個人事業主はクレジットカードを分けるべき?メリット・デメリットを解説

個人事業主としてクレジットカードを使う際、「プライベートと事業用を分けたほうがいいのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。実は、カードを分けることで経費の仕分けがしやすくなり、確定申告や帳簿管理の手間を大幅に減らすことができます。
一方で、管理が煩雑になったり、年会費がかかるといったデメリットも。本記事では、個人事業主がクレジットカードを分けて使うべき理由や、そのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
個人事業主はクレジットカードを分けるべき?その理由と背景

クレジットカードを分けるべきか悩む個人事業主は多い
「個人事業主でもクレジットカードをわざわざ分ける必要があるのか?」と疑問を持つ方は少なくありません。実際に、「プライベート用のカードで事業の支払いもまとめている」「分けない方がポイントが貯まりやすい」といった理由で、1枚のクレジットカードを使い回しているケースも多く見られます。
しかし、個人事業主として活動する上では、クレジットカードを分けないことで生じるトラブルや手間が少なからず存在します。特に確定申告の時期になると、「この支払いは経費?それとも生活費?」と領収明細の分類に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
freeeやマネーフォワードといったクラウド会計ソフトを使えばある程度は効率化できますが、それでも「クレジットカードを分けていない」ことで分類作業が煩雑になりやすいのが現実です。また、税理士に相談する際にも、支出の内訳が明確でないと正確な処理が難しくなる場合もあります。
そのため、クレジットカードを分けることは「面倒な手間を増やす行為」ではなく、「将来的なトラブルを防ぎ、経営をスムーズに進めるための準備」として非常に有効なのです。
税務処理・会計管理の観点から見る「分けるべき理由」
個人事業主がクレジットカードを分けるべき最大の理由は、会計処理の明確化と税務リスクの回避です。プライベート支出と事業用経費が混在している場合、次のような問題が発生しやすくなります。
- 経費の仕訳が煩雑になる
- 家事按分の線引きが難しくなる
- 税務調査のリスクが高まる
- 会計ソフトによる自動仕訳の精度が落ちる
特に確定申告では、経費と私的支出を正確に区別する必要があります。クレジットカードを分けていないと、事業用の支出を「事業主借」として処理する必要があり、帳簿上でも複雑な対応を強いられることになります。
また、仕訳の正確性は青色申告の65万円控除を受けるための前提でもあります。仕訳ミスが多ければ税務署から指摘を受ける可能性があり、最悪の場合は控除の取り消しにつながるリスクも考えられます【参考:https://support.yayoi-kk.co.jp/business/faq_Subcontents.html?page_id=619】。
もうひとつのポイントは、会計ソフトとの連携効率です。マネーフォワードクラウドやfreeeなどのソフトでは、クレジットカード明細の自動取り込みが可能ですが、事業用とプライベートの支出が混在していると手動で仕訳を修正する必要が出てきます。事業専用のクレジットカードを使えば、自動で「未払金」処理が可能になり、記帳業務の手間を大きく削減できます。
さらに、税理士に会計業務を委託している場合も、カードを分けていないと支出の用途を逐一説明する必要があり、コミュニケーションコストや確認作業が増えてしまいます。逆にクレジットカードを分けていれば、会計データの整合性がとれやすく、税理士との連携もスムーズになります。
また、楽天カードや三井住友カード ビジネスオーナーズなど、個人事業主でも発行可能なビジネスカードを使えば、年会費無料で経費計上できるクレジットカードも存在します。ポイント還元率も高く、節税と経費削減を両立できる点でも「クレジットカードを分けるメリット」は非常に大きいと言えるでしょう。
参考:個人事業主がクレジットカードを分けないのはNG?分けるべき理由を徹底解説
クレジットカードを分けるメリットとは?

個人事業主が事業をスムーズに運営するには、会計や税務の効率化が欠かせません。その中でも「クレジットカードを分けるかどうか」は、多くの個人事業主が悩むポイントの一つです。
「クレジットカードは1枚にまとめた方がポイントも貯まりやすいし、支払い管理も楽だ」と考える方もいますが、あえてクレジットカードを分けることで得られるメリットは非常に多く存在します。ここでは、主に会計・税務・経営管理・カードの機能面から、それぞれのメリットを解説していきます。
経費仕訳が簡単になり、会計ソフトとの連携もスムーズ
個人事業主がクレジットカードを分けない場合、事業に関係のある支出と私的な支出が混在してしまいます。この状態では、確定申告時の経費仕訳が煩雑になりがちです。毎月の利用明細から経費に該当する支出だけを抽出し、それぞれの勘定科目に分類する作業は、非常に手間がかかります。
一方、事業用クレジットカードを導入すれば、事業に関係する支出のみが記録されるため、仕訳の自動化や効率化が格段に向上します。たとえば、マネーフォワードクラウドやfreeeなどの会計ソフトでは、カード明細を自動で取り込み、過去の仕訳ルールに基づいて分類までしてくれます。
クレジットカードを分けていない場合は「事業主借」などの補助的な仕訳を都度入力する必要があり、手作業が増える上、誤分類のリスクも高まります。特に青色申告で65万円控除を受けたい場合は、帳簿の正確性が求められるため、カードを分けて正確な帳簿管理ができていることが重要です。
税理士に相談しやすくなる
クレジットカードを分けない状態で記帳していると、税理士への相談時に「この支出は事業経費ですか?」「これはプライベートの支払いでは?」といった確認作業が必須になります。やり取りが増える分、税理士とのコミュニケーションコストが上がり、業務のスピードが落ちてしまうこともあります。
しかし、クレジットカードを分けておけば、支出の内容が明確になるため、税理士も帳簿をスムーズにチェックできます。また、クレジットカード明細を提出する際にも「このカードは事業専用です」と伝えるだけで済み、余計な説明の必要がありません。
さらに、税理士報酬が「仕訳数」や「対応工数」によって変動する場合、クレジットカードを分けておいた方が費用を抑えられる可能性もあります。つまり、クレジットカードを分けることは、結果的に税理士費用の節約にもつながるのです。
資金管理の見える化ができる

クレジットカードを分けることで得られる大きなメリットの一つが、資金の流れを明確にできる点です。個人事業主にとっては、「今月はいくら事業にお金を使ったのか」「どれくらいキャッシュフローが動いているのか」を常に把握することが重要ですが、プライベートと混在していると可視化が難しくなります。
事業用のクレジットカードを使えば、事業にかかる支出だけを明確にトラッキングできるため、月ごとの経費や予算オーバーの状況をすぐに把握できます。さらに、カードの管理画面やアプリで利用履歴を確認するだけで、「何にいくら使ったのか」が一目でわかるようになります。
このように支出が見える化されると、予算管理やコスト削減の意識も高まり、健全な経営判断にもつながります。資金繰りが難しい月には、どこで支出を見直すべきかの判断材料としても非常に役立つでしょう。
ビジネスカードなら限度額や付帯特典が充実
多くの個人事業主は「ビジネスカード=法人専用」というイメージを持っているかもしれませんが、実は個人事業主でも申し込めるビジネスカードが多数存在します。たとえば、「三井住友カード ビジネスオーナーズ」や「楽天ビジネスカード」などは、開業届の提出だけで申し込めるケースもあります。
ビジネスカードを活用する最大のメリットは、事業に特化したサービスや機能が利用できることです。具体的には以下のような特典が挙げられます。
- 利用限度額が一般の個人カードより高い
- 経費管理アプリや会計ソフトとの連携機能が標準搭載
- 出張時の旅行保険や空港ラウンジサービスなどのビジネス向け特典
- 追加カードの発行により従業員にも利用させやすい
特に利用限度額が大きい点は、広告費や仕入れなど一時的に大きな支出が発生する業種にとって非常に魅力的です。個人カードでは限度額に引っかかってしまうようなケースでも、ビジネスカードであれば柔軟に対応できる可能性があります。
また、ビジネスカードの年会費は基本的に経費として計上できるため、プライベートカードを使い続けるよりも節税効果を見込める点も見逃せません。年会費無料で優れた特典がついているカードも増えているので、早めに事業用カードとして導入を検討するとよいでしょう。
参考:個人事業主がクレジットカードを分けないリスクとは?個人用と分けるメリット・デメリットを解説
分けない場合のリスクとデメリット

個人事業主がクレジットカードを「分けないまま」事業とプライベートの支払いを一括で管理することには、一見するとメリットもあるように思えます。たとえば、年会費が1枚分で済む、ポイントを集約できる、カードの使い分けに頭を悩ませる必要がない、などです。
しかし、そのような短期的な利便性の裏には、経費処理の混乱や確定申告上のトラブルといった重大なリスクが潜んでいることを理解しておく必要があります。ここでは、個人事業主がクレジットカードを分けない場合に直面しやすい具体的なデメリットについて解説します。
経費処理ミスや確定申告時の混乱リスク
最も大きなデメリットは、事業経費と私的支出が混在することによる仕訳ミスや申告ミスのリスクです。個人事業主が確定申告を行う際、経費にできる支出とプライベートの支出は明確に区別する必要があります。
クレジットカードを分けない場合、明細を一件ずつ確認して「これは事業用、これは私用」と分類する作業が発生します。この仕分け作業が複雑であるほど、誤って私的支出を経費に計上してしまう可能性が高くなります。これは、税務調査時に否認される大きな原因になります。
また、freeeやマネーフォワードクラウドなどの会計ソフトを利用していても、自動仕訳ではすべてを網羅できません。特に家事関連費用(通信費・光熱費など)の按分処理が必要な場合、手動での修正が必要となり、結果として記帳作業の手間や確認作業が増えることになります。
日常的に経理業務をこなす余裕がない個人事業主にとって、このような複雑な処理は大きな負担です。最悪の場合、申告漏れや過剰な経費計上により追徴課税や延滞税が発生するリスクもあります。
青色申告特別控除を受ける際の不整合リスク
個人事業主が青色申告を行う場合、最大65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記による正確な帳簿作成が条件となります。このとき、クレジットカードを分けないで運用していると、帳簿と実際の支出に不整合が生じる可能性が高まります。
たとえば、個人カードで事業用の支払いをした場合、「事業主借」や「未払金」として処理する必要がありますが、これを適切に行っていないと帳簿に不備が生じます。また、経費か私費か判別しづらい支出が多いと、複式簿記上の貸借の整合性が保てなくなる場合もあります。
こうした不整合が続くと、65万円控除を受けるどころか、青色申告の承認自体が取り消されるリスクもあり得ます。税務署に帳簿を確認された際、「支出の根拠が不明」「仕訳が曖昧」などと判断されると、控除が認められない可能性も否定できません。
また、帳簿作成を外部の税理士に依頼していた場合でも、クレジットカードの利用が分かれていないと、内容確認に多くの時間と手間がかかり、税理士報酬の増加につながる恐れもあります。
カード明細の仕分けに余計な手間がかかる

クレジットカードを分けないことで一番感じやすいのが、「明細の仕分けがとにかく面倒」という実務上の問題です。
例えば、1ヶ月のカード明細に20件の支払いがあったとしましょう。そのうち10件がプライベート支出、10件が事業支出だった場合、1件ずつ「これは経費」「これは対象外」と判断する必要があります。特に、コンビニやAmazonなど、プライベートでも事業でも使い得る店舗の支払いは、過去の記録や領収書を見直さなければ正しく判断できません。
このような作業は、毎月継続して発生するものであり、積もり積もると膨大な作業量になります。また、明細の中には仕訳しづらいグレーな支出も含まれるため、個人事業主自身で処理しきれず、「とりあえず経費にしておこう」と安易に判断してしまうリスクもあります。
さらに、明細データをクラウド会計ソフトに連携していても、プライベートと混ざったカードを使っていると自動仕訳機能がうまく機能せず、手作業での修正が頻発します。これではせっかくの効率化ツールも十分に活用できず、結果的に管理コストがかさみます。
このような背景を踏まえると、事業用のクレジットカードを別に用意しておくことが、経理効率を大きく向上させるカギであると言えるでしょう。
参考:個人事業主はクレジットカードや口座を分ける?分けない?メリットと仕訳の違い
クレジットカードを分けるデメリットも理解しよう

個人事業主がクレジットカードを「分ける」ことには、経費管理の効率化や税務処理の明確化といった数々のメリットがあります。しかし一方で、クレジットカードを分けることによるデメリットや注意点も存在します。
実際に、事業用とプライベート用のクレジットカードを完全に使い分けるには、それなりの手間やコスト、意識的な運用が求められます。ここでは、個人事業主が事前に知っておくべき「カードを分けることのデメリット」を解説します。あらかじめ理解しておくことで、実務上のストレスを減らし、適切な運用が可能になります。
年会費や管理コストが増える
クレジットカードを分けることで最初に直面しやすいのが、年会費などの金銭的な負担の増加です。特に、事業用に新たにビジネスカードを契約する場合、個人カードよりも年会費が高いケースが少なくありません。
たとえば、アメリカン・エキスプレスのビジネスカードやダイナースクラブのビジネスカードなどは、年会費が1〜3万円以上かかることもあります。もちろん、これらは事業経費として処理できるため税務上の損ではありませんが、キャッシュフローに余裕がない時期には負担と感じることもあるでしょう。
また、カードの枚数が増えると、管理するアカウントや明細も増えるため、月次の確認作業や経費申請の手間が増える可能性もあります。使用頻度が低い場合は、「本当に2枚必要なのか?」と感じる瞬間も出てくるかもしれません。
ただし、近年では「三井住友カード ビジネスオーナーズ」や「楽天ビジネスカード」のように年会費無料で個人事業主でも発行できるビジネスカードも増えており、これらを選べばコスト面の不安を大きく軽減できます。
ポイントが分散して貯まりにくくなる
クレジットカードの利用で得られる「ポイント」は、多くの人にとって大きな魅力です。個人カードを1枚にまとめて使えば、すべての支出に対してポイントを一極集中して貯めることができます。その結果、特典交換やキャッシュバック、マイルなどの恩恵をより早く享受できるでしょう。
しかし、クレジットカードを「事業用」「プライベート用」に分けると、ポイントの付与もそれぞれのカードに分散されてしまうため、ポイントの貯まり方が鈍くなったと感じる場面も出てきます。
たとえば、楽天カードでプライベート支出を行い、楽天ビジネスカードで事業支出を行った場合、ポイントはそれぞれのカードに付与される仕組みです。楽天のように「共通IDで一元管理できる」仕組みが整っていればまだよいのですが、カードによってはポイントプログラムが異なる、または移行できないケースもあります。
このように、ポイント還元を重視する個人事業主にとっては、「クレジットカードを分けることで損をしているように感じる」ことも、一定のデメリットとして考えられます。ただし、ビジネスカードでも高還元率のものを選べば、事業支出を通じて着実にポイントを積み重ねることは可能です。
支払いミスやカードの使い分けミスが起きやすい

もう一つ見逃せないのが、「使い分けのミスによる混乱やストレス」です。カードを2枚に分けたとしても、実際の現場ではついうっかりプライベート用のカードで事業用の支払いをしてしまったり、その逆も起きてしまうことがあります。
このようなミスが起こると、仕訳処理が煩雑になったり、帳簿が一貫性を欠く結果になります。たとえば、プライベートカードで備品を購入した場合、本来は「未払金」または「事業主借」として処理すべきところを、誤って「事業用カードからの支出」として記帳してしまうと、後々帳簿にズレが生じてしまいます。
また、カードの引き落とし口座も事業用・個人用で異なるケースが多く、残高管理や引き落とし日の確認など、資金繰りにおいても意識的な対応が必要です。複数のカードを正確に運用していくためには、カード別の用途ルールを明確にしておき、支払い時に迷わない仕組み作りが重要になります。
さらに、クレジットカードによっては「一部の支払い方法(リボ払いや分割払い)が利用できない」「ETCカードや追加カードの発行に制限がある」といった制約がある場合もあるため、使い勝手の面で不満が出ることも考えられます。
以上のように、クレジットカードを分けることには一定のデメリットや注意点も伴います。年会費やポイント分散、運用ミスなどは、「分けない方がラク」と感じる大きな要因となるでしょう。しかし、それらのデメリットも、適切なカード選びと運用ルールの整備によって十分にカバーできます。
参考:個人事業主はクレジットカードを分けるべき?使い分けるメリットや注意点を解説
個人カードとビジネスカードの違いと選び方

個人事業主がクレジットカードを選ぶ際に悩みやすいのが、「個人カードをそのまま事業用に使っていいのか?」「ビジネスカードを新たに作るべきか?」という点です。実際、多くの個人事業主が開業当初は手持ちの個人カードをそのまま使い続けており、カードを分けない運用になっていることも少なくありません。
しかし、事業とプライベートの支出を明確に分けたい場合や、会計処理を効率化したい場合には、ビジネスカードの利用を検討するのが理想的です。ここでは、個人カードとビジネスカードの違いを明確にし、目的に合った選び方について詳しく解説します。
どちらも使えるが、目的によって適切な選択を
個人事業主にとって、事業用のクレジットカードとして使用できるのは「個人カード」と「ビジネスカード(法人カード)」の2種類があります。結論から言えば、どちらを使っても事業経費としての利用は可能です。
ただし、使い方によっては管理のしやすさや会計処理の手間に大きな差が出るため、「どちらを選ぶべきか」は事業の目的や運用方法によって判断すべきです。
たとえば、開業間もなく信用情報に自信がない場合や、支出が少額にとどまる場合は、すでに保有している個人カードを事業用に転用する方がスムーズです。その際は、カードを1枚にまとめる「分けない運用」よりも、事業専用の個人カードを1枚用意する形にしておくと、会計処理が楽になります。
一方、取引額が大きくなってきたり、会計ソフトとの連携や経費の可視化を重視する場合は、事業に特化したビジネスカードの方が圧倒的に便利です。特にfreeeやマネーフォワードクラウドなどの会計ソフトは、ビジネスカードとの連携機能が充実しており、仕訳の自動化や経費集計が格段に楽になります。
審査・限度額・付帯サービスの違いを比較
個人カードとビジネスカードには、発行条件やカードスペックに明確な違いがあります。ここでは、主要な比較ポイントを以下にまとめます。
審査基準
個人カードは「申込者本人の信用情報」を中心に審査されます。収入や勤務先情報、他のローン状況などが審査対象です。一方、ビジネスカード(特に法人カード)は「事業実績」や「売上高」「業歴」なども含まれるため、開業直後の個人事業主にとっては若干ハードルが高く感じられることもあります。
ただし、最近では「三井住友カード ビジネスオーナーズ」や「楽天ビジネスカード」のように、個人事業主でも申込可能かつ、開業届さえあれば通りやすいビジネスカードも増えているため、選択肢は十分にあります。
利用限度額
一般的に、個人カードは月額数十万円〜100万円前後の利用枠が多いのに対し、ビジネスカードは「法人向けの利用」を前提にしているため、限度額が高めに設定される傾向があります。広告費や仕入れで一時的に高額な決済を行うケースがあるなら、限度額が高いビジネスカードの方が安心です。
付帯サービス・特典
個人カードはポイント還元やショッピング保険が充実しているものが多いですが、ビジネスカードにはそれに加えて出張支援(空港ラウンジ・旅行保険)や経費精算ツールとの連携、追加カード発行など、事業向けの機能が備わっています。
また、カード利用履歴をCSV形式でダウンロードできるなど、会計管理に便利な機能が標準搭載されているのも特徴です。freeeやマネーフォワードとのAPI連携がスムーズにできるカードも増えており、記帳業務の手間を削減できます。
開業前から作れるビジネスカードもある
「ビジネスカード=開業後でないと作れない」と思われがちですが、実は開業届を提出する前でも申請可能なビジネスカードは存在します。たとえば、楽天ビジネスカードは楽天プレミアムカードとセットでの申し込みとなりますが、事業実績が浅い個人事業主でも比較的審査に通りやすいカードとして知られています。
また、三井住友カード ビジネスオーナーズは、屋号や法人口座がなくても申し込める点で、個人事業主やフリーランスの開業初期に非常に適したカードです。これらは実質的に「個人事業主向けビジネスカード」として位置づけられ、確定申告や税務処理を見据えた設計になっています。
さらに、年会費が無料または条件付きで無料になるカードも多く、初期コストを抑えつつ事業運営に必要なクレジットカード環境を整えることが可能です。分けない運用で煩雑な管理に悩むより、早めにビジネスカードを導入しておく方が、長期的には効率的な選択になるでしょう。
参考:個人事業主が事業用と個人用のクレジットカードを分けるメリット|おすすめカードも紹介
よくある質問

Q. クレジットカードを分けるタイミングはいつ?
個人事業主がクレジットカードを分けるタイミングとしておすすめなのは、開業時または開業直後です。開業届を出した直後であれば、事業用カードの申し込みに必要な「屋号」や「事業内容」を明確に伝えることができ、審査もスムーズに通りやすくなります。
また、経費や売上が少ないうちからクレジットカードを分けておくことで、帳簿の一貫性が保たれ、仕訳のミスも防げます。分けないまま事業を継続してしまうと、後から切り替える際に明細の整理や仕訳のやり直しが必要になる場合もあるため、早めの対応が望ましいです。
すでに個人カードで事業用の支払いをしてしまっている方でも、今からでも遅くはありません。切り替えのタイミングとしては、年始や確定申告終了後など、区切りのよい時期が理想です。
参考:個人事業主がクレジットカードを分けないで大変なことになった話
Q. 事業用カードの年会費は経費にできる?
はい、事業用に使用しているクレジットカードの年会費は「支払手数料」や「諸会費」として経費計上が可能です。たとえば、三井住友カード ビジネスオーナーズやアメックスビジネスカードなど、年会費が発生するカードも、その支出が事業目的であることが明確であれば、問題なく経費として扱うことができます。
ただし、個人用カードを併用していて、事業・プライベートの両方に使っている場合は、年会費を全額経費にできるとは限りません。この場合は、家事按分の考え方を使い、事業で使用している割合に応じて年会費を経費処理する必要があります。
ビジネス専用カードを使えば、年会費の100%を経費にできるため、税務処理を簡素化する意味でもカードを分けておくのが合理的です。
Q. 法人カードと個人カード、どちらがおすすめ?
個人事業主が事業用に使うなら、「ビジネスカード(法人カード)」をおすすめします。その理由は以下のとおりです。
- 事業用特化の機能(明細出力・追加カード・管理画面など)が充実
- 会計ソフトとの連携に優れている
- ポイント還元率や特典がビジネス用途に最適化されている
- 限度額が高めで、仕入れや広告費などにも対応可能
とはいえ、開業直後で審査が不安な場合や支出がまだ少額の場合は、個人カードでも構いません。重要なのは「明確に事業用と決めて使うこと」であり、カードの種別そのものよりも、管理方法が正しいかどうかが問われます。
将来的に売上や支出が増えてくるようであれば、年会費無料で審査が柔軟なビジネスカードに切り替えるのがベストな選択肢です。
クレジットカードの分け方は経理効率と管理の明確化がカギ

個人事業主がクレジットカードを「分けないまま」事業を継続するのは、一見すると手間が省けるように思えます。しかし実際には、経費処理の煩雑さや確定申告時の混乱、税務調査時のリスクといった大きなデメリットが潜んでいます。
一方で、クレジットカードを分けて運用すれば、経費の仕訳がスムーズになり、会計ソフトとの連携も簡単になります。税理士とのやり取りも効率化され、経理コストを削減できるだけでなく、青色申告による65万円控除の要件もクリアしやすくなります。
また、最近では年会費無料で開業直後から使える個人事業主向けビジネスカードも充実しており、資金繰りやポイント活用の面でも多くのメリットがあります。
「経費管理をきちんとしたい」「申告や記帳のミスをなくしたい」と考えるなら、今からでもクレジットカードを分けることを検討してみましょう。分けない運用から脱却することで、あなたのビジネスはより健全で効率的に進化していきます。