個人事業主が開業届を出す際の費用は0円!楽に提出する方法とは?

個人事業主として事業を始める際に提出が必要な「開業届」ですが、実はこの手続きに費用は一切かかりません。税務署へ無料で提出でき、青色申告の適用や屋号の使用など多くのメリットが得られるため、早めの提出がおすすめです。とはいえ、「どうやって出せばいいの?」「自宅からでもできる?」と迷う方も多いでしょう。本記事では、費用ゼロで開業届を提出する方法や、自宅からスムーズに手続きを進めるコツをわかりやすく解説します。

個人事業主の開業届とは?出すべき理由とタイミング

個人事業主の開業届とは?出すべき理由とタイミング

個人で事業を始めるにあたって、「開業届」という手続きが必要であることをご存知でしょうか?
これからフリーランスや個人事業主として活動を始めようとしている方にとって、開業届の提出は最初の大きなステップとなります。

開業届は税務署に提出する書類であり、提出そのものに費用は0円です。ただし、提出しないまま事業を開始してしまうと、さまざまな不利益を被る可能性があります。

ここでは、個人事業主として開業届を提出すべき理由とそのタイミングについて、詳しく解説します。

開業届とは?正式名称と役割

「開業届」とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」と呼ばれる書類で、事業を開始したことを税務署に申告するためのものです。

この開業届を提出することにより、以下のような情報が税務署に登録されます。

  • 氏名・住所
  • 屋号(任意)
  • 事業開始日
  • 主たる事業内容
  • 会計方式(青色申告/白色申告 など)

この届出を出すことで、税務署はその人が「個人事業主として活動を開始した」ことを正式に把握することになります。

開業届は、国税庁が提供しているPDFを印刷して記入する方法や、freee開業・マネーフォワード開業などのクラウドサービスを使ってオンラインで作成・提出する方法などがあります。
いずれの方法を選んでも、開業届の作成や提出には一切の費用がかかりません

開業届を提出することにより、個人事業主としての各種特典や手続きがスムーズになります。

開業届は義務?提出しないとどうなる?

開業届の提出は、法律上の「義務」とまではいえません。しかし、提出することで得られるメリットが非常に大きいため、提出を強くおすすめします。

開業届を出さない場合、以下のようなデメリットがあります。

  • 青色申告ができない:最大65万円の特別控除を受けられず、節税が困難になります。
  • 事業用口座が作れない場合がある:屋号付き銀行口座の開設に開業届の控えが必要なケースがあります。
  • 小規模企業共済や国の融資制度を利用できない:開業を証明するための公的書類がなくなるためです。
  • 税務調査時に正当性が問われる可能性がある:事業所得か雑所得かの区別が曖昧になり、税務署とのトラブルに発展する恐れもあります。

また、開業届を提出しないまま事業を行い、売上が出ている場合でも、確定申告の義務は免れません。つまり、提出を怠ったからといって税金が不要になるわけではなく、かえって損をする可能性が高いのです。

freeeやマネーフォワードなどのサービスを利用すれば、無料で簡単に開業届が作成・提出できます。作業時間も10〜15分ほどで済むため、手間を惜しまず、早めに提出しておくのが得策です。

開業届はいつまでに提出すればいい?

開業届は、事業開始から1ヶ月以内に提出することが推奨されています。
これは所得税法第229条に基づいたもので、実際には「1ヶ月以内に提出しなければならない」と規定されているわけではないものの、青色申告の承認を受けるためには提出のタイミングが非常に重要です。

具体的には、青色申告を希望する場合、以下の条件を満たす必要があります。

  • 事業開始から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を提出
  • 同時に開業届も提出しておくことが望ましい

つまり、開業届を出し忘れると、その年は白色申告しかできなくなり、大きな節税メリットを失ってしまうことになります。

また、副業で個人事業を始める場合も、以下のような目安をもとに開業届を提出するタイミングを判断すると良いでしょう。

  • 所得(経費を差し引いた利益)が年間20万円を超える場合:確定申告が必要になるため、開業届の提出が現実的
  • 収益がまだ少ないが今後本格的に活動予定:早めの開業届提出で、青色申告に備えるのが賢明

副業・本業にかかわらず、事業として継続的に収入を得るのであれば、開業届を提出しておく方が安心です。

参考:個人事業主が開業届を提出する場合の費用は0円!税務署を訪れずに済ませる方法も紹介

開業届の提出にかかる費用は?実質0円でできる理由

開業届の提出にかかる費用は?実質0円でできる理由

これから個人事業主としてビジネスを始める際、多くの方が最初に疑問に感じるのが「開業届っていくらかかるの?」という費用面の不安です。
実際のところ、開業届の提出には一切の手数料がかかりません。つまり、税務署に提出するだけなら費用は0円で完結します。

一方で、提出方法や依頼先によっては若干の費用が発生するケースもあります。
ここでは、開業届の提出にかかる費用をパターン別に整理し、なぜ「実質0円」で提出できるのかを詳しく解説します。

税務署での提出費用は無料

個人事業主が開業届を提出する場合、もっとも基本的な方法は税務署へ直接提出することです。
この方法を選んだ場合、提出手数料は一切かかりません。提出先となる税務署は、自宅や事業所の所在地によって決まります。最寄りの税務署に出向いて、所定の書類を提出すればOKです。

開業届の正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」であり、国税庁の公式サイトから無料でダウンロード可能です。印刷して手書きで記入することもできますし、国税庁の「e-Taxソフト(WEB版)」や、freee開業、マネーフォワードなどの無料クラウドサービスを利用して、簡単に作成することも可能です。

税務署の窓口では、その場で記入内容を確認してもらえますし、控えも受け取れます。そのため、「対面で確認してもらいたい」「疑問点をその場で解消したい」という方には、直接提出が安心です。

費用ゼロで開業届を提出したい個人事業主にとって、もっともシンプルで確実な方法といえるでしょう。

郵送提出でかかる可能性のある費用(切手代・コピー代など)

税務署に行く時間が取れない場合や、感染症予防の観点から対面を避けたい場合などには、郵送で開業届を提出することも可能です。この方法も、基本的には費用0円で完結しますが、若干の実費が発生するケースがあります。

具体的にかかる可能性のある費用は以下の通りです。

  • 切手代(送料):開業届を提出するための郵送代として84円〜120円程度(定形または定形外郵便)
  • 返信用封筒・切手:開業届の控えを返送してもらうために必要。切手代と封筒で100円前後。
  • コピー代:提出用と控え用の開業届を印刷する場合、モノクロ印刷1枚あたり10円程度。

合計しても、200円〜300円以内で収まることが一般的です。これらは「手数料」ではなく、純粋に郵送や印刷にかかる「実費」にすぎません。

また、返信用封筒を入れ忘れると控えが返送されないため、開業届の「提出証明」が欲しい方は注意が必要です。控えは、屋号付きの銀行口座開設や融資申し込み時に必要になることがありますので、必ずコピーと返信用封筒を用意しておきましょう。

郵送提出は、直接行く手間を省きつつも、実質ほぼ無料で済む手段として、多くの個人事業主に選ばれています。

参考:個人事業主の開業届の費用は0円!切手代も不要!

税理士に依頼する場合の費用相場

税理士に依頼する場合の費用相場

「自分で書類を作成するのが不安」「事業に専念したいので専門家に任せたい」
このような理由から、開業届の作成・提出を税理士に依頼する個人事業主の方も少なくありません。

ただし、この場合は当然ながら費用が発生します

依頼する税理士や地域によって金額は異なりますが、以下が一般的な費用相場です。

項目 費用相場(税抜)
開業届の作成のみ 5,000円〜15,000円程度
開業届+青色申告承認申請書セット 10,000円〜30,000円程度
顧問契約を前提とした開業サポート 初期費用0円〜(月額1万円前後〜)

とくに、「確定申告を含めて長期的に税務を任せたい」と考えている場合は、顧問契約を結ぶことで開業届の提出を無料で対応してくれる税理士事務所もあります。一方、開業届だけをスポットで依頼する場合は、1万円前後の料金を見込んでおく必要があります。

ただし、開業届の提出自体は非常にシンプルな作業であり、freee開業やマネーフォワード開業などの無料ツールを使えば、専門知識がなくても10〜15分で完了するケースが大半です。
そのため、「開業届だけのために税理士に依頼する必要はない」と判断する個人事業主も多いのが実情です。

とはいえ、以下のようなケースでは税理士に相談する価値があります。

  • すでに複数の収入源があり、税務処理が複雑
  • 法人成り(株式会社化)も視野に入れている
  • 開業時に資金調達(融資)を検討している

自分の状況や今後の事業展開に応じて、税理士のサポートを受けるかどうかを検討すると良いでしょう。

個人事業主が開業届を提出する際の基本的な費用は0円です。税務署の窓口やe-Taxを利用すれば、完全無料で完了します。

郵送提出の場合も、コピー代や切手代を含めても数百円程度で済むため、実質ほぼ無料と言ってよいでしょう。
税理士に依頼する場合のみ、1万円〜3万円程度の費用が発生しますが、長期的な顧問契約などでサポートを得たい場合は選択肢の一つとなります。

無料で簡単に開業届を作成・提出したい個人事業主の方には、クラウドサービス(freee開業など)の活用が最もおすすめです。オンラインでの操作も直感的で、はじめての人でも迷うことなく進められます。

参考:個人事業主に開業届は必須?税務署に提出するメリットと書き方や手続きのポイント

無料で簡単に開業届を作成・提出する3つの方法

無料で簡単に開業届を作成・提出する3つの方法

個人事業主として事業をスタートする際に必ず行いたいのが「開業届の提出」です。開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、税務署に無料で提出できる書類です。

「提出が面倒そう」「手続きが難しそう」と感じるかもしれませんが、実は誰でも簡単に、そして費用をかけずに開業届を提出する方法が3つあります

本記事では、個人事業主が選べる「窓口提出」「郵送提出」「e-Tax(オンライン提出)」の3つの方法を、それぞれの特徴・手順・メリットとともに詳しく解説します。

税務署の窓口で提出する方法

最もオーソドックスな方法が、税務署の窓口で直接開業届を提出する方法です。
税務署で提出する場合、手数料や登録料は一切かからず、完全無料で手続きが完了します。

手続きの流れ:

  1. 国税庁のWebサイトから開業届をダウンロード
    記入例も同ページに掲載されているため、初心者でも安心です。

  2. 必要事項を記入
    個人情報、開業日、屋号、事業の概要、会計の方式(青色申告の予定の有無)などを記載。
  3. 開業届の控えを用意
    税務署に提出する書類とは別に、自分用にもう1部コピーを取って持参しましょう。窓口で控えに受領印を押してもらえます。
  4. 最寄りの税務署に持参して提出
    提出先の税務署は、基本的に自宅や事業所の所在地を管轄する税務署となります。

メリット:

  • 職員に内容を確認してもらえるため、記載ミスや不備の心配がない
  • その場で控えを受け取れるため、証明書類としてすぐに使える
  • 不明点を質問できる

デメリット:

  • 平日の日中に時間を確保する必要がある
  • 混雑時は待ち時間が発生する場合も

「直接確認してもらいながら進めたい」という個人事業主の方にはおすすめの方法です。

郵送で提出する方法

「税務署に行く時間がない」「対面を避けたい」という方には、郵送での開業届提出が便利です。
こちらも基本的には費用は無料ですが、切手代や封筒代など、数百円の実費がかかります。

手続きの流れ:

  1. 国税庁のサイトから開業届をダウンロードし、記入
    もしくはfreee開業やマネーフォワードなどのサービスを使って作成し、印刷。
  2. 提出用と控え用の2部を用意
    提出用と自分用の控え(コピーまたは原本)を1部ずつ準備します。
  3. 返信用封筒と切手を同封
    控えに税務署の受付印をもらって返送してもらうため、返信用封筒(自分の住所・氏名を記入)に切手(84円程度)を貼って同封。
  4. 管轄の税務署宛に送付
    書留などは不要で、普通郵便でOKです。

メリット:

  • 税務署に行かなくてよい
  • スケジュールに縛られず、好きなタイミングで提出できる
  • 全国どこからでも提出可能

デメリット:

  • 控えが返ってくるまでに時間がかかる
  • 不備があった場合、再提出となる可能性がある
  • 返信封筒を入れ忘れると控えがもらえない

控えを必要とする場面(銀行口座開設、融資申請など)を想定する場合は、必ず返信用封筒を忘れずに用意しましょう。

e-Tax(オンライン)で提出する方法

近年増えているのが、e-Taxを利用してオンラインで開業届を提出する方法です。
自宅からパソコンまたはスマートフォンで手続きが完結し、費用は完全無料
さらに、オンラインならではのメリットも多く、もっとも効率的な提出方法として注目されています。

必要なもの:

  • マイナンバーカード
  • マイナンバーカードに対応したICカードリーダー またはスマートフォンのNFC機能
  • 「マイナポータル」または「e-Taxソフト(WEB版)」への登録

手続きの流れ:

  1. e-Taxの公式サイトにアクセス
  2. ログイン後、開業届の様式に入力
    案内に従って、個人情報、開業日、屋号、会計方式などを記入。
  3. 電子署名をして送信
    マイナンバーカードによる電子署名を行い、提出ボタンをクリック。
  4. 受付完了通知を保存・印刷
    提出後、控えとして「受付通知」がPDFで発行されます。

メリット:

  • 自宅から24時間いつでも提出可能
  • 窓口に行く必要も、書類を印刷する必要もない
  • 受付完了通知をすぐに取得できる(控えの代わりに利用可能)

デメリット:

  • マイナンバーカードの取得が必要
  • ICカードリーダーやスマホの設定にやや手間がかかる
  • 初回はシステムに不慣れだと迷う可能性も

近年はスマートフォンのみで完結する「マイナポータル連携」も登場しており、以前より格段に手軽になっています。
「なるべくデジタルで完結させたい」「書類の印刷や郵送が面倒」という個人事業主にとっては、e-Taxが最適な選択肢といえるでしょう。

個人事業主が開業届を提出する方法は、すべて費用0円で行えるのが大きな魅力です。
提出の方法は「窓口提出」「郵送提出」「e-Tax提出」の3種類がありますが、それぞれに特徴があります。

方法 特徴 おすすめの人
税務署の窓口 職員に確認してもらえる 初心者、対面で安心したい人
郵送 外出不要、全国どこからでも可 忙しい人、税務署が遠い人
e-Tax オンラインで完結、スピーディー デジタルに慣れている人、スマホで完結させたい人

いずれの方法も費用はかからず、簡単なステップで完了できます
ご自身のライフスタイルやスケジュールに合った方法を選び、スムーズに開業届を提出して、個人事業主としての第一歩を踏み出しましょう。

参考:【起業したい】個人事業の開業届の費用はいくら?支払いが発生するケースも解説

開業届と一緒に出したい書類とその費用

開業届と一緒に出したい書類とその費用

個人事業主が開業届を提出する際、同時に提出しておきたいのが「青色申告承認申請書」です。
この申請書は、節税に大きなメリットがある「青色申告」を行うために必要な書類であり、提出は任意
ですが、提出しないと青色申告を利用できません

しかも、開業届と同じく青色申告承認申請書も提出費用は0円
提出タイミングや記入方法に少し注意が必要ですが、個人事業主としてスタートを切るなら、開業届とセットで提出するのが基本です。

ここでは、青色申告承認申請書の概要やメリット、費用について詳しく解説していきます。

青色申告承認申請書とは?提出のメリット

「青色申告承認申請書」とは、個人事業主が青色申告制度を利用するために税務署へ提出する書類です。
この申請書を提出することで、個人事業主は以下のような大きな税制上のメリットを受けられます。

青色申告の主なメリット:

  1. 最大65万円の特別控除が受けられる
    複式簿記で帳簿を記帳し、e-Taxまたは確定申告書を提出することで、所得から最大65万円を控除でき、課税所得を大きく減らすことが可能です。
  2. 赤字を3年間繰り越せる
    開業初年度に赤字が出た場合でも、翌年以降の黒字と相殺することができます(純損失の繰越控除)。
  3. 家族への給与を経費にできる
    「青色事業専従者給与」という制度を利用すれば、家族に支払った給与を適正額として経費計上できます。
  4. 貸倒引当金などの会計処理が可能に
    簿記の知識を活かした高度な経理処理が認められ、節税対策の選択肢が広がります。

これらの特典を受けられる青色申告ですが、利用するには事前に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
提出のタイミングも重要で、開業日から2か月以内に提出しなければ、その年は白色申告しか選べません。

つまり、開業届と同時に提出するのが最もスムーズかつ確実なのです。

青色申告承認申請書も費用は0円

青色申告承認申請書の提出には、手数料・登録料などの費用は一切かかりません。開業届と同じく、無料で提出できる国税庁の公式書類です。

提出方法も開業届と同様:

  • 税務署に直接持参する
  • 郵送で提出する
  • e-Taxでオンライン提出する

いずれの方法でも費用は無料ですが、郵送の場合は切手代などの実費が若干かかります。
また、freee開業やマネーフォワード開業などのクラウドサービスを利用すれば、開業届と青色申告承認申請書を同時に無料作成・提出サポートしてくれます。

特にfreee開業では、ガイドに従って情報を入力するだけで、2つの書類を同時にPDF形式で自動生成できます。印刷して郵送することも、e-Tax経由でそのまま送信することも可能なので、個人事業主の初期手続きとして非常におすすめです。

注意点

  • 開業届を先に出して、青色申告承認申請書を後回しにすると、うっかり提出期限(2か月以内)を過ぎてしまうこともあります。
  • 特別控除を受けたい場合は、複式簿記による記帳や仕訳帳・総勘定元帳の作成などが必要です。クラウド会計ソフトの導入を検討するとスムーズです。

個人事業主としてスタートする際には、開業届と青色申告承認申請書を同時に提出するのが鉄則です。
どちらの書類も提出費用は一切かからず、適切な方法でスムーズに完了できます。

青色申告の特典は非常に大きく、税制上の恩恵を最大限に受けるためにも、提出を後回しにせず、開業のタイミングで手続きを済ませておきましょう。

参考:個人事業主の「開業届の費用」は本当に0円なのか?【3つの注意点を解説】

開業届の提出時に注意したいお金と保険のポイント

開業届の提出時に注意したいお金と保険のポイント

個人事業主として開業するにあたって、「開業届を出せばOK」と考える方も多いかもしれません。
たしかに、開業届は費用もかからず手軽に提出できますが、提出によって影響を受ける可能性のある“お金”や“保険”の制度にも注意が必要です。

特に次の3つのポイントは、多くの個人事業主が見落としがちです。

  1. 配偶者の扶養から外れる可能性がある
  2. 失業給付が受け取れない可能性がある
  3. 開業前の支出は「開業費」として処理できるのか?

この記事では、開業届提出の前後で注意すべき、社会保険・雇用保険・税務上の取り扱いに関するポイントを詳しく解説します。

配偶者の扶養から外れる可能性

個人事業主として開業届を提出すると、配偶者の健康保険や年金などの扶養から外れる可能性があります。

会社員の配偶者の被扶養者として社会保険に加入している場合、一定以上の収入があると扶養の条件から外れてしまい、自分で保険料を支払う必要が出てきます。

被扶養者としての条件(例:協会けんぽの場合)

  • 年収130万円未満(かつ同居している場合、被保険者の収入の1/2未満)
  • 収入が一定期間継続的であること

ただし注意すべきなのは、実際に収入が発生していなくても、「開業届を提出した」という事実だけで扶養から外されるケースもあるという点です。

健康保険組合によっては、開業届の写しを提出することを求められ、その内容によって扶養認定の判断がなされます。
結果として、個人事業主=自分で生計を立てているとみなされ、扶養から除外される場合があるのです。

対策としては?

  • 扶養のままでいたい場合は、開業届の提出を慎重に検討する
  • 提出前に、加入している健康保険組合に相談しておく
  • 外れることが決まった場合は、速やかに「国民健康保険」と「国民年金」に加入する手続きを行う

個人事業主として活動を始めることで、社会保険料の負担が大きく増えることもあるため、事前に保険料の試算をしておくことも大切です。

失業給付が受け取れないリスク

もうひとつ、開業届の提出によって影響を受けるのが「失業給付(雇用保険の基本手当)」です。

一般的に、会社を退職した後、一定の条件を満たすとハローワークから失業給付を受け取ることができますが、その条件には「就職の意思があり、かつ就業していないこと」が含まれます

つまり、開業届を提出してしまうと、以下のように判断される可能性があります。

→ 事業を開始した=就職した扱い → 失業状態ではない → 給付対象外

特に注意すべきケース:

  • 退職後に「再就職手当」をもらおうと考えている
  • 雇用保険の受給期間内にフリーランスや個人事業主として活動を始めようとしている

このような場合、開業届を出すと給付資格がなくなってしまう可能性があります。

対策としては?

  • ハローワークでの失業認定が終わるまでは開業届の提出を待つ
  • 「再就職手当」や「就業促進定着手当」など、事業開始後に受け取れる可能性のある制度も検討する
  • 「副業的な活動」にとどめ、申告タイミングを調整する(グレーゾーンだが一定の実務対応はある)

個人事業主として独立するにあたって、失業給付との兼ね合いは重要な判断要素です。
受給中の方は、必ずハローワークに相談したうえで、開業届の提出タイミングを調整しましょう。

開業前の支出は「開業費」として計上できる?

個人事業主が開業する前に発生した支出には、広告費・備品費・事業に関する書籍代・事務所の敷金などが含まれる場合があります。
これらの費用を「経費として計上できるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。

結論から言うと、「開業費」として計上可能です

開業費とは?

「開業費」とは、事業を始めるために必要だった準備費用のうち、開業届を出す前に発生した支出を指します。
たとえば以下のようなものが該当します。

  • 名刺やロゴ制作費
  • 事務所の家具・パソコンなどの備品購入費
  • チラシ制作費や広告出稿費
  • セミナー受講料
  • 書籍や業務関連のサブスクリプション費用

開業費として計上することで、一括で費用にすることも、繰延資産として数年に分けて償却することも可能です。
また、青色申告であれば複式簿記を活用して、正確な帳簿処理が求められますが、その分の節税効果も大きくなります。

記録しておくべきこと

  • 領収書や請求書は必ず保管しておく
  • 日付、金額、用途を明記したメモや台帳を作成しておく
  • 開業日を明確に決め、その前に発生した支出かどうかを分けて整理する

freee会計やマネーフォワードクラウドなどのクラウド会計ソフトを活用すれば、開業費の処理も簡単に行えます。開業前の支出もしっかり経費として活用することで、事業初年度の負担を軽減できます。

個人事業主が開業届を提出する際には、「費用が0円だから簡単に済ませよう」と思いがちですが、社会保険や失業給付、開業前の経費処理といった周辺の制度も正しく理解することが大切です。

  • 扶養から外れることで保険料の自己負担が発生する可能性あり
  • 失業給付の受給資格を失うことがある
  • 開業前の支出を「開業費」として正しく処理すれば節税にもつながる

これらのポイントを踏まえたうえで、タイミングを見て開業届を提出し、個人事業主として安心・スムーズなスタートを切りましょう。

参考:フリーランスが開業届を提出するといくらかかる?年収いくらから開業すべき?

スマホやPCでラクに提出!クラウドサービスを使う方法

スマホやPCでラクに提出!クラウドサービスを使う方法

「個人事業主として開業届を出すのが面倒そう…」と思っている方に朗報です。
現在では、スマホやパソコンから簡単に開業届を作成・提出できるクラウドサービスが多数登場しており、手間も費用もかけずに開業手続きが完了します。

特に人気なのが、「freee開業」や「マネーフォワード開業」といった、会計ソフト連動型のクラウドサービスです。
これらを使えば、画面の指示に従って情報を入力するだけで、数分で開業届が完成。郵送用PDFの生成から、e-Taxを使ったオンライン提出まで、すべて無料で対応できます。

ここでは、こうしたクラウドツールの活用方法と手続きの流れ、そして開業後にも続けて使えるメリットについて詳しく解説します。

freee開業などの無料ツールの活用方法

クラウド会計ソフトで有名なfreee株式会社が提供する「freee開業」は、完全無料で開業届を作成できるオンラインサービスです。
登録はメールアドレスまたはGoogleアカウント等で簡単に行え、特別な書類作成スキルや会計知識も必要ありません。

同様のサービスに「マネーフォワード開業」もあり、こちらも使いやすさに定評があります。どちらのサービスも基本機能は無料で利用でき、開業届と青色申告承認申請書の両方を自動生成できるのが魅力です。

主な特徴

  • すべてのステップがオンライン完結
  • 作成した書類をPDFで出力し、郵送またはe-Taxで提出可能
  • 追加費用なし、完全無料で利用できる
  • 青色申告承認申請書の作成にも対応
  • 屋号や事業内容も簡単に選択入力できる

freee開業では、さらに便利なオプションとして、開業後の事業に役立つチェックリストやガイド、確定申告のための会計ツールとの連携機能も提供されています。

手続きの流れと必要な入力項目

クラウドサービスで開業届を作成する流れは、非常にシンプルです。以下は「freee開業」を例にした標準的な手順です。

手続きの流れ

  1. アカウント登録(メールまたはSNS連携)
  2. 「開業届を作成する」を選択
  3. 必要な情報を入力(以下参照)
  4. PDFファイルで開業届が自動作成される
  5. e-Taxで提出するか、印刷して郵送/税務署持参で提出

主な入力項目:

  • 氏名・住所・生年月日
  • マイナンバー
  • 屋号(任意)
  • 開業日
  • 職業・事業の概要(テンプレート選択可能)
  • 会計方式(青色申告 or 白色申告)
  • 提出先税務署(自動で提案される)

特に便利なのは、職業や業種を選ぶ際にプルダウンから候補を選べる点です。難しい言い回しや専門用語がわからなくても、入力ミスや漏れを防ぎながら書類を作成できます。

作成後のPDFはダウンロードして保存可能。郵送する場合はそのまま印刷すればOK。e-Taxで提出する場合も、同サービスがステップガイド付きでナビゲートしてくれます。

開業後も使えるクラウドサービスのメリット

開業後も使えるクラウドサービスのメリット

クラウド開業ツールの大きな強みは、「開業届の提出」で終わらず、その後の事業運営にも役立つ機能が揃っていることです。特に以下のような機能を継続的に活用することで、個人事業主としての業務効率を格段にアップできます。

1. 会計・確定申告ソフトとしての利用

freee開業やマネーフォワード開業は、それぞれfreee会計、マネーフォワードクラウド会計とシームレスに連携しています。
売上・経費の記帳、帳簿作成、請求書の発行、確定申告書類の作成まで一貫して対応可能です。

特に青色申告をする予定の個人事業主にとっては、帳簿作成と65万円控除の要件を満たすための強力な味方になります。

2. 経営管理に必要な情報が一元化

  • 取引履歴の可視化
  • 銀行口座やクレジットカードとの連携
  • レポート機能でキャッシュフローの確認も可能

これらの機能により、事業の数字を常に把握し、経営判断をスピーディーに下すことが可能になります。

3. 無料〜低価格で使えるプランが豊富

freeeやマネーフォワードは、月額無料〜1,000円台から利用できるプランがあり、起業初期のコストを抑えつつ導入できます。

これから個人事業主として開業を目指す方にとって、「開業届は難しい」「面倒そう」という不安は不要です。
クラウドサービスを活用すれば、スマホでもPCでも、無料でスムーズに開業手続きが完了します。

freee開業やマネーフォワード開業は、初心者にもわかりやすく設計されており、必要な情報を入力するだけで最短10分で開業届が完成。
さらに、開業後も確定申告や日々の会計業務をサポートしてくれるので、長く安心して使えるツールとして非常に優秀です。

手間も費用もかけずに、ラクに開業手続きを済ませたい方は、ぜひこれらのクラウドサービスを活用してみてください。

参考:【個人事業主の開業】届け出や書類・費用についてみんなが知りたいこと

個人事業主の開業届の費用に関するよくある質問

個人事業主の開業届の費用に関するよくある質問

個人事業主として開業届を提出する際、多くの方が共通して抱える疑問があります。
特に副業として活動している場合や、収入が少ない場合など、「自分は開業届を出すべきなのか?」と迷う方は少なくありません。

ここでは、開業届に関するよくある質問とその答えを、実務上のポイントとあわせてわかりやすく解説します。

開業届は副業でも必要?

結論から言うと、副業であっても継続的な事業として収入を得るなら、開業届の提出が望ましいです。
国税庁の基準では、開業届の提出は義務とは明言されていませんが、実際には以下のような基準で判断されます。

開業届を出すべき副業の例

  • 継続的に同じ取引先から報酬を得ている
  • 自ら集客や販売活動を行っている(ハンドメイド、ブログ運営、Web制作など)
  • 在宅ワークやフリーランスとして受託業務を請けている

一方で、単発のアルバイトや、1回限りの業務委託などであれば「事業」とは見なされず、開業届の提出は不要とされる場合もあります。

ただし、副業でも屋号付きの銀行口座を作りたい、青色申告で節税したい、経費を明確に処理したいといった理由がある場合、開業届を出しておくのがベストです。

年収が低くても提出するべき?

年収が少ないからといって、開業届を出さなくてもいいというわけではありません。
むしろ、収入が少ないうちに開業届を出しておくことで、将来的な税務処理や青色申告へのスムーズな移行がしやすくなります。

特に注目したいのは、所得税の申告が必要になるラインです。

  • 本業以外の所得(副業)が年間20万円を超える場合:確定申告が必要
  • 基礎控除(48万円)を超える所得がある場合:事業としての申告が必要

このような場合、開業届を提出して「事業所得」として計上することで、青色申告の適用を受けたり、経費を積極的に計上することが可能になります。

また、開業届を提出すれば「開業費」の計上や、小規模企業共済の加入、屋号口座の開設など、さまざまな制度を活用することができます。

そのため、年収が少なくても、将来的に個人事業主として継続的に活動する予定があるなら、早めに開業届を提出しておくのがおすすめです。

開業届を提出しないと罰則はある?

多くの方が気にされる点として、「開業届を出さなかったらペナルティがあるのか?」という疑問があります。

結論としては、開業届の未提出そのものに対する罰則や罰金は原則としてありません。

しかし、開業届を出さないことで得られなくなるメリットや、のちのちトラブルになる可能性がある点には注意が必要です。

開業届を出さないリスク

  • 青色申告ができない:最大65万円の控除を受けられず、税金が高くなる
  • 事業所得として認められにくくなる:税務署から雑所得と判断され、経費が制限される恐れ
  • 屋号付きの口座やクレジットカードを作れない
  • 補助金・助成金、融資制度が利用できないこともある

つまり、罰則はないものの、開業届を提出することで得られる税制優遇や制度利用のチャンスを逃してしまうというデメリットが大きいのです。

将来的に個人事業主として本格的に活動していく可能性があるなら、迷わず開業届を出しておくのが賢明です。

参考:個人事業主・フリーランスが開業届を出すのにかかる費用は?

まとめ:個人事業主の開業届は0円で簡単に提出できる

まとめ:個人事業主の開業届は0円で簡単に提出できる

個人事業主として新たな一歩を踏み出す際、開業届の提出は避けて通れないステップです。
しかし、実際の手続きは非常にシンプルで、提出にかかる費用は一切なし(0円)。スマホやパソコンを使って、数分で手続きが完了するクラウドサービスも登場しています。

開業届を提出することで、青色申告による節税、事業用口座の開設、補助金や融資の利用など、個人事業主としての活動の幅が大きく広がります

また、開業届と同時に「青色申告承認申請書」も提出しておくことで、最大65万円の控除を受けるための準備が整います。これも費用はかからず、手続きも簡単です。

副業としての活動や年収が少ない場合でも、将来的に本格的な事業につなげたいと考えているなら、開業届は早めに提出しておくのが得策です。

無料かつ手軽に行える開業届の提出を済ませ、安心して個人事業主としてのスタートを切りましょう。
個人事業主の開業は難しくないので、まずは開業届を出すことから始めてみてください。