個人事業主の納税スケジュールを解説!支払う税金の納付期限や節税方法も解説

個人事業主として事業を行うと、所得税や住民税、消費税など、さまざまな税金の納付が必要になります。それぞれの税金には納付期限が決まっており、スケジュールを把握しておかないと延滞税や加算税といった余計な負担が発生することもあります。本記事では、個人事業主が支払う主な税金の種類と年間の納税スケジュール、そして効率的に節税するためのポイントについてわかりやすく解説します。

個人事業主が支払う主な税金と納税スケジュール

個人事業主が支払う主な税金と納税スケジュール

個人事業主として事業を運営するうえで、避けて通れないのが「税金」の支払いです。特に、納税の「スケジュール」を正しく把握していないと、延滞税や加算税といった思わぬペナルティを受けることもあります。本章では、個人事業主が支払う代表的な税金の種類と、それぞれの納税スケジュールについて詳しく解説します。事業に必要なキャッシュフロー管理にも直結する重要なテーマなので、しっかりと確認しておきましょう。

所得税|確定申告と納税期限

個人事業主にとって最も基本となる税金が「所得税」です。1月1日から12月31日までの1年間に得た事業所得をもとに、毎年「確定申告」により税額を計算し、国に納める必要があります。

確定申告の提出期限は毎年2月16日から3月15日まで。この期間内に所得税の申告・納付を済ませるのが原則です。納付方法は、税務署窓口・金融機関・クレジットカード・ダイレクト納付などが選択できます。

また、年間の所得税額が15万円を超える場合、予定納税の対象となり、以下のスケジュールで2回に分けて前払いが必要です。

  • 第1期分:7月1日〜7月31日
  • 第2期分:11月1日〜11月30日

予定納税は事業が好調な年に発生しやすいため、前年の利益を見て資金繰りを調整しておくことが大切です。

消費税|課税事業者の場合の対応

売上規模が大きくなると、個人事業主も「消費税」の納税義務が発生します。基本的には、課税売上高が2年前に1,000万円を超えているかどうかで判定され、該当する場合には課税事業者として登録・申告が必要です。

消費税の確定申告と納税期限は、所得税と同じく3月31日まで。ただし、課税期間や申告方法によって異なる場合があるため注意しましょう。

消費税の納税には、本則課税と簡易課税という2つの方式があり、自社の取引内容によって選択が可能です。事前に届出が必要なため、早めの準備がカギとなります。

住民税|分割納付のスケジュール

「住民税」は、前年の所得に応じて自治体から課税される地方税です。会社員とは異なり、個人事業主の場合は特別徴収ではなく普通徴収として、自分で納付書を受け取り納税する形式になります。

一般的な住民税の納税スケジュールは以下の通り、年4回に分けた分割納付が基本です(自治体により異なる場合あり)。

  • 第1期:6月末
  • 第2期:8月末
  • 第3期:10月末
  • 第4期:1月末(翌年)

一括納付も可能ですが、キャッシュフローを平準化したい個人事業主にとっては分割の方が管理しやすいでしょう。納付書は自治体から6月頃に郵送されます。

個人事業税|納税対象となる所得と時期

「個人事業税」は、一定以上の所得がある個人事業主に対して課税される地方税です。対象となるのは、都道府県が定める法定業種に該当し、事業所得が290万円を超える場合です。

納税スケジュールは多くの自治体で以下の2期分割制が採用されています。

  • 第1期分:8月末
  • 第2期分:11月末

申告は必要なく、税務署から送られた確定申告データをもとに、都道府県が税額を算出し納付書を送付します。突然の納付書に驚かないよう、利益が出てきたタイミングで事前に金額を試算しておくと安心です。

参考:個人事業主の納税スケジュールまとめ!支払う税金の種類や滞納のリスクについても解説

国民健康保険・年金|社会保険料の納付タイミング

国民健康保険・年金|社会保険料の納付タイミング

個人事業主は、会社員とは異なり「国民健康保険」と「国民年金」に自ら加入し、保険料を支払う必要があります。これらも立派な納税義務のひとつです。

国民健康保険

前年の所得を基に計算され、6月以降に納付書が届きます。支払い方法は一括または年12回の分割。口座振替を選べば納め忘れの防止にもなります。

国民年金

保険料は定額制で、令和6年度の月額は16,980円(予定)です。支払いは原則月払いですが、前納すると割引を受けられる制度もあります。口座振替・クレジットカード払い・コンビニ支払いなど柔軟な手段が選べます。

両者とも支払いを怠ると、保険証が使えなくなったり、将来の年金額に影響したりするため、納税スケジュールに組み込んでおきましょう。

これらの税金や社会保険料は、個人事業主として避けて通れない支出です。納税スケジュールを正確に理解し、毎月の資金繰りや節税対策を行うことが、安定した事業運営のカギとなります。

年間で押さえておきたい納税イベントと提出期限

個人事業主にとって、税金の納付は避けて通れない業務のひとつです。しかし、「いつ・どの税金を・どのように」納めればいいのかが把握できていないと、期限を過ぎて延滞税が発生するだけでなく、事業全体の資金繰りにも悪影響を及ぼします。この章では、個人事業主が1年を通して注意すべき納税スケジュールについて、税目ごとにわかりやすく整理して解説します。

確定申告|2月16日~3月15日

個人事業主の最も重要な税務イベントが「確定申告」です。対象となるのは前年1月1日から12月31日までの所得で、所得税・復興特別所得税・消費税(課税事業者の場合)を計算・申告する必要があります。

確定申告の提出期間は、毎年2月16日から3月15日まで。提出期限と同日までに所得税などの納税も完了させる必要があります。

消費税の課税事業者の場合は、消費税の確定申告書も同時に提出し、納税期限は3月31日が原則です。ただし、振替納税や電子申告を利用する場合は、それぞれの振替日(例:所得税なら4月中旬、消費税なら4月下旬頃)までに引き落とされるため、資金準備を忘れずに行いましょう。

確定申告には、青色申告・白色申告という2種類の申告方法があります。青色申告を選ぶと最大65万円の特別控除が受けられ、節税効果が高いため、開業届と併せて「青色申告承認申請書」を事前に提出しておくことが推奨されます。

予定納税|7月と11月の納付に注意

前年の所得税額が15万円以上だった個人事業主には、「予定納税」の義務が発生します。予定納税とは、前年の実績に基づいて見積もられた所得税を、翌年の本申告よりも前に2回に分けて納付する制度です。

予定納税の納付スケジュールは以下の通りです。

  • 第1期分:7月1日~7月31日
  • 第2期分:11月1日~11月30日

この2回の納付により、年間所得税の大半を前倒しで納める形になります。ただし、当年の所得が大きく減少する見込みがある場合には「減額申請」が可能です。減額申請書は、7月15日頃までに税務署へ提出する必要があります。

また、11月末に資金が不足していると、事業の運転資金や仕入れに支障が出ることもあるため、納税スケジュールに沿った資金計画が欠かせません。

参考:[個人事業主版] 税務・労務の年間スケジュール

源泉所得税の納付スケジュール

源泉所得税の納付スケジュール

従業員を雇用している個人事業主、または外部のフリーランスに報酬を支払っている場合には、「源泉所得税」を預かって納付する義務があります。源泉徴収の対象となるのは、給与や報酬、弁護士・税理士などの士業への支払いなどです。

原則毎月10日/納期の特例は年2回

原則として、源泉所得税は支払月の翌月10日までに税務署へ納めなければなりません。例えば、4月に給与や報酬を支払った場合、その源泉所得税は5月10日までに納付する必要があります。

ただし、「給与支給対象者が常時10人未満」であれば、税務署へ「納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、年2回の納付にまとめることが可能です。

納期の特例適用後のスケジュールは以下の通りです。

  • 1月~6月分:7月10日までに納付
  • 7月~12月分:翌年1月20日までに納付

この特例を活用すれば、毎月の納税業務の手間が軽減され、納税スケジュールも立てやすくなります。ただし、対象者が10人以上に増えた場合や期限を守れなかった場合には特例が解除される可能性があるため、注意が必要です。

償却資産税や自動車税などのその他税金

個人事業主には、事業に必要な資産や車両を所有している場合に発生する税金もあります。忘れがちですが、納税スケジュールの中にしっかりと組み込む必要があります。

償却資産税

事業用に所有している機械、工具、備品、設備などが対象となる税金で、固定資産税の一種です。課税対象となる資産を持っている場合は、毎年1月1日時点の保有状況を、1月31日までに市区町村へ申告し、春ごろに納付書が届きます。

納税は固定資産税と同様、以下のような年4回の分割納付が一般的です。

  • 第1期:4月
  • 第2期:7月
  • 第3期:12月
  • 第4期:翌年2月

市区町村によって納付スケジュールは異なるため、詳細は自治体の税務課で確認しましょう。

自動車税・軽自動車税

個人事業主が事業用に車両を使用している場合は、自動車税または軽自動車税が課税されます。

  • 自動車税の納付時期:5月末まで(都道府県税)
  • 軽自動車税の納付時期:5月上旬まで(市区町村税)

毎年4月1日時点での車両の所有者に課税されるため、年度をまたいで車を買い替えた場合は、旧所有者に納税義務が発生することもあります。名義変更や廃車の手続きは早めに済ませましょう。

税金は一度にまとめて納めるものではなく、税目ごとにスケジュールが異なります。個人事業主として事業を継続していくためには、こうした納税カレンダーを把握し、資金繰りに反映させることが重要です。特に複数の税目が重なる夏~秋にかけては、納税ラッシュとなる時期でもあるため、余裕を持った準備を心がけましょう。

参考:この税金はいつ払うの?個人事業主のための納税スケジュールを解説

納付期限を過ぎたらどうなる?延滞時のペナルティ

納付期限を過ぎたらどうなる?延滞時のペナルティ

個人事業主として事業を運営するなかで、税金の納付期限をうっかり過ぎてしまうことは誰にでも起こり得ます。しかし、税金は「納付期限までに納めること」が大原則。期限を過ぎてしまうと、自動的にペナルティが課されるだけでなく、場合によっては事業運営に深刻な影響を及ぼすこともあります。

この章では、納付遅れによる延滞税や加算税の仕組み、さらに支払い不能時に利用できる救済制度までをわかりやすく解説します。

延滞税・加算税の仕組み

税金の納付が遅れた場合、最初に発生するのが「延滞税」です。これは、期限内に税金を納めなかったことに対する利息のようなもので、納付が遅れた日数に応じて自動的に加算されます。

延滞税の計算方法

延滞税の利率は、延滞期間により次のように異なります(令和6年度の場合):

  • 納付期限の翌日から2か月以内:年2.5%
  • 納付期限の翌日から2か月超:年8.8%

例えば、100,000円の税金を3か月遅れて納めた場合、8.8%の延滞税が日割りで加算されます。延滞が長引くほど負担も増大するため、早めの対応が必要です。

加算税とは?

延滞税に加えて、申告内容に誤りがあったり、無申告だった場合には「加算税」が課されることがあります。加算税は、以下のようなケースに応じて税務署から追加で課税されます。

加算税の種類 内容 税率
無申告加算税 期限後に自主的に申告した場合でも課される 5〜15%
過少申告加算税 申告内容が少なすぎた場合に課される 10〜15%
重加算税 故意の不正(領収書の偽造など)がある場合に課される 最大40%

加算税は、ペナルティ的な意味合いが強く、税務署の判断で課されるため、日頃から正確な記帳と期限内の申告・納税を心がけることが重要です。

財産差押えや信用情報への影響はある?

納税を怠り続けると、延滞税や加算税だけで済まず、行政による「滞納処分」が開始されます。これは、税務署や自治体が法的な手段により強制的に税金を回収する手続きです。

差押えの流れ

  1. 督促状が届く(納付期限の20日後以降)
  2. さらに納税がなければ、財産調査が行われる
  3. 銀行口座・売掛金・不動産などが差押えの対象となる

差押え対象には、個人事業主名義の銀行口座や、仕事で使用しているパソコン、車なども含まれます。これらの財産が一時的に使用できなくなると、事業活動そのものがストップする可能性もあるため、非常に深刻な事態です。

信用情報には登録されないが注意は必要

税金の滞納情報は、いわゆる「信用情報機関(CICやJICCなど)」には登録されません。しかし、金融機関の融資審査では「納税証明書」や「滞納履歴の有無」をチェックされることがあります。そのため、資金調達を予定している場合には、滞納が大きなマイナス要因となることもあります。

支払えない場合に使える救済制度

事業の一時的な不振や、想定外の出費によって納税資金が準備できない場合でも、「放置」するのは絶対にNGです。国税・地方税それぞれに、支払猶予や分割納付の制度が用意されています。

国税の納付猶予制度

税務署に対して申請を行えば、最長で1年間、税金の納付を猶予してもらえる制度があります。

項目 内容
対象 所得税・消費税などの国税
条件 一時的な資金不足であること、誠実に納付する意思があること
効果 延滞税の一部軽減・分割払いが可能

申請には「納付困難の理由書」や収支状況の書類提出が必要です。税務署の担当官と事前相談のうえで進めるのが一般的です。

地方税の換価の猶予制度

住民税や個人事業税など地方税にも同様の「換価の猶予」制度があり、差押えを猶予してもらえる仕組みです。

  • 条件:一括納付が困難であること、分割であれば納付可能であること
  • 猶予期間:原則として最長1年(更新も可能)

たとえば、「収入はあるが手元資金が少ない」「数ヶ月後に売上入金がある予定」といった場合には、積極的に活用することで差押えリスクを回避できます。

税金の納付遅れは、たとえ悪意がなかったとしても自動的に延滞税が加算され、長引けば差押えなど重大なリスクを招きます。個人事業主としては、スケジュールを日頃から把握し、早めに納税資金を確保することが第一です。それでも困難な場合には、必ず「相談する」ことが大切です。税務署や自治体は、誠実に対応すれば柔軟な支払い方法を提案してくれるケースが多いため、放置せず早めにアクションを起こしましょう。

参考:個人事業主向け税務カレンダー!​節税方法や​お金の​管理に​役立つツールも​紹介

クレジットカードや口座振替での納税方法

クレジットカードや口座振替での納税方法

個人事業主が税金を納める方法として、近年は「クレジットカード」や「口座振替」「インターネットバンキング」など、さまざまな支払い手段が選べるようになっています。これらをうまく活用することで、納税の手間を省くだけでなく、資金繰りの柔軟性やポイント還元といったメリットも得られます。本章では、代表的な納税方法を税目ごとに紹介します。

国税(所得税・消費税)をクレジットカードで納める方法

所得税や消費税といった「国税」は、国税庁が提供する「国税クレジットカードお支払サイト」を利用することで、クレジットカードによる納付が可能です。対応しているカードブランドはVisa、Mastercard、JCB、American Expressなどで、法人カードも利用できます。

【利用の流れ】

  1. 国税クレジットカードお支払サイトにアクセス
  2. 納税する税目と金額を入力
  3. 氏名・住所・納税用の整理番号を入力
  4. クレジットカード情報を入力して決済

決済が完了すると、領収証書の代わりとなる「納付受託者の受領通知」が発行され、これをもって納付が完了したことになります。

【注意点】

  • 手数料が発生する(例:10,000円の納税で約83円〜)
  • 支払限度額や締日によっては一時的な資金拘束に注意

特に、ビジネスカードなどでポイントが貯まる場合、実質的なキャッシュバック効果があるため、資金に余裕があれば積極的に活用したい方法です。

住民税など地方税の支払い方法

住民税や個人事業税といった「地方税」も、多くの自治体でクレジットカードやスマホ決済による納付が可能になっています。

代表的な支払い方法は以下の通りです:

  • 地方税お支払サイト(eL-Tax)
  • PayPay・LINE Payなどのスマホ決済
  • モバイルレジ(QRコード読み取り)
  • 地方自治体独自の納税ポータル

納付書に記載されているバーコードやQRコードを読み取ることで、自宅からでも簡単に納税ができます。

【注意点】

  • 一部の自治体ではクレジットカード未対応の場合もある
  • スマホ決済は事前にアプリ連携やチャージが必要

なお、クレジットカード払いの場合、地方税でもポイント還元の対象になることがあります。ただし、手数料が発生する場合もあるため、利用前に確認しておくと安心です。

ダイレクト納付・インターネットバンキングも活用

国税における最もスマートな納税方法としては、「ダイレクト納付」が挙げられます。これは、事前に税務署へ口座情報を届け出ることで、e-Taxで申告後に即時または期日指定で口座から自動引き落としができる仕組みです。

【ダイレクト納付のメリット】

  • 手数料がかからない
  • 手続きがe-Tax内で完結する
  • 引き落とし日を指定できる(資金繰り調整が可能)

また、金融機関の「インターネットバンキング」を利用した納税も可能です。Pay-easy(ペイジー)対応の銀行であれば、パソコンやスマホから24時間いつでも納付できます。

【対応税目の一例】

  • 所得税、消費税、予定納税
  • 源泉所得税
  • 贈与税、相続税 など

ただし、インターネットバンキング利用には金融機関側での事前手続きが必要なケースもあるため、余裕をもって準備しましょう。

このように、個人事業主にとって税金の納付方法は多様化しています。クレジットカードや電子納税を活用すれば、時間も手間も削減でき、事業資金の管理もしやすくなります。納税スケジュールとあわせて、最適な納付手段を選ぶことが、スマートな事業運営の第一歩といえるでしょう。

参考:個人事業主の納税スケジュールとは?税金の納付期限や節税テクニックも解説!

節税につながる納税スケジュールの工夫

節税につながる納税スケジュールの工夫

個人事業主にとって、納税スケジュールを把握することは単なる期限管理にとどまらず、「節税」にも直結する重要な要素です。納税のタイミングを意識しながら、控除制度や共済制度、将来的な法人成りまでを視野に入れることで、納税額を抑えつつ手元資金を効率的に管理できます。

この章では、個人事業主が取り組める具体的な節税手段と、そのスケジュール上の工夫について解説します。

青色申告の活用と65万円控除

節税対策の第一歩ともいえるのが「青色申告」です。開業届とあわせて税務署に「青色申告承認申請書」を提出することで利用可能となり、最大で65万円の青色申告特別控除を受けることができます。

65万円控除の条件

  • 複式簿記で記帳していること
  • 貸借対照表・損益計算書などの帳簿を確定申告時に提出
  • 期限内に電子申告(e-Tax)で申告、または電子帳簿保存

たとえば、年間の事業所得が500万円の個人事業主が、65万円の控除を活用すれば、課税対象額は435万円に抑えられます。これにより所得税や住民税を大幅に削減できるため、非常に高い節税効果が期待できます。

スケジュールの工夫

青色申告をスムーズに行うためには、日々の帳簿付けやレシート・請求書の整理をルーティン化しておくことが大切です。確定申告直前にまとめて処理しようとすると漏れやミスが起こりやすく、控除が適用されないリスクもあるため、月ごとの会計処理を習慣づけるとよいでしょう。

小規模企業共済・iDeCoでの所得控除

長期的な節税を目指すなら、「小規模企業共済」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」といった制度を活用するのも有効です。いずれも掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税の軽減につながります。

小規模企業共済

  • 中小機構が運営する退職金準備制度
  • 毎月1,000円〜70,000円までの掛金を設定可能
  • 掛金は全額、所得控除の対象
  • 廃業・老後・病気等のタイミングで受け取り可能(退職所得扱い)

たとえば、月額3万円を拠出すれば、年間36万円が所得控除となり、年間10万円以上の節税につながるケースもあります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

  • 原則60歳まで引き出せない私的年金制度
  • 掛金上限:月額23,000円(個人事業主の場合)
  • 掛金は全額所得控除、運用益は非課税
  • 受け取り時も税制上の優遇あり(公的年金等控除など)

iDeCoは将来の資産形成と節税を同時に実現できるため、事業が軌道に乗ってきたタイミングで加入を検討すると効果的です。

スケジュール上の注意点

いずれの制度も「年末までに拠出された掛金」が当年の所得控除の対象となるため、12月までに積立を開始しておく必要があります。年末ギリギリの手続きでは反映が間に合わないこともあるため、10月〜11月中には金融機関と手続きを済ませるのが理想です。

法人成りの検討で節税に

ある程度の売上規模に達した個人事業主が検討すべき選択肢が「法人成り(法人化)」です。法人化することで、個人事業主のままでは活用しにくい節税策が多数利用可能となり、税負担を抑えることができます。

法人成りの節税メリット

  • 所得分散による節税:自分や家族に役員報酬を支払うことで、税率の高い所得を分散できる
  • 経費の幅が拡がる:法人名義での交際費・旅費などが計上しやすくなる
  • 社会保険の切り替え:法人化により厚生年金・健康保険への加入が可能になり、将来の年金額が増える
  • 消費税の免税期間のリセット:新設法人として設立すると、最大2年間消費税が免除されるケースも

法人税率は所得税に比べてフラットであり、利益が600万円〜800万円以上の事業者にとっては、個人事業主よりも実質的な税率が低くなる場合が多くなります。

法人成りのタイミングと準備

法人化は節税効果が高い一方で、設立費用や事務負担も発生します。そのため、検討のタイミングは「年間所得が一定額を超えたとき」「消費税の課税事業者になったとき」「家族を事業に巻き込む必要が出てきたとき」などが一般的です。

納税スケジュールの中でも、年度が切り替わる前(12月決算なら1〜3月頃)に法人設立することで、個人・法人の税務処理が整理しやすくなります。税理士に事前相談し、法人化のメリット・デメリットを比較検討しておくことが重要です。

納税スケジュールを意識することは、単なる支払管理ではなく、戦略的な「節税対策」に直結します。青色申告による控除、小規模企業共済やiDeCoによる所得控除、そして法人成りによる大規模な節税策まで、事業ステージに応じて最適な方法を選びましょう。

こうした対策を年間スケジュールに組み込んでおくことで、無理なく税金対策を継続でき、手元に資金を残す経営が可能になります。

参考:【2025年】個人事業主は税金(所得税)をいつ払う?払い方も解説!

よくある質問

よくある質問

個人事業主として納税スケジュールに関する情報を調べていると、具体的なケースについて疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。ここでは、特に多く寄せられる3つの質問に対して、わかりやすく回答します。

Q. 予定納税はどんなときに必要?

予定納税とは、前年の所得税額が15万円を超えた個人事業主に対して課される「前払いの所得税制度」です。前年分の確定申告の内容をもとに税務署が対象者を判断し、7月と11月の2回に分けて納付を求められます。

なお、事業が前年に比べて大幅に落ち込む見込みであれば、「減額申請」を出すことで予定納税額を下げることが可能です。毎年5月〜6月ごろに税務署から通知が届くので、前年の申告内容と合わせて内容を確認し、必要であれば早めに対応しましょう。

Q. 納税を分割することは可能?

税金は原則として一括納付が求められますが、個人事業主の場合には一部の税金で分割納付が可能です。たとえば、住民税や個人事業税は年4回の分納が一般的で、多くの自治体から分割用の納付書が送付されます。

一方で、所得税や消費税などの国税は、原則一括納付ですが、事情があれば税務署に申請することで「納税の猶予」や「分割納付」が認められることもあります。資金繰りに不安がある場合は、早めに相談して支払い計画を立てることが重要です。

Q. 開業したばかりでも全ての税金がかかる?

個人事業主として開業したばかりの年は、すべての税金が即座に発生するわけではありません。たとえば、所得税は事業所得が出た年から申告・納付が必要ですが、所得が少なければ税額はゼロになることもあります。

また、消費税に関しては原則として開業から2年間は免税事業者となるため、課税売上高が1,000万円を超えない限り納税義務はありません。

ただし、住民税や国民健康保険料などは前年の所得に関係なく均等割がかかることもあるため、「全く税金がかからない」わけではない点には注意が必要です。初年度から帳簿付けと納税スケジュールの確認を習慣化しておくと安心です。

参考:【個人事業主が納める税金の種類一覧】計算方法・納税時期・節税方法も

まとめ:納税スケジュールを把握して資金繰りに備えよう

まとめ:納税スケジュールを把握して資金繰りに備えよう

個人事業主にとって、税金の支払いは避けられない業務のひとつです。しかし、納税スケジュールを事前にしっかり把握しておけば、資金繰りの計画を立てやすくなり、延滞や滞納といったリスクを防ぐことができます。

特に、所得税や消費税、住民税、個人事業税などはそれぞれ納付時期が異なるため、年間カレンダーとして管理することがポイントです。また、青色申告やiDeCo、小規模企業共済といった制度をうまく活用すれば、節税効果も期待できます。

もし納税が困難な場合でも、猶予制度や分割納付といった選択肢がありますので、「払えないから放置する」のではなく、早めに相談することが大切です。

正しい知識と準備があれば、税金に振り回されることなく、安定した事業運営が可能になります。納税スケジュールの理解は、個人事業主としての基盤づくりの第一歩です。