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個人事業主とサラリーマンの税金はどう違う?金額の違いを徹底比較

同じ年収でも、個人事業主とサラリーマンでは「税金の負担額」が大きく異なることがあります。サラリーマンは給与天引きで税金が自動的に納められるのに対し、個人事業主は自ら計算・申告・納税する必要があり、経費や控除の使い方によって納税額に差が出るのが特徴です。本記事では、個人事業主とサラリーマンの税金の違いを金額ベースで比較し、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

個人事業主とサラリーマンの税金の違いとは?

個人事業主とサラリーマンの税金の違いとは?

個人事業主とサラリーマンでは、収入の得方だけでなく、課税の仕組みや所得の計算方法、支払う税金の種類に明確な違いがあります。同じ年収でも「手取り」に差が生じる理由の多くは、こうした税金の違いにあります。

本記事では、個人事業主とサラリーマンそれぞれの定義や税金の基本構造、所得計算の仕組みを比較しながら、税負担の違いをわかりやすく解説します。

そもそも「個人事業主」と「サラリーマン」の違い

「個人事業主」と「サラリーマン」は、働き方と収入の得方に根本的な違いがあります。
個人事業主とは、法人を設立せずに個人の名前で事業を行う人のことを指します。たとえば、フリーランスのデザイナーやライター、美容師、整体師、コンサルタントなどが該当します。自分で請求・収入管理を行い、確定申告を通じて税金を納めます。

一方、サラリーマン(給与所得者)は、企業や団体に雇用され、毎月の給与として報酬を得ている人を指します。会社が税金や社会保険料を源泉徴収し、年末調整で税額を清算するのが一般的です。

この違いは、課税される「所得の種類」にも直結し、税金の計算方法にも大きな影響を及ぼします。

課税の仕組みと所得の分類

個人に課される税金の中でも中心となるのが「所得税」です。所得税は、1年間に得た「所得」に対して課税されます。ここで重要なのが、所得には10種類の区分があるという点です。

  • サラリーマン:給与所得
  • 個人事業主:事業所得

それぞれの所得は、税法上の計算方法や控除制度が異なります。サラリーマンは給与所得控除が自動的に適用される一方で、個人事業主は自分で経費を算出し、差し引いて所得を求める必要があります。

また、個人事業主には「青色申告特別控除」や「専従者給与制度」など、独自の控除制度が設けられており、これらを活用することで税負担を大きく軽減できるケースもあります。

なお、所得税以外にも、住民税、個人事業税、消費税、社会保険料など、負担すべき税や公的費用にも差が生じます。次項で詳しく見ていきましょう。

所得の計算方法の違い

税金を比較する際に特に重要なのが「所得の計算方法」です。なぜなら、課税対象となるのは「所得=収入−必要経費」であるため、同じ収入でも経費の扱い方によって所得金額に大きな差が出るからです。

サラリーマンの場合(給与所得)
サラリーマンの所得は「給与所得」に分類されます。給与所得は「収入金額(年収)−給与所得控除」によって計算されます。給与所得控除は収入に応じて自動的に適用され、実際の支出にかかわらず定額で控除される仕組みです。

例)年収400万円の場合、給与所得控除は約124万円となり、所得は276万円となります。

個人事業主の場合(事業所得)
一方、個人事業主の所得は「事業所得」として計算されます。これは「収入−必要経費」によって求められ、必要経費は実際にかかった事業に関係する支出全般が対象となります。

たとえば、事務所の家賃、水道光熱費、通信費、広告費、業務用の備品などが経費として計上できます。また、青色申告をしている場合は最大65万円の青色申告特別控除を受けることも可能です。

例)年収400万円の個人事業主が、経費100万円+青色申告特別控除65万円を活用すれば、課税所得は235万円となり、同年収のサラリーマンよりも所得を圧縮できます。

このように、サラリーマンは税務処理が簡便である一方、個人事業主は手間はかかるものの「必要経費」や「各種控除」の裁量が広く、節税の余地が大きいという特徴があります。

参考:サラリーマンと個人事業主の税金はどう違う?比較してみよう!

支払う税金の種類を比較

支払う税金の種類を比較

個人事業主とサラリーマンでは、税金の種類や支払い方に明確な違いがあります。同じ所得水準であっても、課される税金や控除の仕組みが異なるため、実際に手元に残る金額(=手取り)に大きな差が出ることも少なくありません。

ここでは、まず両者に共通してかかる税金を押さえたうえで、それぞれ特有の税負担について比較していきます。

共通してかかる税金(所得税・住民税など)

まず、個人事業主・サラリーマンのいずれに共通してかかるのが、以下の2つの税金です。

1. 所得税

所得税は、1年間の所得に対して国に納める税金です。累進課税制度が採用されており、所得が高くなるほど税率も上がります。課税所得に応じて5%〜45%の7段階で税率が設定されています。

  • サラリーマンは、給与から源泉徴収されて毎月天引きされ、年末調整で精算されます。
  • 個人事業主は、確定申告で課税所得を計算し、所得税額を自ら申告・納付します。

2. 住民税

住民税は、前年の所得に応じて自治体に支払う地方税です。税率は一律10%(所得割9%+均等割1%程度)で、原則としてどこに住んでいても大きな差はありません。

  • サラリーマンは給与から天引きされ、会社が代行して支払います。
  • 個人事業主は、確定申告後に市区町村から納税通知書が届き、自ら納付します(6月以降に納付開始)。

所得税・住民税はいずれの働き方でもかかる基本的な税金ですが、その申告方法や納税のタイミングは大きく異なります。

個人事業主にかかる税金(事業税・消費税など)

個人事業主は、サラリーマンには課されない追加の税金を支払う必要があります。

1. 個人事業税

事業所得が290万円を超える場合に、地方自治体から課される税金です。税率は業種により異なりますが、一般的に3〜5%です。たとえばサービス業は5%、小売業は4%などとなっています。

ただし、所得が290万円以下であれば課税されません。また、青色申告特別控除や必要経費で所得が圧縮できるため、実際に支払う人は限定的です。

2. 消費税

課税売上高が1,000万円を超えると、個人事業主は消費税の申告・納税義務が発生します。売上の際に顧客から預かった消費税(預り金)から、仕入や経費などにかかった消費税を差し引いた分を納付する形です。

なお、開業から2年間は免税事業者となるケースが多いものの、売上が増えた個人事業主は消費税の申告が必要となるため、事前の資金繰り計画が重要になります。

3. 国民健康保険・国民年金

個人事業主は社会保険制度に加入しておらず、自ら保険料を支払う必要があります。保険料は所得に応じて変動し、地域差もあるため、年額50〜80万円程度になるケースもあります。

特に高所得者の個人事業主は、健康保険料や国民年金の負担が重くなる点に注意が必要です。

サラリーマンが負担する税金(源泉徴収・社会保険料など)

一方で、サラリーマンには、企業に所属するがゆえの独自の税負担と社会保険制度があります。

1. 源泉徴収

サラリーマンは、毎月の給与から所得税・住民税・社会保険料などが源泉徴収され、会社が代わりに納税します。このため、確定申告を行う必要がない(または一部のみ)という利便性があります。

年末には年末調整が行われ、1年間の税額を精算します。副業や住宅ローン控除などがなければ、基本的に本人の手続きは不要です。

2. 社会保険料(厚生年金・健康保険など)

サラリーマンは、厚生年金・健康保険・雇用保険・介護保険といった社会保険に加入しており、保険料は会社と折半で支払います。

たとえば、健康保険料の総額が年収に対して約10%であっても、会社が半額を負担してくれるため、実質の負担は軽くなります。厚生年金も同様で、自営業者より手厚い年金制度に加入できる点は大きなメリットです。

3. 住民税の特別徴収

住民税も給与天引き(特別徴収)されるため、納税漏れがなく、納付忘れのリスクも低いという点で安心です。

このように、個人事業主とサラリーマンでは、税金の種類・負担額・支払い方法のすべてに違いがあります。
個人事業主は自由度が高い分、自己管理の負担が大きく、税金面でも準備と計画が欠かせません。一方、サラリーマンは自動的に税金が処理される一方で、節税の自由度は限定的です。どちらの働き方にもメリット・デメリットがあるため、自分の働き方に合った税制知識を持つことが重要です。

参考:個人事業主とサラリーマンの税金は何が違うかを比較!個人事業主が使える節税テクニックも解説

年収別|税金と手取りの違いをシミュレーション

年収別|税金と手取りの違いをシミュレーション

個人事業主とサラリーマンでは、同じ年収でも手元に残るお金、つまり「手取り」が大きく異なることがあります。その差は、給与所得控除や必要経費、各種控除の有無、社会保険料の負担割合などに起因します。

ここでは、年収400万円・600万円・800万円・1,000万円のケースについて、個人事業主とサラリーマンそれぞれの手取り額を比較し、税金や社会保険料による違いを明らかにします。あくまで目安であり、扶養の有無や居住地、実際の経費額などによって差が出る点にはご留意ください。

年収400万円の場合の手取り比較

サラリーマン(独身・扶養なし)の場合:

  • 給与所得控除:約124万円
  • 課税所得:約276万円
  • 所得税・住民税:約40万円前後
  • 社会保険料:約60万円前後(会社と折半で計算)
  • 手取り:約300万円前後

個人事業主の場合(経費100万円+青色申告特別控除65万円と仮定):

  • 事業所得:400万円 − 100万円 − 65万円 = 235万円
  • 所得税・住民税:約30万円前後
  • 国民健康保険・国民年金:約60〜70万円前後
  • 手取り:約280〜290万円前後

 この年収帯では、サラリーマンのほうが社会保険料の負担が軽く、結果として手取りが高くなるケースも見られます。一方、個人事業主は経費や控除をうまく活用することで手取りを近づけることが可能です。

年収600万円・800万円での違い

年収が増えるほど、累進課税の影響で所得税率が上がり、社会保険料も増加します。ただし、個人事業主は必要経費を柔軟に調整できるため、課税所得を抑えることが可能です。

年収600万円の比較(経費150万円・青色控除あり想定):

  • サラリーマンの手取り:約430万円
  • 個人事業主の手取り:約400〜420万円

年収800万円の比較(経費200万円・青色控除あり想定):

  • サラリーマンの手取り:約540万円
  • 個人事業主の手取り:約510〜530万円

この年収帯になると、サラリーマンは給与所得控除の上限が見えてくる一方で、個人事業主は経費の幅が広がるため、節税しやすくなります。ただし、個人事業税や消費税の納税義務が生じることもあるため、手取りの逆転には戦略的な経費設計が必要です。

年収1,000万円を超えるとどうなる?

年収が1,000万円を超えると、個人事業主とサラリーマンの税負担差はさらに明確になります。

サラリーマン(独身)の場合:

  • 給与所得控除の上限:約195万円
  • 課税所得:約805万円
  • 所得税・住民税:約180万円前後
  • 社会保険料:約130万円前後
  • 手取り:約690万円前後

個人事業主(経費300万円・青色申告控除ありの場合):

  • 事業所得:1,000万円 − 300万円 − 65万円 = 635万円
  • 所得税・住民税:約140万円前後
  • 国保・国年:約120〜140万円
  • 手取り:約700〜720万円

 この年収帯になると、個人事業主は大きな節税効果を発揮しやすくなります。さらに「青色事業専従者給与」や「法人化」を検討することで、所得分散や法人税への切り替えといった高度な節税策も可能になります。サラリーマンは給与所得控除の上限に達しているため、節税の幅は狭くなりがちです。

参考:サラリーマン・個人事業・法人で、税金はどう変わる?

納税方法の違いと実務負担

納税方法の違いと実務負担

税金の種類だけでなく、「どうやって納税するか」も、個人事業主とサラリーマンの大きな違いです。とくに実務面では、サラリーマンは会社に任せて完結できるのに対し、個人事業主は帳簿づけから納税まで自分で行わなければならず、事務負担に差が出ます。

このブロックでは、両者の納税方法や手続き、スケジュールの違いを詳しく比較し、どんな実務が求められるのかを整理します。

サラリーマンは年末調整で完結

サラリーマン(給与所得者)の場合、所得税や住民税、社会保険料は原則として勤務先が給与から自動で天引き(源泉徴収)し、納税手続きも企業側が代行します。

とくに年末には「年末調整」が行われ、1年間の給与額・各種控除の内容に基づいて税額の過不足を精算します。これにより、多くのサラリーマンは確定申告をしなくても納税が完了します。

年末調整の対象となる主な控除には以下のようなものがあります。

  • 配偶者控除・扶養控除
  • 生命保険料控除・地震保険料控除
  • 社会保険料控除
  • 住宅ローン控除(1年目は要確定申告)

【実務負担の少なさが最大の特徴】
必要書類(保険料控除証明書など)を提出すれば、会社がすべての計算と納税を行ってくれるため、サラリーマンは税金に関する知識がなくても、ほぼ自動で納税が完結します。

ただし、副業で20万円以上の所得がある場合や、不動産所得・雑所得などがある場合には、別途確定申告が必要です。

個人事業主は確定申告が必要

個人事業主は、会社に所属せず自分で事業を営んでいるため、毎年必ず自分で「確定申告」を行う必要があります。確定申告では、売上や経費を記帳・集計し、1年間の所得額を算出して、所得税・住民税・事業税・消費税などを自分で計算・申告します。

【確定申告の主な流れ】

  1. 日々の帳簿づけ(現金・銀行取引・クレジットカードなど)
  2. 年末に収支を集計(決算書作成)
  3. 青色申告決算書または収支内訳書を作成
  4. 確定申告書の作成(所得控除などの適用を含む)
  5. e-Taxまたは郵送・窓口で提出
  6. 税額に応じて納税(振込・口座振替・クレカ払いなど)

青色申告を選択していれば、65万円の特別控除や赤字の繰越、専従者給与の支給といった税制上のメリットがありますが、そのぶん帳簿の形式や記帳内容には厳密な要件が課されます。

 記帳・領収書の整理・税額計算・納付まで全てを自分で行う必要があるため、サラリーマンと比べて明らかに実務負担が大きいです。一方で、経費や控除の自由度が高いため、しっかり管理すれば節税効果も大きくなります。

確定申告ソフト(freee・マネーフォワード・弥生など)を活用すれば、簿記の知識がない人でも効率的に処理できます。

申告や納付のスケジュールも異なる

納税のスケジュールにも大きな違いがあります。サラリーマンは年間を通じて天引きで納税されるのに対し、個人事業主は年度ごとに一括で計算・納付する仕組みのため、資金繰りへの影響が大きい点に注意が必要です。

内容 サラリーマン 個人事業主
所得税 毎月の給与から天引き 翌年2月16日〜3月15日に確定申告
住民税 6月から翌年5月まで給与天引き 6月頃に納付書が届き、年4回払い
社会保険料 月次で天引き(会社と折半) 年収に応じて計算され、全額自己負担
消費税 原則不要(免税) 前々年の売上1,000万円超で納税義務(3月末申告)

また、個人事業主は「予定納税」が発生する場合があります。前年の所得税が15万円以上の場合、7月と11月に前払いが求められる仕組みです。これを見落とすと納税資金が不足するリスクもあるため、常に資金計画を立てておく必要があります。

納付が遅れた場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティが発生します。申告漏れ・納付漏れを防ぐためにも、税理士に依頼する、もしくは会計ソフトで期限管理を行うのが現実的です。

このように、個人事業主とサラリーマンでは、納税の方法・スケジュール・実務負担に大きな違いがあります。サラリーマンは納税処理が簡単である一方、個人事業主はすべての責任を自分で負う代わりに、節税の余地が広いという特徴があります。

参考:サラリーマン・個人事業主の節税対策はどうすればよい?控除制度や確定申告についても解説

節税できる仕組みや制度の違い

節税できる仕組みや制度の違い

同じ収入でも、活用できる節税制度によって納める税金や手取り額は大きく変わります。個人事業主とサラリーマンでは、利用できる制度や控除に違いがあり、節税の自由度も異なります。

この章では、それぞれの立場で使える代表的な節税制度を比較し、どのような仕組みで税負担が軽減されるのかをわかりやすく解説します。自身の働き方に応じて、取り入れられる制度を把握しておくことが、税金対策の第一歩です。

個人事業主が使える節税制度一覧

個人事業主は、サラリーマンよりも多くの節税制度を柔軟に使えるのが特徴です。自ら事業を運営しているため、経費や控除の対象範囲が広く、税務上の自由度も高くなっています。ここでは代表的な制度を紹介します。

青色申告特別控除

青色申告を選択し、要件を満たす帳簿付けを行っている場合、最大で65万円の所得控除を受けられます。
控除額は以下の2パターンです。

  • 65万円控除(複式簿記+電子申告など)
  • 10万円控除(簡易簿記)

この青色申告特別控除を活用することで、課税所得を大きく減らし、結果として所得税・住民税・事業税の負担を軽減できます。また、赤字の繰越(最大3年)や専従者給与の支給といった青色申告ならではの特典も受けられます。

必要経費の計上

個人事業主にとって最も効果的な節税手段の一つが、必要経費の計上です。売上に直接結びつく費用や業務遂行に必要な支出は、収入から差し引くことができます。

たとえば以下のような支出が経費として認められる可能性があります。

  • 事務所の家賃や光熱費(自宅兼用の場合は按分)
  • 通信費(携帯・ネット)
  • 打合せ費用(飲食代)
  • 交通費・出張費
  • パソコン・事務用品
  • 広告宣伝費・外注費

正確な帳簿と領収書の保存を前提に、経費として計上することで、課税所得を減らし、結果的に税金を圧縮できます。

小規模企業共済・iDeCo・ふるさと納税

個人事業主が利用できる「所得控除」の制度も充実しています。

  • 小規模企業共済:退職金制度がない個人事業主にとっての「自分年金」。掛金(月1,000円~7万円)は全額所得控除。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):老後資金を自分で積み立てる制度で、掛金は全額所得控除。将来の受取も優遇税制あり。
  • ふるさと納税:実質2,000円の負担で全国の自治体に寄附できる制度。所得税・住民税の控除が受けられる。

これらは節税効果だけでなく、将来の資産形成や社会保障の補完にもつながるため、積極的に活用するのが望ましいです。

サラリーマンでも使える節税制度

サラリーマンは、納税処理の多くを会社が行うため、節税の自由度は低い傾向にありますが、それでも個人で活用できる制度はいくつかあります。特に以下の3つは利用者が多く、比較的ハードルも低い節税策です。

住宅ローン控除

マイホームをローンで購入した場合、一定期間にわたって所得税から控除が受けられる制度です。

  • 控除期間:原則10年間(最大13年の場合もあり)
  • 控除額:住宅ローン残高の0.7%(上限あり)

会社の年末調整では対応できないため、初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は会社の手続きで対応可能です。

控除額は所得税から引かれ、さらに引ききれない場合は住民税にも反映されるため、高額の節税が期待できます。

医療費控除・ふるさと納税

医療費控除は、年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合に、その超過分が所得控除となる制度です。家族全員分を合算できるため、高額の医療費が発生した年は活用すると効果的です。

ふるさと納税は、個人事業主と同様にサラリーマンでも利用可能で、控除上限内で寄附すれば、所得税と住民税から相応の金額が差し引かれます。「ワンストップ特例制度」を使えば、確定申告をせずに手続きできる点も魅力です。

特定支出控除

サラリーマンが業務に関連して自腹で支出した経費について、一定条件を満たせば所得控除を受けられる制度です。

対象となる支出には以下が含まれます。

  • 通勤費(上限を超えた分)
  • 単身赴任の引越費用
  • 職務に直接必要な資格取得費用
  • 業務に必要な図書費・研修費など

ただし、控除の適用には「会社の証明書」が必要であり、かつ給与所得控除額の半分を超える支出でなければ適用されないなど、ハードルはやや高めです。

このように、個人事業主とサラリーマンでは、利用できる節税制度や控除の範囲に大きな違いがあります。個人事業主は、帳簿や確定申告の手間があるものの、そのぶん節税の裁量が広く、戦略的に税負担を軽減できます。一方、サラリーマンも控除制度を知っておくことで、税負担を抑えることは十分可能です。

それぞれの立場に合った節税制度を正しく理解し、確実に活用していくことが、賢い納税・資産形成の第一歩となります。

参考:サラリーマン+個人事業主が最強な理由!税金や両者の比較を紹介

法人成りも選択肢?さらに節税を目指すなら

法人成りも選択肢?さらに節税を目指すなら

個人事業主としてある程度の売上・利益が出るようになった場合、「法人化(法人成り)」を検討することも一つの節税戦略です。法人成りとは、個人事業主から株式会社や合同会社などの法人へと事業形態を切り替えることを指します。

法人化によって会計や税務が複雑になる一方で、税率の仕組みが変わり、所得分散や役員報酬の設定などを活用することで、個人よりも有利な節税が可能になるケースがあります。ここでは、法人化による税負担の変化や、社会保険に関する注意点を整理して解説します。

法人化による税負担の変化

個人事業主の税金は「所得税」で課税され、累進課税制度が適用されるため、所得が増えるほど税率が上がります。最高税率は45%に達するため、年収が増えてくると税負担が重く感じるようになるでしょう。

一方、法人は「法人税」を中心とする税制が適用され、税率は一定水準に抑えられています。

【個人と法人の税率比較(目安)】

区分

税率の特徴

所得税(個人)

5%〜45%の累進課税+住民税10%

法人税(法人)

実効税率約23.2%前後(中小企業なら約15〜21%)

法人化の大きなメリットは、「利益の一部を役員報酬として支給し、自分への給与所得として分配する」という所得分散が可能になる点です。たとえば、法人としての利益をある程度抑え、自身の報酬を給与所得として得ることで、給与所得控除や配偶者控除などを活用できるため、実質的な手取りが増えることがあります。

また、法人では赤字の繰越控除が最大10年間可能であり、将来的な黒字との相殺が可能になるなど、経営視点での税務戦略にも柔軟に対応できます。

【法人化による節税効果が期待できるケース】

  • 年間利益が500万円以上ある
  • 家族へ給与を支給し、所得分散したい
  • 経費化したい支出が増えてきた
  • 将来の資産形成や融資拡大を視野に入れている

ただし、設立コスト(登録免許税や定款認証)や、法人住民税(赤字でもかかる均等割)、決算申告の手間なども発生するため、事業規模や継続性に応じた判断が必要です。

社会保険の取り扱いとデメリット

法人化した場合、代表者であっても原則として「役員=従業員」として社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務づけられます。これが個人事業主と大きく異なるポイントのひとつです。

【個人事業主】

  • 国民健康保険(自治体が運営)
  • 国民年金(定額)

【法人化後】

  • 健康保険(協会けんぽ等)
  • 厚生年金(報酬比例・将来の年金額は大きい)

法人にすると保険料の負担が増える一方で、老後の年金額や医療保障が手厚くなるメリットもあります。厚生年金は保険料も高額ですが、将来受け取る年金額は国民年金に比べて大幅に増えるため、長期的な視点では資産形成としての側面もあります。

【社会保険の注意点】

  • 法人の場合、社会保険料は会社と個人が折半(実質的には全額自分が負担)
  • 社会保険料の算定基準となる「役員報酬」は自由に設定できるが、節税を意識して低く設定しすぎると信用低下につながることも
  • 雇用が発生すれば、雇用保険や労災保険の加入義務も出てくる

さらに、法人設立後は決算書の作成・法人税申告・社会保険事務など、会計や労務の専門知識が求められるため、税理士や社労士との契約を検討する必要も出てきます。

【法人化の主なデメリット】

  • 設立・運営コストがかかる
  • 毎年の決算申告が必須
  • 赤字でも法人住民税の均等割(最低7万円程度)が課される
  • 事務作業が複雑になる

個人事業主として一定の売上・利益が出るようになった場合、法人化は有効な節税策の一つです。ただし、節税効果だけでなく、社会保険の加入義務や運営コスト、会計・労務の複雑さもあるため、メリットとデメリットを正しく理解したうえで判断することが大切です。

税理士に相談しながら、年収・利益・家族構成・将来設計なども加味して、法人化のタイミングを検討しましょう。

参考:【徹底比較】個人事業主と法人の違い12個!法人化で得する条件とは

よくある質問

よくある質問

Q. どっちが手取りが多いの?

同じ年収でも、個人事業主とサラリーマンでは手取り額に差が生まれることがあります。これは、税金や社会保険料の仕組み、活用できる控除の違いが主な原因です。

一般的に、年収が400万円未満程度であれば、社会保険料負担の軽いサラリーマンの方が手取りが多くなる傾向があります。しかし、年収が増えるにつれ、個人事業主の方が経費や各種控除を活用できるため、600万円以上になると手取りが逆転するケースも珍しくありません

ただし、個人事業主は「自分で管理・申告する負担」や「社会保障制度の違い」もあるため、単純な金額だけでなく働き方全体を踏まえて判断する必要があります。

Q. 副業で個人事業主になるとどうなる?

本業でサラリーマンとして働きながら、副業で個人事業主になることは可能です。たとえば、本業は会社員で、副業としてWeb制作やライティング、ハンドメイド販売などを行う場合、副業部分の収入は「事業所得」または「雑所得」として扱われます。

年間の副業所得が20万円を超えると、確定申告が必要となるため、売上・経費・所得の記録を日々行う習慣が求められます。また、副業の所得が増えれば、住民税の金額にも影響するため、「普通徴収」を選んで会社に副業がバレないようにするなどの工夫も重要です。

さらに、開業届を提出して青色申告をすれば、最大65万円の控除や赤字の繰越などが可能になります。副業規模が拡大する見込みがあるなら、早めに個人事業主として登録しておくことをおすすめします。

Q. 節税対策はどちらが有利?

節税の自由度で言えば、圧倒的に個人事業主の方が有利です。事業に関する支出を「必要経費」として計上できるほか、青色申告特別控除や小規模企業共済、iDeCoなど、所得控除の選択肢も豊富です。さらに、将来的に法人化することで、より高度な節税策を実行することも可能になります。

一方、サラリーマンの場合は会社が税務処理を代行してくれる反面、節税の選択肢は限定的です。住宅ローン控除や医療費控除、ふるさと納税などが主な手段ですが、積極的に自分で申告しない限り、税金は自動的に処理されてしまいます

つまり、「税務の自由度=節税の余地」と考えるなら、個人事業主のほうが節税対策を講じやすいと言えるでしょう。ただし、税務処理や記帳の負担があるため、会計ソフトや税理士の活用も視野に入れる必要があります。

参考:フリーランス(個人事業主)が支払う税金の種類と節税対策を解説

まとめ:税金の違いを理解して、自分に合った働き方を

まとめ:税金の違いを理解して、自分に合った働き方を

個人事業主とサラリーマンでは、収入の得方だけでなく、課税の仕組みや納税方法、社会保険制度まで大きく異なります。どちらにもメリットとデメリットがあり、「どちらが得か」は一概に言い切れません。

サラリーマンは、税務や保険の手続きを会社が代行してくれるという安心感がある一方、節税の選択肢は限られます。対して個人事業主は、すべてを自己管理する責任がある反面、経費や各種控除を活用することで、大きな節税が可能です。

年収やライフスタイル、今後の働き方のビジョンによって、どちらが自分に適しているかは異なります。重要なのは、それぞれの税制度の仕組みを正しく理解し、自分に合った働き方を選ぶこと。そして、選んだ働き方の中で最大限のメリットを享受するために、税金に関する知識を身につけておくことです。