退職金のように受け取れる
- 低金利での事業資金貸付制度が利用できる
- 加入条件が比較的緩く、個人事業主でも始めやすい
加えて、他の共済制度や国民年金基金、iDeCoなどと併用することで、老後資金や事業継続リスクに備えることも可能になります。
将来を見据えた資産形成やリスクヘッジを行いたい個人事業主にとっては、開業届を提出し、こうした制度を活用できる状態にしておくことが非常に大切です。
このように、開業届の提出には単なる手続き以上の多くのメリットがあります。特に、税制優遇・信用力・資金調達・社会保障といった重要な分野で大きな効果を発揮するため、個人事業主として事業をスタートする際は、必ず開業届を提出するようにしましょう。
参考:個人事業主が知っておくべき、「開業届の書き方」5つのポイント
開業届の提出に伴う注意点・デメリット

開業届を提出することで得られるメリットは多くありますが、その一方で個人事業主として活動することに伴う注意点やデメリットも存在します。開業届は「事業を始めました」と国に申告する手続きであり、一定の責任や義務も発生します。ここでは、開業届を提出する前に理解しておきたい代表的な3つの注意点について解説します。
配偶者の扶養から外れる可能性
開業届を提出し、個人事業主として収入が発生すると、配偶者の扶養に入れなくなる可能性があります。
たとえば、会社員の配偶者の「健康保険の扶養」や「配偶者控除(配偶者特別控除)」は、被扶養者(あなた)の所得に上限があります。個人事業主としての所得(=売上-経費)が一定額を超えると、扶養から外れ、自身で国民健康保険に加入したり、税金負担が増えたりすることになります。
扶養から外れる基準は次のとおりです。
- 健康保険の扶養:年間所得130万円未満が目安(地域や制度により異なる)
- 配偶者控除:年間所得48万円以下であれば適用可
開業届を提出しただけでは扶養から外れるわけではありませんが、継続的な事業収入があると見なされた場合には影響を受けるため、注意が必要です。
失業手当が受けられなくなる
開業届を提出して個人事業主として活動を開始すると、雇用保険からの失業手当(基本手当)は原則として受給できなくなります。これは、失業保険が「求職活動中で、就労していないこと」が前提となっているからです。
たとえば、会社を退職後すぐに開業届を出してフリーランスとして働き始めた場合、「すでに就労している」と判断され、失業手当の支給対象外になります。
退職後に一時的に失業手当を受け取りたい場合は、開業届の提出時期を調整するか、ハローワークで「再就職手当」の制度を活用するなどの工夫が必要です。
また、失業手当と開業届のタイミングを誤ると、支給された給付金の返還を求められるケースもあるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
確定申告が必須になる
開業届を提出して個人事業主となった場合、所得の多寡にかかわらず、毎年「確定申告」が義務となります。会社員時代のように年末調整で税金処理が完結するわけではなく、収入・経費・所得税などを自分で計算して申告・納税する必要があります。
確定申告を怠ると、以下のようなペナルティが課される可能性があります。
- 無申告加算税
- 延滞税
- 最悪の場合は税務調査の対象になる
開業後すぐに収入が少なかったとしても、経費計上や青色申告による赤字繰越のメリットを受けるためには申告が必要です。
そのため、開業届を提出したら、日々の帳簿付けやレシート・領収書の保管、会計ソフトの活用など、確定申告に向けた準備を早期に始めることが重要です。
参考:開業届の書き方は?記入方法と提出方法を法人・個人事業主に分けて解説
開業届と一緒に提出を検討したい書類

開業届は個人事業主として事業を開始するための基本的な届出ですが、税務上のメリットを最大限に活用するためには、あわせて提出しておくべき書類が複数あります。これらの書類は任意提出ではあるものの、節税効果や事務手続きの簡素化につながる重要な届出です。
ここでは、開業届と一緒に提出を検討すべき代表的な3つの書類について紹介します。
青色申告承認申請書
「青色申告承認申請書」は、個人事業主が青色申告制度を利用するために必要な届出書です。この申請書を税務署に提出することで、以下のような青色申告の特典を受けることが可能になります。
- 最大65万円の特別控除
- 赤字の3年間繰越控除
- 専従者給与の経費計
- 償却資産の特例など
注意点として、提出期限は開業日から2か月以内とされており、期限を過ぎるとその年は白色申告となってしまいます。開業届と同時に提出することで、スムーズに青色申告を開始できます。
青色事業専従者給与に関する届出書
「青色事業専従者給与に関する届出書」は、家族に支払う給与を経費として認めてもらうために必要な書類です。
たとえば、配偶者や子どもが事業に従事している場合、その労働に対して給与を支払い、それを必要経費として計上するには、この届出書の提出が必要です。
この書類も、給与支払を開始する前に税務署に提出する必要があるため、開業と同時に提出しておくと安心です。なお、給与額には「労働の対価として妥当な金額」であることが求められます。
源泉所得税の納期の特例に関する申請書
従業員や専従者に給与を支払う場合、原則として毎月源泉所得税を納付する義務が発生します。しかし、「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を提出すれば、年2回の納付(7月・1月)にまとめることができます。
この特例は、常時雇用する従業員が9人以下の個人事業主を対象としており、小規模事業者にとっては手続き負担を軽減できる便利な制度です。
給与支払を予定している場合は、開業届とあわせてこの申請書も提出することで、税務処理が簡素化され、余計な納付忘れを防ぐことができます。
個人事業主の開業届に関するよくある質問

個人事業主として開業届を提出する際や、提出後の手続きの中で、多くの人が抱える疑問があります。この章では、実際によくある3つの質問についてわかりやすく解説します。開業届の提出の可否が税務や事業運営にどう影響するのか、また、提出後のトラブルや変更時の対応方法など、実務に即した回答をまとめました。
開業届を提出しないとどうなる?
開業届は、個人事業主として事業を開始した際に税務署へ提出する任意の届出書です。法律上、必ずしも提出が義務付けられているわけではありませんが、提出しないことによるデメリットやリスクは非常に大きいです。
まず、開業届を提出しないと、次のような不利益があります。
- 青色申告ができない:青色申告をするには開業届と「青色申告承認申請書」の提出が必要です。白色申告では特別控除や赤字繰越などの恩恵が受けられません。
- 社会的信用が得られない:屋号付きの銀行口座を開設できなかったり、取引先との契約で開業届の写しを求められた場合に対応できなかったりします。
- 補助金や助成金の申請ができない:開業届の提出が、創業支援制度などの申請条件になっているケースが多いため、提出していないと申請すらできない場合があります。
- 税務署から雑所得扱いにされるリスクがある:継続性・独立性が認められる業務であれば、本来は事業所得として扱われるべきですが、開業届を出していないと「雑所得」とみなされる可能性が高くなります。これにより、経費の計上や青色申告が認められないことも。
このように、開業届を提出しないことで得られるメリットはほとんどなく、むしろ税制上も社会的にも不利な状況になる可能性が高いため、事業を始めたら速やかに開業届を提出するのが賢明です。
開業届の控えをなくした場合の対処法
開業届を提出すると、税務署から「収受印付きの控え」が返却されます。この控えは、銀行口座開設や融資・補助金申請などで事業の証明として使う重要な書類です。しかし、何らかの理由で紛失してしまった場合はどうすればよいのでしょうか?
結論から言えば、開業届の控えは再発行できません。そのため、紛失を防ぐためには、提出時に控えのコピーを取って保管する、スキャンしてデータ化しておくなどの対策が必要です。
ただし、税務署に「開業届を提出した事実の証明」を依頼することは可能です。対応方法は以下のとおりです。
開業届提出済みの証明方法
- 税務署で「開業届の写し」を閲覧する
本人確認書類を持参し、窓口で閲覧を申し出ることで確認できる場合があります。 - 「開業届を提出済みであることを証明する書面」の交付を依頼する
税務署に事情を説明し、証明書に代わる書面の発行をお願いできることもあります(応じるかは税務署の判断による)。 - 再度開業届を提出する(変更・再提出扱い)
特に問題がなければ、同じ内容で再提出し、新たに控えを取得するという対応も可能です。
とはいえ、最も望ましいのは提出時に控えを確実に受け取り、大切に保管することです。郵送で提出する場合は、控えと返信用封筒を同封するのを忘れないようにしましょう。
開業後に内容を変更したいときは?
個人事業主として活動を続ける中で、屋号の変更、事業内容の拡大、住所の移転など、開業届に記載した内容を変更したい場面が出てくることがあります。このような場合には、原則として「変更届」を提出する必要があります。
具体的には、以下のような変更があった場合、変更の届出を行うのが適切です。
- 事業所の住所が変わった(自宅から事務所へ移転など)
- 屋号を変更した
- 主たる業務の内容が変更された(例:デザイン業からコンサル業へ)
- 納税地を変更した(引っ越しなど)
届出の方法
変更があった場合には、再度「個人事業の開業・廃業等届出書」を作成し、変更内容を記載して提出します。既存の届出の内容に上書きされる形となるため、以下の点に注意して記入しましょう。
- 書式は「開業届」と同じ様式を使用
- 「変更」にチェックを入れ、該当する変更項目を明記
- 提出先は変更後の住所地を管轄する税務署が基本(ケースによって異なる)
事業内容の変更程度であれば、軽微な修正として届出が不要なこともありますが、取引先や融資審査で記載内容の整合性が問われる可能性もあるため、正確な届出を心がけましょう。
スムーズに開業するためのポイントまとめ

個人事業主としてスムーズに事業をスタートさせるためには、開業届の提出をはじめとした一連の準備を段階的に進めることが重要です。まずは、事業の開始日を明確にし、1か月以内に開業届を提出しましょう。これにより、青色申告の申請や屋号付き口座の開設など、多くの制度を活用できるようになります。
また、開業届の提出と同時に、「青色申告承認申請書」や「青色事業専従者給与に関する届出書」などの関連書類も提出しておくことで、税務面のメリットを最大限に享受できます。
提出方法は、窓口・郵送・e-Taxの3つから選べるため、自分のライフスタイルや準備状況に合わせて柔軟に対応可能です。控えの取得も忘れずに行い、後日の銀行口座開設や補助金申請に備えておきましょう。
事業を始めた後は、確定申告に備えた帳簿づけやレシートの管理も欠かせません。開業準備と並行して、会計ソフトの導入や記帳体制の整備も進めておくことが、安定した事業運営の第一歩となります。