副業するときも開業届は必要?個人事業主になるメリット・デメリットも解説

副業を始めた際、「開業届は出さなければいけないの?」と迷う方は多いかもしれません。実は、副業であっても継続的に収入を得る場合は、個人事業主としての開業届を提出することが推奨されます。開業することで青色申告が可能になるなどのメリットがある一方、税務上の義務や手間も発生します。本記事では、副業でも開業届を出すべきかどうかの判断基準と、個人事業主になるメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
副業でも開業届は必要?

副業を始めるにあたって、「開業届は提出すべきか?」という疑問を抱く方は少なくありません。結論から言うと、副業でも「事業所得」が発生する場合には、原則として開業届の提出が必要です。開業届を提出することで「個人事業主」としての活動が公式にスタートし、青色申告による節税など多くのメリットを受けられるようになります。
一方で、すべての副業が必ずしも開業届の対象となるわけではありません。たとえば、「雑所得」に該当する副業や、継続性のない単発の収入であれば提出は不要です。開業届の提出要否を判断するには、自身の副業が「事業」と言えるかどうかを見極めることが重要です。
以下では、副業で開業届が必要なケース・不要なケース、そして収入が少ない場合でも提出すべきかどうかについて詳しく解説します。
副業で「開業届が必要なケース」とは
開業届の提出が必要となるのは、「継続的に収益を得ることを目的とした事業」を行っている場合です。たとえば以下のような副業が該当します。
- Web制作やライティングなど、個人のスキルを活かした受託業務
- ハンドメイド商品のネット販売(BASEやminne、メルカリShopsなど)
- 物販・せどり(Amazonや楽天市場での転売を含む)
- コンサルティング業や講師業、写真撮影など定期的に請け負う業務
これらの副業では、対価として報酬を得るだけでなく、経費の発生や継続的な活動が見られることから、税務署の判断としても「事業所得」とみなされる可能性が高くなります。事業所得であれば、個人事業主としての開業届を税務署に提出することが求められます。
また、開業後には青色申告特別控除(最大65万円)を適用できるため、税負担を抑えられる大きなメリットがあります。
開業届が不要な副業のパターン
一方、以下のような副業では、開業届を提出しなくても問題ない場合があります。
- アンケートサイトやポイントサイトの収入
- フリマアプリでの不用品販売(仕入れていないもの)
- スポット的なアルバイトや単発の業務委託
- 原稿料や講演料など、趣味の延長としてたまに収入を得る程度の活動
これらは継続性や事業性が乏しいことが多く、「雑所得」として扱われることが一般的です。雑所得であれば、開業届の提出義務はありません。ただし、所得が一定以上であれば確定申告は必要です。
たとえば、副業で得た収入がアルバイトやスポット業務によるものでも、それが頻繁に繰り返されるようであれば、税務署から事業所得と判断されることもあります。そのため、「一時的かつ偶発的な収入」か「継続的な事業」かを見極める必要があります。
参考:副業する会社員も開業届は必要?デメリットや個人事業主になるには?
副業の収入が20万円以下でも開業届を出すべきか?

会社員が副業で得た所得(収入-経費)が年間20万円以下であれば、確定申告は不要とされています(※住民税の申告は必要)。この「20万円ルール」によって、「収入が少ないなら開業届を出さなくてもよい」と考える方も多いですが、それは正確ではありません。
開業届の提出義務は「所得金額」ではなく、「事業を開始したかどうか」によって判断されます。つまり、収入が少なくても、継続的に副業を行う意思があり、今後の発展性も見込んでいる場合は、開業届の提出を検討すべきです。
また、青色申告を希望する場合は、開業届の提出とあわせて「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この申請には開業届の提出が前提となるため、節税を考えるなら早めに開業届を出すことが有利です。
副業としての事業がまだ小規模でも、「将来的に大きくしたい」「経費を正当に計上したい」「屋号を持ちたい」などの目的があれば、個人事業主として早めに開業届を提出するメリットは大きいでしょう。
そもそも「開業届」とは?
副業を始めるにあたってよく耳にする「開業届」。しかし、具体的にどのような書類なのか、なぜ提出が必要なのかを正しく理解している人は意外と多くありません。ここでは、開業届の基本的な役割と意義について解説します。
開業届とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」と呼ばれるもので、個人が事業を始めたことを税務署に知らせるための書類です。この届出を提出することで、個人として事業を営む意思があることを公的に宣言し、税務署の記録に登録されます。
副業であっても、事業性があると判断される場合は、開業届の提出が推奨されます。なぜなら、提出することで「個人事業主」として正式に認められ、青色申告特別控除や事業用口座の開設など、さまざまなメリットが得られるからです。
開業届の提出は法律で義務付けられているわけではないため、「出さなくても罰則はない」と思われがちですが、開業後に得られる税制上の優遇措置を受けるためには、この書類の提出が欠かせません。
では、開業届を提出すると何が変わるのか、次の章で詳しく見ていきましょう。
開業届を出すと「個人事業主」になる
開業届を提出すると、税務署においてその人は「個人事業主」として登録されます。つまり、開業届を出すことで、自分自身が営む事業に対して正式な事業主として認められ、以後はその立場で所得税や消費税などの納税を行うことになります。
副業であっても、継続的に事業を行っている場合には、開業届を出すことで次のような変化が生じます。
- 個人事業主として確定申告の形式が変わる
白色申告ではなく青色申告が可能になり、最大65万円の特別控除を受けることができます(要件を満たす場合)。これにより、所得税の節税効果が大きくなります。 - 事業用口座やクレジットカードを開設しやすくなる
屋号付きの銀行口座を開設することで、プライベートと事業の資金を分けやすくなり、経理管理もスムーズになります。 - 帳簿の義務が発生する
青色申告を希望する場合は、複式簿記による帳簿の作成・保存が求められます。白色申告でも簡単な収支内訳書の作成が必要です。 - 各種控除や給付金の対象になりやすくなる
小規模企業共済、助成金や補助金の申請など、事業者向けの制度を利用できるようになります。
また、個人事業主になることで、ビジネスに対する意識や責任感も高まりやすく、将来的な独立や法人化を見据えた準備段階としても有効です。副業から本業へとステップアップしたいと考える方にとって、開業届の提出は大きな第一歩と言えるでしょう。
参考:副業で個人事業主になるメリットは? 手続き方法や注意点を徹底解説
提出先・提出期限・費用などの基本情報

開業届を提出する際には、以下のような基本的な情報を押さえておく必要があります。手続き自体は非常にシンプルで、時間もかかりません。
提出先
開業届は、事業主の納税地を管轄する税務署に提出します。原則として、自宅住所を納税地とするケースが多いため、住まいのある地域の税務署に提出すれば問題ありません。提出方法は以下の3通りから選べます。
- 税務署の窓口に直接持参
- 郵送で提出
- e-Taxを利用してオンラインで提出
最近では、freee開業やマネーフォワード開業などのツールを使って、開業届をオンライン上で簡単に作成・提出することも可能です。
提出期限
開業届は、「事業開始日から1か月以内」に提出することが推奨されています。ただし、提出が遅れても罰則はありません。ただし、青色申告特別控除を受けたい場合には、開業届に加えて「青色申告承認申請書」も、事業開始から2か月以内に提出しなければなりません。
この期限を過ぎると、その年の青色申告ができなくなり、白色申告での確定申告となってしまうため注意が必要です。
費用
開業届の提出に費用はかかりません。税務署の窓口でも、e-Taxでも、郵送でも無料で受け付けてもらえます。副業のスタート段階でお金をかけたくない人にとっても、気軽に始めやすい制度と言えるでしょう。
必要書類と記入内容
開業届に記入する主な項目は以下の通りです。
- 納税地(住所)
- 屋号(任意)
- 職業(例:Webデザイナー、物販業など)
- 事業の概要(どんな内容の事業を行うか)
- 開業日
- 青色申告の有無 など
記載内容に難しいものはなく、事前にある程度副業の方針が決まっていればスムーズに記入できます。
副業で開業届を提出するメリット
副業で収入を得るだけであれば、必ずしも開業届を提出しなければならないわけではありません。しかし、継続的に事業を行い「個人事業主」として活動することを考えているなら、開業届の提出は多くの面でメリットがあります。
開業後には税制面での優遇措置が受けられるだけでなく、事業の信頼性を高めたり、資金管理をしやすくするなどの実務的な利点も得られます。以下では、副業でも開業届を提出すべき4つの主なメリットを詳しく見ていきましょう。
青色申告特別控除が使える
副業でも開業届を提出して「個人事業主」として認められると、確定申告の際に「青色申告」を選択できるようになります。青色申告には複式簿記による帳簿付けや申請書の提出など一定の手続きが必要ですが、それに見合うだけの大きな節税効果が得られる点が魅力です。
中でも特に注目すべきなのが、「青色申告特別控除」です。これは、次のような控除を受けられる制度です。
- 最大65万円の控除:複式簿記による帳簿作成と電子申告(e-Tax)を行うことで、所得から最大65万円を差し引くことができます。
- 簡易帳簿でも最大10万円の控除:白色申告より少しだけ手間をかけることで、10万円の控除を受けることも可能です。
この控除により、副業で得た所得に対する課税対象が大きく減り、結果的に支払う税金が少なくなります。例えば、副業で年間50万円の所得がある場合、65万円の控除を使えば、課税対象がゼロになり、所得税がかからなくなることもあります。
青色申告特別控除を利用するには、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」の提出が必要です。開業後2か月以内が提出期限のため、忘れずに申請を行いましょう。
参考:フリーランスは開業届を提出すべき?開業届の書き方や提出方法を解説
経費を幅広く計上できる

個人事業主として認められると、確定申告において副業にかかった経費を幅広く計上できるようになります。たとえば、副業で次のような支出がある場合、それらを必要経費として所得から差し引くことが可能です。
- パソコンやスマートフォンなどの機器代
- ネット回線や電気代の一部(在宅ワークの場合)
- サーバー代・ドメイン費用(Web運営の場合)
- 打ち合わせの交通費や通信費
- 外注費やデザイン費
- 書籍やセミナー参加費 など
これらの経費は、副業を通じて「収入を得るために必要だった」ことが明確であれば、開業後の確定申告時に計上できます。経費を正しく記録し、領収書を保存しておくことで、税金の負担を大きく減らすことができます。
ただし、プライベートと業務の支出が混在するケース(例:自宅の電気代やスマホの通信費)では、按分(あんぶん)と呼ばれる方法で事業用の割合を適切に計算する必要があります。
白色申告でも経費の計上はできますが、青色申告の方が控除額が大きく、記帳方法を整えることでより多くの支出を正当に経費として扱える点が大きな利点です。
損益通算・赤字の繰越が可能になる
開業届を提出し、青色申告を行うことで得られるもう一つの大きなメリットが、「損益通算」と「赤字の繰越控除」です。
損益通算とは?
副業が赤字(必要経費が収入を上回る状態)になった場合でも、その赤字を本業(給与所得など)と相殺できる制度です。これにより、副業の赤字分だけ本業の課税所得が減少し、結果として所得税の負担が軽くなります。
例:給与所得500万円、副業赤字30万円 → 課税対象は470万円になる
赤字の繰越控除とは?
副業で発生した赤字を当年だけでなく、翌年以降3年間にわたって繰り越すことができる制度です。初年度に赤字が出ても、2年目・3年目に黒字化した際、その赤字分を差し引いて申告できるため、事業の立ち上げ期における税負担を軽減できます。
これらの制度は、青色申告をしている個人事業主のみが利用可能です。副業として個人事業を始めた初年度や、まだ売上が安定しない時期には特に有効で、開業届を提出する大きな動機となります。
事業の証明として使える
副業でも、開業届を提出することで「個人事業主であることの証明」として活用できるようになります。これは、さまざまな場面での信用力向上につながります。
たとえば以下のようなシーンで、事業者としての証明書類が必要になります。
- 事業用の銀行口座やクレジットカードの開設
- 小規模企業共済や国民年金基金への加入
- 補助金・助成金の申請
- 事業向けの融資・ローンの申し込み
- 屋号名義の契約(Webサービス、郵便、保険など)
個人で事業を行っていることを第三者に証明する方法としては、開業届の控え(税務署の受領印付き)がもっとも一般的です。名刺に屋号を入れる際も、開業届で登録した名称があると信頼性が高まります。
また、副業で受託業務を請け負う場合、取引先から「開業しているか?」と確認されることがあります。その際、開業届の控えを提出すれば、スムーズに契約を進められる可能性が高くなります。
副業であっても、開業届を提出して個人事業主としてのステータスを得ることで、税制面・信用面ともに多くの恩恵が受けられます。副業を本格的に育てていきたい、あるいは今後の独立・起業を見据えて活動している方にとっては、早い段階での開業届提出が非常に有効な一手となるでしょう。
参考:サラリーマンをしながら副業で個人事業主になるメリット・デメリットや手続き方法など
副業で開業届を出すデメリット

副業での開業届の提出は、青色申告や経費計上などの恩恵を受けられる一方で、注意すべきデメリットも存在します。とくに、社会保険や税制、会社との関係に関わる点は、副業をしている会社員にとって無視できない要素です。
以下では、個人事業主として副業を行う際に起こり得る4つの代表的なデメリットについて解説します。開業後に後悔しないためにも、事前に把握しておくことが重要です。
失業手当の受給資格を失う可能性
会社を退職した場合、本来であれば一定の条件を満たすことで「失業保険(雇用保険の基本手当)」を受け取ることができます。しかし、副業として開業届を提出し、個人事業主として登録されている場合、求職者とはみなされず、失業手当の受給資格を失う可能性があります。
ハローワークでは、「就職の意思と可能性」があるかどうかが失業手当の受給要件のひとつとされています。副業とはいえ開業届を提出していると、「すでに自営業を始めている=求職活動中ではない」と判断されやすくなり、受給が難しくなるのです。
とくに退職後に副業を本業化しようとしている人や、万が一に備えて失業手当を頼りにしたいと考えている人にとっては、大きなデメリットとなります。
社会保険の扶養から外れることがある
副業で個人事業主となった場合、所得が一定以上になると、配偶者の社会保険の扶養から外れる可能性もあります。たとえば、専業主婦(夫)が副業を始め、開業届を出して事業を行うと、以下のような影響が出る可能性があります。
- 年間の所得が130万円以上(地域や保険組合により異なる)になると、扶養認定が外れる
- 国民健康保険および国民年金への加入義務が発生し、保険料・年金負担が大幅に増加
副業による収入が増えても、結果として手元に残る金額が少なくなる可能性があるため、事前に所得の見込みと社会保険の影響をよく確認しておく必要があります。
また、開業後に「扶養内で働きたい」と考えている場合は、青色申告による控除や経費計上を上手く活用して、課税所得を抑える工夫も検討しましょう。
参考:開業届の提出にはデメリットもある! 出したほうがよい人・出さなくてもよい人は?
青色申告の帳簿作成が面倒
青色申告をするためには、開業届を提出したうえで「青色申告承認申請書」を税務署に届け出る必要があります。これにより節税メリットは大きくなりますが、その反面、帳簿の作成や管理が必要になります。
とくに65万円控除を受けるためには「複式簿記」での記帳と「貸借対照表」「損益計算書」の作成が求められます。簿記の知識がない人にとっては、これが大きなハードルとなる場合も少なくありません。
とはいえ、最近ではfreeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを活用することで、会計の知識がなくても簡単に青色申告の帳簿付けが可能です。多少の費用はかかりますが、時間と手間を省きつつ、正確な申告ができるという点で大いに役立ちます。
開業が会社にバレるリスク
副業をしている会社員の中には、「会社に副業がバレたくない」という理由で開業届の提出をためらっている人も多く見られます。実際に、開業届を出すことで会社に知られる可能性はゼロではありません。
もっとも一般的なバレるきっかけは、住民税の通知です。確定申告を行うと、副業所得に基づいた住民税が課税され、その情報が会社に届くことで副業が発覚するケースがあります。
このリスクを回避するためには、確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に設定することが有効です。これにより、副業分の住民税通知が会社に届かなくなり、発覚リスクを大幅に下げることができます。
ただし、会社が副業を禁止している場合や、副業に厳しい姿勢を取っている場合は、就業規則の確認と自己責任のもとで慎重に判断することが求められます。
副業で開業届を出すことには多くのメリットがある反面、社会保険や会社との関係、確定申告に伴う手間といったデメリットも存在します。これらのリスクを把握したうえで、開業後の手続きや対応策をしっかり準備しておくことが、安心して副業を続けるための鍵となります。
参考:副業の開業届はいくらから提出が必要?20万円を超える場合?
開業届の提出方法と手順

副業を始めて事業として継続する意思がある場合、開業届を提出することで正式に「個人事業主」としての活動を開始できます。開業届の提出はそれほど難しくなく、流れに沿って必要書類を揃え、正しく記入・提出することで完了します。
この章では、開業届の提出に必要な準備から提出方法まで、3つのステップで丁寧に解説します。あわせて、freeeなどのクラウドサービスを活用した簡単な提出方法についても紹介します。
ステップ1:必要書類の準備
開業届の提出にあたって、まずは必要書類を準備することから始めましょう。副業として開業する場合も、本業と兼ねていても、基本的な準備内容は同じです。
必要な書類
- 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
税務署の窓口、または国税庁の公式サイトからPDFでダウンロード可能です。手書きまたはパソコンでの入力どちらでも構いません。 - 本人確認書類の写し(e-Taxで提出しない場合)
運転免許証やマイナンバーカードのコピーを用意しておくと安心です。 - 青色申告承認申請書(希望者のみ)
青色申告を希望する場合は、開業届と同時にこの申請書も提出します。提出期限は「開業から2か月以内」なので、あわせて提出するのが一般的です。
あると便利なもの
- 印鑑(任意):窓口提出の場合に使用することがあります。
- マイナンバーカード(e-Tax利用時)
開業届はシンプルな構成なので、必要書類の準備は30分もあれば十分です。
ステップ2:開業届の記入方法
開業届は1枚のシンプルな書類ですが、正しく記入することでスムーズに受理され、開業後の手続きも問題なく進められます。以下の項目に注目して記入しましょう。
主な記入項目とポイント
- 納税地
原則として「住所地」を記載します。自宅で副業を行う場合もその住所で問題ありません。 - 職業
自分の副業内容に合った職業名を記入します(例:Webデザイナー、ライター、物販業など)。 - 屋号(任意)
事業の名前をつける場合に記入します。空欄でも構いませんが、屋号付き口座などを作る際に便利です。 - 事業の概要
簡潔に具体的な事業内容を記載しましょう。例:「ECサイトでの輸入雑貨の販売」「クラウドソーシングでのライティング業務」など。 - 開業日
実際に副業として収益を得ることを想定して始めた日を記入します。遡って申告することも可能ですが、青色申告の期限との関係に注意しましょう。 - 所得の種類
一般的には「事業所得」にチェックを入れます。副業がアルバイトなどの場合は「給与所得」になりますが、個人で受託する仕事は「事業所得」として申請します。 - その他の届出提出の有無
青色申告を希望する場合は「有」にチェックし、「所得税の青色申告承認申請書」を同時に提出します。
正しく記入できたら、コピーを1部取って控えとして保管しておきましょう。提出後、受領印を押された控えは、銀行口座開設や助成金申請などで使用できます。
ステップ3:提出方法(窓口・郵送・e-Tax)
開業届は以下3つの方法で提出できます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分に合った方法を選びましょう。
1. 税務署の窓口に持参
最も確実な方法で、その場で不備を確認してもらえます。控えもその場で受け取れるため、すぐに証明が欲しい人にはおすすめです。
- 受付時間:平日8:30〜17:00
- 持参物:記入済みの開業届、本人確認書類、印鑑(念のため)
2. 郵送で提出
税務署へ行く時間がない場合は、郵送提出も可能です。
- 控えを返送してもらう場合は、開業届のコピーと返信用封筒(切手付き)を同封
- 郵送記録を残したい場合は「簡易書留」がおすすめ
3. e-Tax(電子申告)で提出
マイナンバーカードとカードリーダー、またはスマホによる本人認証が必要ですが、オンラインで24時間いつでも提出可能です。
- 確定申告もe-Taxで行う予定なら、最初からオンライン提出しておくと効率的
- 控えもPDFでダウンロードでき、保存・印刷可能
参考:副業している会社員でも個人事業主になれる?開業方法や確定申告のやり方を解説!
freeeなどのサービスを使えば簡単に提出できる
最近では、開業届を手軽に作成・提出できるクラウドサービスも充実しています。とくに、副業を始めたばかりの個人事業主にとって、こうしたサービスは大きな助けになります。
おすすめの開業サポートツール
- freee開業
スマホやPCで質問に答えるだけで、開業届や青色申告申請書を自動作成可能。e-Taxとの連携機能もあり、初心者でも安心して使えます。 - マネーフォワード開業
税理士監修のガイド付きで、必要書類の作成から提出までを丁寧にサポート。記帳サービスとの連携もスムーズです。
メリット
- 難しい記入項目を自動補完してくれる
- 書類作成に不備が出にくい
- 郵送提出に必要なPDF出力が可能
- スマホだけで完結できるサービスもあり
こうしたサービスを利用すれば、「書き方がわからない」「税務署に行く時間がない」といった不安を解消しながら、スムーズに開業届を提出することができます。
このように、副業で個人事業主になるための開業届の提出は、手順さえ把握すれば簡単に完了します。とくにクラウドサービスを活用すれば、開業後の会計処理や確定申告も含めて一元管理できるため、副業と本業を両立したい人にとって理想的な選択肢となるでしょう。
副業で開業すると会社にバレる?

副業で開業届を提出し、個人事業主として活動を始める際に、多くの会社員が気にするのが「会社にバレるのでは?」という点です。副業禁止の就業規則がある場合や、上司や同僚に知られたくないという心理的な理由から、バレるリスクを最小限にしたいというニーズは高まっています。
結論から言うと、開業届を出したからといって税務署から会社に連絡がいくことはありません。ただし、別のルートから副業が発覚することがあります。とくに注意したいのが、「住民税の徴収方法」です。
バレる原因は「住民税の徴収方法」
会社に副業がバレる主な原因は、確定申告を行ったあとの「住民税の通知」です。
会社員が給与を受け取っている場合、会社は毎月の給与から住民税を天引き(特別徴収)し、その金額を市区町村に納めています。ところが、副業によって事業所得が発生し、確定申告をすると、その分の住民税も新たに発生します。
このとき、住民税の課税通知が会社に届くと、「本業の給与所得に見合わない住民税額」が記載されていることで、副業の存在が会社に知られるきっかけになります。
たとえば、本業で年収500万円程度の人が、毎月の住民税が急に高くなった場合、会社の経理担当者が「副業しているのでは?」と疑う可能性があるというわけです。
開業後に青色申告などで節税を行っていても、課税対象となる所得が増えれば住民税も増えるため、結果的に会社に気づかれるリスクは高まります。
会社に知られたくない場合の対策(普通徴収の選択)
副業をしていても会社に知られたくない場合は、「住民税の徴収方法」を工夫することでリスクを大幅に軽減できます。具体的には、確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」にすることが重要です。
確定申告書の「住民税に関する事項」欄には、
- 特別徴収(給与から天引き)
- 普通徴収(自分で納付)
のいずれかを選択する項目があります。ここで「普通徴収」にチェックを入れることで、副業所得にかかる住民税の通知が自宅に届き、会社には通知されません。
ただし、確実にバレないとは言い切れない点もあります。たとえば、市区町村の税務担当が誤って副業分も特別徴収として処理してしまうケースや、経理処理のミスなども考えられます。副業が会社の利益相反になる恐れがある場合などは、最初から開業を控える判断も必要です。
また、最近は副業を認める企業も増えており、開業届を出すことで会社との信頼関係を保ちつつ、副業の成長を支える環境を整えることも一つの選択肢です。
参考:副業も個人事業主として届け出たほうがいいの?手続きの方法とは
副業で個人事業主になるときの注意点

副業で開業届を提出し、個人事業主として活動を始める場合、単に事業を始めるだけではなく、働き方や法制度、税制に関する基本的な注意点を把握しておく必要があります。
ここでは、副業で個人事業主になる際に特に気をつけたい3つのポイントを紹介します。開業後のトラブルや想定外の出費を避けるためにも、ぜひ事前に確認しておきましょう。
会社の就業規則・副業禁止規定を確認
まず最初に確認すべきは、自分が勤めている会社の「就業規則」です。副業が全面的に禁止されている企業もあれば、申告すれば許可されるケース、事業の内容によって制限される場合など、企業ごとにルールは異なります。
たとえば以下のような点に注意しましょう。
- 同業他社との競業が禁止されている
- 勤務時間外であっても会社の名誉や信用を損なう行為が禁止されている
- 副業の報告義務がある、または事前承認が必要
開業後に問題が発覚すると、懲戒処分や信頼関係の悪化につながる可能性もあるため、開業届を提出する前に就業規則や労務担当者への相談を行うのが賢明です。
社会保険や税金の負担が増えるケース
副業で個人事業主として所得が増えると、その分税金や社会保険料の負担も増える点に注意が必要です。
たとえば以下のような影響が出ることがあります:
- 所得税:副業による所得が増えれば、総所得が増加し、税率も高くなる可能性がある
- 住民税:前述のとおり、副業所得に応じて住民税も増加する
- 国民健康保険・国民年金:扶養から外れる、または会社の健康保険料が増加することもある
特に、配偶者の扶養内で働いている方や、パート・アルバイトをしながら副業をする場合、年間所得が一定額を超えることで扶養から外れ、社会保険料の自己負担が発生します。開業後は収支の見通しを立て、どの程度の所得までなら負担を抑えられるかを試算しておくと安心です。
確定申告が必要なタイミング
副業で得た収入が一定額を超えた場合、開業届の提出有無にかかわらず「確定申告」が必要になります。とくに以下の条件に該当する場合は注意が必要です。
- 会社員で、副業の所得(収入−経費)が年間20万円を超える場合
- 個人事業主として、所得が年間48万円を超える場合(基礎控除適用後)
青色申告を選択している場合は、帳簿をつけて複式簿記に基づいた申告が必要になります。また、青色申告の承認を受けるには、開業届と別に「青色申告承認申請書」を開業後2か月以内に提出しておく必要があります。
副業で複数の収入源がある場合も、すべての所得を合算して申告する必要があるため、開業後は日々の記帳や領収書の保管など、事業者としての管理が求められます。
副業で個人事業主になることは、収入の柱を増やすチャンスであると同時に、税金や保険、会社との関係に配慮が求められる取り組みでもあります。開業後にスムーズに事業を進めるためにも、今回ご紹介した注意点をしっかり確認し、準備を整えたうえでスタートしましょう。
参考:個人事業主になるには?副業でも開業届は必要?フリーランスとの違いやなれない人の特徴
開業届に関するよくある質問

副業で個人事業主として活動を始める際には、開業届に関して多くの疑問が生じるものです。ここでは、読者の方から特に多く寄せられる質問を取り上げ、開業後に不安を感じずに済むよう分かりやすく解説します。
Q. 開業届を出さないとどうなる?
開業届の提出は法律上の義務ではありますが、未提出であっても罰則はありません。ただし、提出しないことによって次のようなデメリットが発生します。
- 青色申告が利用できず、特別控除(最大65万円)が受けられない
- 赤字の繰越や損益通算といった税制上の恩恵を受けられない
- 屋号付きの銀行口座やクレジットカードの開設がしづらい
- 補助金や助成金の申請が難しくなる
また、確定申告において「事業所得」としての申告ができず、「雑所得」として処理されることにより、必要経費の範囲が制限される可能性もあります。副業であっても、継続的な収入が見込まれるなら、開業届は早めに提出するのが得策です。
Q. アフィリエイトや物販も開業届が必要?
アフィリエイトや物販といった副業も、内容と運営実態によっては「事業」とみなされることがあります。次のようなケースでは開業届の提出が望ましいといえます。
- 継続的かつ計画的に収益を上げようとしている
- サイトやSNSを活用して宣伝・集客を行っている
- 外注や仕入れなど、経費をかけて運営している
一方で、「趣味の延長で偶然収入が入った」「たまたま家にあった物を売った」などの一時的な活動であれば、開業届を出さなくても問題ありません。ただし、副業として本格的に収益化を目指す場合には、開業届を提出して個人事業主として活動を始めることが推奨されます。
Q. 会社にバレたくないけど開業したい場合は?
副業が会社にバレる主な原因は「住民税の通知」です。確定申告を行うことで副業所得が課税対象となり、会社を通じて住民税の通知が届くと、副業が発覚するリスクがあります。
このリスクを防ぐには、確定申告時に「住民税の徴収方法」を【普通徴収(自分で納付)】にすることが重要です。これにより、副業分の住民税は自宅に届き、会社に通知されることはありません。
ただし、100%確実に防げるとは限らないため、就業規則で副業が禁止されていないかを確認したうえで、開業するかどうか慎重に判断しましょう。
参考:副業の個人事業主になるタイミングはいつ?会社員が開業するメリットや確定申告を解説
まとめ:副業で開業届を出すべきか、メリット・デメリットを踏まえて判断を

副業で収入を得る人が増える中で、開業届の提出は「個人事業主」として一歩踏み出すための重要な手続きです。提出することで、青色申告による節税や経費計上、損益通算などのメリットを享受でき、開業後の事業を安定的に成長させやすくなります。
一方で、失業手当の受給不可や、扶養から外れるリスク、帳簿作成の手間、会社にバレる可能性などのデメリットも存在します。特に会社勤めをしながら副業を行う場合は、就業規則や税務処理の方法などを事前に確認しておくことが欠かせません。
開業届の提出は義務ではなく「任意」ですが、今後の副業を本格化させたい、将来的には独立を考えているという方には、提出をおすすめします。副業を単なる副収入ではなく、事業として育てていく第一歩として、開業届の提出を前向きに検討してみてください。