個人事業主は開業届をオンラインで提出できる?e-Taxや郵送などの提出法を解説

個人事業主として事業を始める際に必要な「開業届」は、税務署の窓口だけでなく、オンラインや郵送でも提出が可能です。中でも、国税庁の「e-Tax(イータックス)」を利用すれば、自宅にいながらスムーズに手続きが完了するため、忙しい方にも便利です。ただし、方法によって必要書類や準備内容が異なるため、事前の確認が大切です。本記事では、開業届の提出方法として、オンライン・郵送・窓口の違いや注意点をわかりやすく解説します。
開業届とは?提出が必要なケースと提出期限

開業届の概要と役割
個人事業主として事業を始める際に必要となるのが「開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)」です。これは税務署に対して「これから事業を始めます」と申告するための書類で、所得税法第229条に基づいて提出が義務付けられています。
開業届を提出することで、税務署に個人事業主としての情報が登録され、事業に関連する各種税手続きや控除申請が円滑に行えるようになります。たとえば、青色申告をする場合には、開業届の提出が前提条件になります。開業届を提出しておくことで、赤字の繰越や屋号での銀行口座開設、法人クレジットカードの取得など、事業運営上のメリットも数多く得られます。
なお、開業届は紙の書類として税務署へ持参・郵送する方法のほか、e-Taxを利用したオンラインでの提出も可能です。最近ではオンライン提出を選ぶ個人事業主も増えており、特に時間や場所にとらわれず手続きできる利便性が注目されています。
提出が必要なタイミング
開業届は、個人事業主としての事業を「開始した日から1カ月以内」に提出する必要があります(所得税法施行規則第3条)。たとえば、フリーランスとして業務委託契約を結び、実際に報酬を受け取った日を「開業日」とするケースが一般的です。
ただし、準備段階(名刺作成、Webサイト公開、仕入れなど)で開業届を出すことも可能で、その場合は自分の判断で「開業日」を設定できます。副業として個人事業を始める人も、一定の収入が発生したタイミングで開業届を出すべきとされています。
特に青色申告を希望する場合には、原則として「開業日から2カ月以内」に青色申告承認申請書を提出する必要があります。この申請にも開業届が必要になるため、できるだけ早めに開業届を提出しておくことが望ましいでしょう。
提出しない場合のデメリット
開業届の提出は法律上の義務であるため、提出しないまま事業を続けていても「違法」とはされませんが、以下のようなデメリットがあります。
1. 青色申告ができない
最大65万円の特別控除が受けられる青色申告を希望する場合、開業届の提出が前提条件です。提出していないと白色申告しか選べず、節税効果は大きく下がります。
2. 経費計上や帳簿管理に制限がある
青色申告では赤字の繰越や専従者給与の支払い、家事按分の適用など多くのメリットがありますが、それらは開業届を提出している個人事業主に限られます。
3. 屋号での口座開設や取引先との信頼構築に不利
屋号付きの銀行口座やクレジットカードを取得するには、開業届の控えが必要になることがほとんどです。また、開業届を提出していないと、取引先や金融機関から「本当に事業をしているのか」という不信感を持たれる場合があります。
4. 事業に必要な公的制度が利用できないことも
小規模企業共済や創業融資制度など、起業支援のための制度を利用する際にも、開業届の控えが提出書類として求められることが一般的です。
このように、開業届を出さずに個人事業を始めてしまうと、事業の信用性や税制上の優遇措置を失う可能性があります。特に、後から青色申告をしたいと考えたときに開業届未提出が発覚すると、その年の適用を受けられないリスクがあるため注意が必要です。
参考:開業届をオンライン・e-Taxで提出するやり方をわかりやすく解説!事前準備や手順について
開業届はオンラインで提出できる?3つの方法を比較

個人事業主として事業を開始するにあたって必要な「開業届」は、3つの方法で提出することが可能です。従来は税務署へ直接足を運ぶ必要がありましたが、現在では郵送やオンライン(e-Tax)による提出も選択できるようになりました。ここでは、それぞれの提出方法の特徴を比較し、個人事業主にとって最適な手段を選ぶためのポイントを解説します。
提出方法の種類と特徴
開業届の提出方法は以下の3つです。
- 税務署の窓口へ直接提出
- 郵送で提出
- e-Taxを利用してオンラインで提出
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、事業主のライフスタイルや手続きのスピード、提出時の手間によって適した方法が異なります。以下で、各提出方法の詳細を順に見ていきましょう。
税務署へ持参
もっとも基本的な方法が、開業届を紙で作成し、管轄の税務署へ持参して提出する方法です。
【特徴】
- 税務署職員によるその場での確認が可能
- 控えに受領印を押してもらえるため、提出証明がすぐに得られる
【メリット】
- 書類不備の際にその場で指摘を受けられる
- 提出控えを即日で受け取れるため、口座開設などの手続きがスムーズ
【デメリット】
- 平日の開庁時間に税務署へ出向く必要がある
- 地域や時期によっては混雑して待ち時間が発生する
税務署が自宅や職場の近くにあり、平日に時間が取れる個人事業主であれば、最も確実な方法といえます。
郵送
税務署まで出向く時間が取れない人には、郵送による提出が便利です。開業届を紙で印刷し、必要書類を同封して税務署へ郵送します。
【特徴】
- 自宅で完結するため、時間や距離に縛られない
- 控えを返送してもらうために返信用封筒が必要
【メリット】
- 平日に時間が取れない人でも対応可能
- 自宅やオフィスから手続きができる
【デメリット】
- 控えの受領に数日〜1週間程度かかる
- 書類不備があった場合は再提出が必要になる
- 切手代など多少の費用が発生
郵送する際には、開業届を2部(提出用・控え用)用意し、控えに受領印を押して返送してもらうための返信用封筒(切手貼付・住所記入済み)を必ず同封しましょう。
参考:開業届をe-Taxやオンライン、郵送で出すやり方まとめ
オンライン提出(e-Tax)

最も近年注目されているのが、国税庁が提供する「e-Tax」を利用したオンラインでの提出です。紙の書類や税務署への訪問が不要で、すべての手続きがインターネット上で完結します。
【特徴】
- スマートフォンやパソコンから24時間いつでも提出可能
- 控えのデータも電子的に保存可能
【メリット】
- 税務署に行く必要がなく、完全に非対面で提出できる
- 書類の印刷・郵送が不要なため、コストや手間が削減できる
- 提出記録がe-Tax上に残り、後日確認が可能
【デメリット】
- 利用には事前準備が必要(マイナンバーカード、ICカードリーダー、利用者識別番号など)
- e-Taxの操作に慣れていないとややハードルが高く感じる場合がある
特にフリーランスや副業を始めたばかりの個人事業主にとって、開業届をオンラインで提出できるのは大きなメリットです。スマホから提出できる「マイナポータル連携」や電子申告・申請アプリなどもあり、手続きがより簡易化されています。
開業届の提出方法は、時代とともに多様化しており、オンライン提出の利便性がますます高まっています。紙の提出が煩雑に感じる方や、平日に税務署へ行く時間が確保できない方には、e-Taxによるオンライン提出が最もおすすめです。
オンラインで開業届を提出するための事前準備
個人事業主が開業届をオンラインで提出するには、国税庁の「e-Tax(イータックス)」という電子申告システムを利用します。e-Taxを使えば、紙の書類を印刷することなく、自宅からスムーズに開業届を提出することが可能です。
しかし、オンライン提出にはいくつかの事前準備が必要です。ここでは、e-Taxを使って開業届をオンラインで提出するために欠かせない4つの準備項目について解説します。
マイナンバーカード
オンラインで開業届を提出するには、まず「マイナンバーカード」が必要です。マイナンバーカードは、本人確認のための公的な電子証明書を内蔵しており、e-Taxによる電子申請には欠かせません。
マイナンバーカードは、市区町村の役所で申請できますが、交付までに1〜2カ月程度かかることもあります。まだ手元にない場合は、早めに申請手続きを済ませておくとよいでしょう。
なお、通知カード(緑色の紙のカード)ではe-Taxの電子認証機能が使えませんので、必ずICチップ付きの「プラスチックのマイナンバーカード」を用意してください。
ICカードリーダー or 対応スマートフォン
マイナンバーカードをパソコンで読み取るには「ICカードリーダライタ」が必要です。これは市販の機器で、家電量販店やインターネットで購入できます。価格は3,000円前後が一般的です。
一方で、最近のスマートフォンであれば、ICカードリーダーを使わずにマイナンバーカードを読み取ることも可能です。具体的には、NFC(近距離無線通信)に対応したスマホで、専用アプリ「マイナポータルAP」や「e-Taxアプリ」をインストールすることで、カードの読み取りと認証が行えます。
【対応機器の例】
- ICカードリーダー:Sony RC-S300、NTTコミュニケーションズ SCR3310など
- スマートフォン:iPhone 7以降、Android 6.0以降のNFC対応機種
スマホでの提出は、アプリの操作に慣れていれば非常に簡単で、PCよりも手間なくオンライン申請が完了するケースも多く見られます。
利用者識別番号と電子証明書の取得
e-Taxを使うためには、国税庁から発行される「利用者識別番号」が必要です。これはe-Taxを利用するためのアカウントIDのようなもので、インターネット上で無料で取得できます。
【取得方法】
- 国税庁のe-Tax利用開始ページにアクセス
- 「開始届出書」の作成・送信
- 登録後、利用者識別番号と暗証番号がメール等で通知される
加えて、マイナンバーカードに含まれる「電子証明書」も必要です。これは市区町村でマイナンバーカードを取得する際に付帯するもので、有効期間は5年間です。既にカードを持っている方でも、有効期限が切れていないか確認しておきましょう。
電子証明書は、e-Taxでの本人確認・電子署名に使用されます。万が一電子証明書が失効している場合は、市区町村で更新手続きを行う必要があります。
e-Taxソフト(またはアプリ)のインストール
事前準備の最後は、実際に開業届をオンラインで提出するための「e-Taxソフト」または「e-Taxアプリ」のインストールです。これは利用環境によって異なります。
【パソコンを使用する場合】
- 国税庁の公式サイトから「e-Taxソフト(SP版)」をダウンロードしてインストールします。
- Windows・Macの両方に対応していますが、動作環境は事前に確認しておきましょう。
【スマートフォンを使用する場合】
- iOSならApp Store、AndroidならGoogle Playから「e-Taxアプリ」または「マイナポータルアプリ」をダウンロードします。
- アプリから直接開業届を作成・送信できるため、手順も比較的シンプルです。
e-Taxソフトのインストール後は、マイナンバーカードやICカードリーダーを用いて認証を行い、画面の指示に従って開業届を入力・提出していきます。
インストールに関する操作や設定に不安がある場合は、国税庁が提供するマニュアルや「e-Taxヘルプデスク」を活用すると安心です。
以上の準備を整えておけば、個人事業主としての開業届をオンラインでスムーズに提出することができます。特に、平日に時間が取れない方や、印刷・郵送の手間を省きたい方にとって、e-Taxによるオンライン提出は大きなメリットとなるでしょう。
参考:開業届はオンラインで申請できる?税務署に行かずに提出する手順を解説!
e-Taxを使った開業届の提出手順【PC・スマホ対応】

オンラインで開業届を提出する際、多くの個人事業主が活用しているのが「e-Tax(イータックス)」です。e-Taxは国税庁が提供する電子申告・納税システムで、開業届を含む各種税務書類の作成・提出をオンライン上で完結できます。
ここでは、e-Taxを使って開業届を提出する際の具体的な手順を「パソコンで提出する場合」と「スマートフォンで提出する場合」に分けて詳しく解説します。
パソコンでの提出手順
開業届の作成と送信
パソコンからe-Taxを利用して開業届を提出するには、まず「e-Taxソフト(SP版)」または「e-Taxソフト(WEB版)」を使います。どちらも国税庁の公式サイトからアクセス・ダウンロードが可能です。
手順は以下の通りです。
- 利用者識別番号の取得
まずはe-Taxの利用を開始するために「利用者識別番号」を取得します。これはe-TaxのログインIDのようなもので、e-Taxの「開始届出書作成・提出コーナー」からオンラインで申請可能です。 - マイナンバーカードと電子証明書の確認
提出にはマイナンバーカードとその中に搭載されている電子証明書が必要です。有効期限が切れていないか確認しましょう。 - e-Taxソフトのセットアップ
国税庁の公式サイトから「e-Taxソフト(SP版)」をダウンロードしてパソコンにインストールします。Webブラウザで使える「WEB版」もありますが、SP版の方が機能が豊富です。 - 電子証明書の読み取り設定
ICカードリーダーをパソコンに接続し、マイナンバーカードの電子証明書を読み取れる状態にします。 - 開業届の作成
「e-Taxソフト」上で「個人事業の開業・廃業等届出書」のフォーマットに必要事項を入力します。屋号、事業開始日、事業内容、住所、連絡先などを正確に記載してください。 - 署名と送信
入力内容を確認したら、電子署名を付与し、e-Tax経由で提出します。これで開業届の提出は完了です。
控えの保存方法
オンラインで開業届を提出した場合でも、税務署に持参したときと同様に「控え」を残しておくことができます。これは、将来的に屋号口座を開設したり、青色申告申請書などを提出したりする際に必要となる場合があります。
控えの取得方法は以下の通りです。
- 送信直後に表示される「受付結果(受信通知)」をPDFで保存
- e-Taxソフトの送信履歴から「受付番号」や「提出書類の内容」を再表示・印刷可能
- 電子ファイルとして保存し、バックアップを取っておくと安心
なお、紙での押印付き控えが必要な場合は、別途「提出書類等の控え」印刷用PDFをダウンロードし、印刷のうえ保存してください。
スマホでの提出手順
スマートフォンから開業届を提出する方法も整備されており、マイナポータル連携や電子申告・申請アプリを利用することで、より簡単にオンライン提出が可能になっています。
マイナポータル経由の申請
「マイナポータル」は政府が提供する個人向け行政手続きのポータルサイトで、マイナンバーカードを利用した各種申請ができます。e-Taxとの連携によって、スマホから開業届を提出することができます。
主な手順は以下の通りです。
- マイナポータルアプリのインストール
App StoreまたはGoogle Playから「マイナポータル」アプリをダウンロードします。 - マイナンバーカードの読み取り
アプリの指示に従い、スマホでマイナンバーカードを読み取ります。NFC機能を利用して、カードを端末にかざすだけで認証が完了します。 - e-Taxとの連携設定
初回利用時に、e-Taxの利用者識別番号を連携させます。 - 開業届の入力
スマホ上で開業届の内容(氏名、住所、開業日、職業など)を入力します。 - 電子署名を付与して提出
アプリ内で電子署名を付けて、そのまま送信ボタンをタップするだけで完了します。
手続きの簡便さが大きな魅力で、パソコンよりも短時間で済むケースが多く見られます。
電子申告・申請アプリの活用
スマホでの提出には、「e-Taxアプリ」や「マイナポータル連携アプリ」といった専用アプリを活用することもできます。これらのアプリは直感的な操作で開業届の作成・提出ができるように設計されています。
活用手順の一例を紹介します。
- e-Taxアプリをダウンロード
App StoreまたはGoogle Playで「e-Tax」と検索してアプリをインストールします。 - アカウント登録とログイン
利用者識別番号を入力し、マイナンバーカードを読み取ってログインします。 - 提出書類の選択と作成
「個人事業の開業・廃業等届出書」を選び、案内に従って必要情報を入力します。 - 提出・保存
入力後に電子署名を行い、アプリから直接送信。控えはアプリ内に保存できるほか、PDFで出力して保管することも可能です。
アプリによっては他の書類(青色申告承認申請書など)の同時提出も可能なため、開業と同時に複数の届け出を済ませたい個人事業主には特に便利です。
e-Taxによるオンライン提出は、パソコン・スマホのどちらにも対応しており、事前準備をしっかり行えば非常にスムーズに開業手続きを完了できます。個人事業主としての第一歩を、オンラインで効率よく踏み出しましょう。
参考:開業届をe-Taxやオンライン、郵送で出すには?電子申請の方法を解説
オンライン提出のメリット・デメリット

個人事業主として事業を始める際に必須となる「開業届」は、現在ではオンライン(e-Tax)によって自宅からでも提出できるようになりました。従来のように税務署へ出向いたり、郵送の準備をしたりする手間が省ける一方で、オンライン提出には特有の注意点もあります。
ここでは、開業届をオンラインで提出する際のメリットとデメリットをわかりやすく整理し、個人事業主が自分に合った提出方法を選べるよう解説します。
オンライン提出のメリット
1. 24時間いつでも提出できる
オンライン提出の最大のメリットは、時間や場所を問わず手続きができることです。税務署の窓口が開いているのは平日の昼間のみですが、オンラインなら深夜や早朝でも提出可能。仕事や子育てで時間が限られる個人事業主にとって大きな利便性です。
2. 税務署へ行かずに手続きが完了する
税務署までの移動時間や待ち時間をカットできるのも大きなポイントです。特に都市部では混雑や受付時間の制限がある場合も多いため、非対面で完結するオンライン提出は、無駄な時間をかけずに済みます。
3. 書類の印刷・郵送が不要
オンラインでの開業届提出では、書類の印刷や封筒の準備、郵送費などが不要です。電子データ上で完結するため、紙の使用量も抑えられ、環境負荷の軽減にもつながります。
4. 控えや提出履歴をデータで管理できる
e-Taxを通じて提出した開業届の控えや受付通知は、電子データとして保存できます。紙の控えと違って紛失のリスクが少なく、必要なときにすぐ確認・再出力できるのも魅力です。
5. 他の届出書類も一緒に提出できる
e-Taxを使えば、開業届と併せて「青色申告承認申請書」や「給与支払事務所等の開設届出書」などもオンラインで同時に提出可能です。これにより、開業時の複数の手続きを一括で済ませられるため、事務負担が大きく軽減されます。
オンライン提出のデメリットと注意点
便利なオンライン提出にも、いくつかのデメリットや注意点があります。事前に理解しておくことで、スムーズな手続きを行えるようになります。
1. 専用の準備が必要
オンライン提出には、マイナンバーカードや電子証明書、ICカードリーダーまたは対応スマートフォン、利用者識別番号などの準備が必須です。これらを揃えるまでに時間がかかる場合もあるため、急ぎで提出したい人には不向きなこともあります。
2. 操作に慣れるまでやや難しい
e-Taxの操作は、初めて利用する個人事業主にとっては少々わかりにくい部分があります。専門用語が多く、入力ミスが起こりやすいため、不安がある場合は公式マニュアルやサポートを活用するか、外部サービスの導入を検討するとよいでしょう。
3. 紙の控え(受領印付き)がもらえない
e-Taxで開業届を提出した場合、紙の控えに受領印を押してもらうことはできません。電子データによる控えは正式な提出証明として利用できますが、金融機関や取引先によっては紙の提出書類を求められることもあるため、用途に応じて提出方法を選ぶ必要があります。
4. システムメンテナンスや障害に注意
e-Taxシステムは、年末年始や申告時期にシステムメンテナンスやアクセス集中による不具合が発生することがあります。提出期限ギリギリに操作を始めると、間に合わないリスクもあるため、余裕を持って手続きするのが賢明です。
5. スマホ提出は機種やアプリの制限がある
スマートフォンから提出する場合は、NFC対応端末が必要であったり、アプリのバージョンによって正常に動作しなかったりすることもあります。また、アプリからの提出はPC版より機能が限定される場合があるため、事前に機能の違いを確認しておくと安心です。
オンラインでの開業届提出は、時間とコストを抑えたい個人事業主にとって非常に有用な手段です。一方で、事前準備や操作の習熟といったハードルもあるため、状況に応じて紙提出や郵送といった選択肢も検討しましょう。
参考:開業届はオンライン(e-Tax)で提出できる?作成・提出方法を解説
開業届と一緒に提出できる書類

個人事業主として事業を始める際、最初のステップとなるのが「開業届」の提出ですが、実は開業時に合わせて提出すべき関連書類がいくつか存在します。特に、e-Taxなどオンラインで開業届を提出する場合、これらの書類も同時に電子申請できるため、非常に効率的です。
ここでは、開業届と併せて提出が推奨される代表的な3つの書類について、それぞれの役割や必要なケース、提出方法について解説します。
青色申告承認申請書
「青色申告承認申請書」は、所得税の確定申告を青色申告で行いたい個人事業主が提出する書類です。青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除や赤字の繰越控除、専従者給与の支払いなど、多くの節税メリットを享受できます。
【提出タイミング】
- 開業届と同時に提出するのが基本
- すでに事業を始めている場合は、その年の3月15日までに提出が必要
【注意点】
青色申告承認申請書の提出が遅れると、その年の確定申告では青色申告ができなくなります。そのため、開業届を提出するタイミングで一緒に申請するのが最もスムーズです。
【オンライン提出】
e-Taxを利用すれば、開業届と同様にこの申請書もオンラインで提出可能です。入力もセットでできるため、個人事業主の手間を大幅に削減できます。
給与支払事務所等の開設届出書
「給与支払事務所等の開設届出書」は、個人事業主が従業員や家族に給与を支払う場合に必要となる届出書です。たとえば、配偶者を事務作業の補助として雇う、アルバイトを雇うなど、誰かに給与を支払う体制がある場合は、この書類の提出が必要です。
【提出タイミング】
- 給与支払を始めた日から1カ月以内に提出が必要
【対象となるケース】
- 従業員を雇う場合
- 家族に給与を支払う場合(青色事業専従者として)
- 報酬ではなく「給与」として支払う場合
【オンライン提出】
この書類もe-Taxで提出可能です。開業届と合わせて提出することで、給与支払に関連する税務処理もスムーズに始められます。給与支払が予定されている個人事業主は、早めの手続きをおすすめします。
源泉所得税の納期の特例の承認申請書
従業員に給与を支払う場合、事業主は源泉徴収した所得税を毎月または半年ごとに税務署へ納める義務があります。ただし、「源泉所得税の納期の特例の承認申請書」を提出することで、毎月の納付を年2回(1月・7月)にまとめることができます。
【提出タイミング】
- 給与支払開始後、できるだけ早めに提出することが望ましい
- 特に開業初期に従業員を雇う予定がある場合は、開業届と一緒に提出すると便利
【この申請のメリット】
- 源泉所得税の納付が年2回に簡略化されるため、事務負担が大幅に軽減
- 小規模事業主や人手不足の現場にとっては非常に実務的な恩恵が大きい
【オンライン提出】
e-Taxを使えば、開業届・給与支払事務所等の開設届出書と一括でこの申請書も提出可能です。開業と同時に複数の手続きを済ませておくことで、後々の手間や提出漏れを防ぐことができます。
開業届の提出は個人事業主としてのスタートラインですが、青色申告の承認申請や給与支払関連の書類も同時に処理しておくことで、事業運営のスムーズさと節税効果の両方を手に入れることができます。特にオンライン提出なら、これらの書類をまとめて送信できるため、時間的・心理的コストも大幅に削減できます。
参考:開業届をオンラインで提出する流れとは?メリット・デメリットも解説!
開業届を提出するその他の手段・サービス紹介

郵送で提出する際の手順と注意点
開業届は、税務署の窓口やオンライン提出に加えて、郵送による提出も可能です。特に、平日に時間が取りづらい個人事業主や、オンライン手続きに不安がある方にとって、郵送は便利な手段です。
【手順】
- 国税庁の公式サイトから「個人事業の開業・廃業等届出書」をダウンロード
- 必要事項を記入し、2部用意(1部は控え)
- 控えには切手を貼った返信用封筒を同封し、管轄の税務署に送付
【注意点】
- 控えを返送してもらうには返信用封筒が必須
- 書類の記入ミスや漏れがあった場合、再提出が必要になる
- 郵送にかかる日数を考慮し、余裕を持った提出が必要
開業届の控えが手元に必要な場合(屋号口座開設など)もあるため、返送用封筒を忘れずに同封しましょう。
税務署窓口での提出方法
従来型の提出方法として根強いのが、税務署窓口での直接提出です。書類の不備があってもその場で確認・修正ができる点が大きなメリットです。
【手順】
- 開業届を事前に記入(税務署でも記入可)
- 税務署の受付窓口へ持参
- 担当者によるチェックのうえ、受領印付きの控えをその場で受け取る
【ポイント】
- 平日の9時〜17時(昼休憩を除く)の受付が一般的
- 繁忙期(2〜3月)は混雑することがあるため、早めの来訪が望ましい
書類作成が不安な方や、対面での説明を受けながら提出したい方にとっては、安心できる方法といえるでしょう。
無料ツール(freee・マネーフォワード・弥生など)の活用
最近では、個人事業主向けに開業届の作成と提出を支援する無料ツールが登場しています。代表的なものに「freee開業」「マネーフォワード クラウド開業届」「やよいのかんたん開業届」などがあります。
【特徴】
- 必要事項を入力するだけで、開業届を自動作成
- 電子申請にも対応しており、e-Taxと連携可能
- 青色申告申請書や給与関連の届出書も一括で作成・提出できる
【メリット】
- 初めての手続きでも迷わず進められる
- スマホ対応で、移動中や隙間時間にも操作できる
- 作成後すぐに提出できるため、時間の節約にもつながる
これらのツールは、操作性が高くサポート体制も整っているため、特にオンライン提出に不安がある個人事業主にとって心強い味方になります。
参考:開業届がオンラインでできる!スマホから郵送まで開業届を出す方法をまとめました
まとめ:自分に合った方法で開業届をスムーズに提出しよう

個人事業主として開業する際に必要な「開業届」は、税務署の窓口、郵送、オンライン(e-Tax)といった複数の提出手段から選ぶことができます。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分のライフスタイルや手続きの得意・不得意に合わせて最適な方法を選びましょう。
特にe-Taxによるオンライン提出は、時間の制約がある方や効率的に手続きを進めたい方に最適です。加えて、青色申告承認申請書や給与関連の届出も同時に申請できる点が魅力です。
初めての手続きに不安を感じる場合は、freeeやマネーフォワードなどの無料ツールを活用すれば、誰でも簡単に開業準備を進められます。しっかりと準備を整えて、スムーズなスタートを切りましょう。