個人事業主の青色申告とは?白色申告との違いや確定申告のメリットを解説

個人事業主が確定申告をする際には、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があります。特に青色申告は、最大65万円の特別控除や赤字の繰越など、税制上の優遇が多く用意されているのが特徴です。しかし、その分帳簿付けや申請の手続きに注意が必要です。本記事では、青色申告と白色申告の違いや、青色申告を選ぶことで得られるメリット、申告の手続きについてわかりやすく解説します。
青色申告とは?個人事業主が知っておきたい基礎知識

青色申告が選ばれる理由
個人事業主が事業を行う上で、確定申告は毎年欠かせない手続きです。その中でも「青色申告」は、税制上の優遇措置を受けられる申告方法として広く知られています。白色申告と比べて記帳や書類作成に手間はかかるものの、最大65万円の特別控除や赤字の繰越など、節税につながるさまざまなメリットがあります。
そもそも青色申告とは、一定の条件を満たした個人事業主が、税務署に承認を得て行う確定申告の方法です。正確な帳簿付けと所定の申請書類の提出が求められますが、その分、税負担の軽減につながる制度が多く設けられています。
また、青色申告は、事業の収支状況を明確に記録し、税務署に対して信頼性の高い申告を行うことにもつながります。事業拡大を視野に入れている個人事業主であれば、早い段階から青色申告を導入しておくことが望ましいでしょう。
青色申告できる所得の種類(事業・不動産・山林)
青色申告はすべての所得に適用されるわけではなく、以下の3つの所得に該当する場合に選択することが可能です。
1. 事業所得
もっとも代表的なのが、個人事業主が事業活動によって得た「事業所得」です。たとえば、デザイナー、ライター、美容師、飲食業など、継続的な事業によって収入を得ている場合は、事業所得に該当します。多くの個人事業主がこの区分に属します。
2. 不動産所得
不動産の賃貸や管理によって得られる収入も、一定の条件を満たすことで青色申告の対象になります。アパートやマンションのオーナー業、駐車場経営などが該当します。ただし、不動産の数が少なく事業的規模に達していない場合は対象外となる可能性があります。
3. 山林所得
山林を伐採して売却した場合に得られる「山林所得」も青色申告の対象となります。一般的には馴染みが薄いかもしれませんが、林業に携わる個人や相続で山林を得た人などが該当します。
これらの所得のいずれかを得ている個人事業主であれば、一定の手続きを踏むことで青色申告を選択することができます。
参考:青色申告とは?確定申告時のメリットや白色申告との違いを解説
青色申告ができる人の条件

青色申告を利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです。
1. 所得税の青色申告承認申請書を期限までに提出する
まず必要なのは、青色申告を始める前に「所得税の青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出することです。提出期限は「開業した年の3月15日」もしくは「事業開始から2か月以内」のいずれか早い方となっており、これを過ぎるとその年の青色申告はできません。
2. 対象となる所得がある
前述のとおり、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかを得ていることが条件です。たとえば給与所得のみ、副業で少額の雑所得を得ている場合などは、青色申告の対象外となります。
3. 帳簿を適正に記帳し、保存する
青色申告を行うためには、原則として複式簿記で帳簿を記帳し、正確な内容を保管する必要があります。これにより、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。ただし、簡易な記帳(単式簿記)を選ぶことで10万円控除を受けることも可能です。
4. 適切な提出書類を揃えて期限内に申告する
確定申告の際には、「青色申告決算書」と「確定申告書B」をはじめとした必要書類を揃え、期限までに提出しなければなりません。2025年分の確定申告期限は、通常どおりであれば2026年3月15日です。
参考:青色申告とは?やり方・対象者を初心者や個人事業主・フリーランス向けに優しく解説
白色申告との違いとは?メリット・デメリットを比較

個人事業主が確定申告をする際には、「青色申告」か「白色申告」のどちらかを選ぶことになります。この2つはどちらも所得税の申告方法ですが、税制上の扱いや必要な手続きに大きな違いがあります。ここでは、青色申告と白色申告の違いについて、具体的に比較しながら解説します。
記帳義務と帳簿の違い
青色申告と白色申告では、まず記帳義務と帳簿の内容に大きな違いがあります。
青色申告の場合、税制上の特典を受ける条件として「複式簿記による記帳」が求められます。これは取引を仕訳帳と総勘定元帳に二重で記録する方式で、会計の専門知識がある程度必要です。また、帳簿や書類を原則7年間保存する義務もあります。記帳内容は青色申告決算書の作成に反映され、確定申告時に提出が必要です。
一方、白色申告の場合も記帳は必要ですが、「単式簿記」と呼ばれる簡易な記録方法でも認められています。記帳内容の詳細さも問われず、保存期間も原則5年間と青色申告に比べてやや短くなっています。かつては白色申告には記帳義務がありませんでしたが、2014年から帳簿作成・保存が義務化され、現在では青色・白色問わず、すべての個人事業主が帳簿を作成する必要があります。
控除額の違い
青色申告と白色申告の大きな違いのひとつが、受けられる控除額です。
青色申告では、以下のような「青色申告特別控除」が受けられます。
つまり、最大で65万円の所得控除を受けることができ、節税効果が非常に大きいのが青色申告の特徴です。これにより、納税額が大きく変わる可能性があります。
対して白色申告にはこのような特別控除が一切なく、所得金額のまま課税対象となります。そのため、節税メリットを得にくいというデメリットがあります。
手続き・書類の違い
青色申告を行うには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。この申請は、原則として事業開始日から2か月以内、またはその年の3月15日までに行わなければなりません。これを提出していない場合は、どれだけ複式簿記を使って帳簿を整えていても、青色申告として受理されません。
一方、白色申告は特別な届け出が不要で、開業届を提出していれば自動的に白色申告となります。開始のハードルが低く、すぐに確定申告に臨めるという点が特徴です。
ただし、青色申告には特別控除以外にも、家族への給与を必要経費にできる「青色事業専従者給与」や、赤字の繰越・繰戻しなどの制度もあり、将来的に事業を拡大する予定がある個人事業主には有利な仕組みです。
税務署対応や調査のリスク
青色申告と白色申告では、税務署からの信頼性にも差があります。青色申告は、帳簿内容を詳細に記録し、申告書類も整備されているため、税務署からの信頼度が高く、税務調査のリスクが低いとされています。仮に調査が入った場合でも、記帳がしっかりしていれば説明がしやすく、追徴課税の可能性も低くなります。
これに対し、白色申告は帳簿が簡素で、控除もないため、税務署から見て申告内容が曖昧になりやすいという印象を持たれやすい傾向があります。その結果、青色申告に比べて税務調査の対象になる可能性が高くなるとも言われています。
また、白色申告の場合は記帳ミスや記録の不備があっても特別控除などのペナルティはありませんが、青色申告では記帳が正しくなければ控除が受けられない、もしくは取り消されるリスクがあるため、正確な帳簿作成が求められる点には注意が必要です。
参考:青色申告とは? 白色申告との違いや豊富なメリット、必要な準備・書類を解説
青色申告の主なメリットと節税効果

個人事業主が確定申告をする際、青色申告を選択する最大の理由は、何といってもその節税効果の高さです。白色申告にはない控除や優遇措置が数多く用意されており、正しい手続きを行うことで、税金を大幅に軽減することが可能です。
ここでは、青色申告を選ぶことで得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
最大65万円の青色申告特別控除
青色申告最大の魅力が「青色申告特別控除」です。この制度では、一定の条件を満たすことで、以下のように所得から控除が受けられます。
- 65万円の控除:複式簿記による帳簿を作成し、電子申告(e-Tax)または電子帳簿保存をしている場合
- 55万円の控除:複式簿記を使っていても、紙で提出するなど電子保存をしていない場合
- 10万円の控除:簡易帳簿(単式簿記)による記帳を行っている場合
たとえば、年間の事業所得が300万円だった場合、65万円の控除を受けることで、課税対象となる所得が235万円になります。このように、所得税や住民税の計算基礎が減るため、納税額が大きく軽減されるのです。
控除を受けるには、適切な帳簿の作成や保存、そして期限内の申請が求められるため、日頃からの記帳や書類管理が重要です。
家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」
個人事業主が家族を従業員として雇用している場合、その給与を必要経費として計上できる制度が「青色事業専従者給与」です。これは青色申告者のみに認められている制度で、白色申告の場合には「専従者控除」として上限付きの控除しか認められていません。
たとえば、配偶者や子どもが事業にフルタイムで従事している場合、その労働に見合った給与を経費にすることが可能です。これにより、事業所得を圧縮でき、結果的に課税所得も減少します。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 青色申告承認申請書とは別に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
- 実際に家族が事業に従事していること(専従者であること)
- 支払う給与が労働内容に対して妥当な金額であること
これらの要件を満たし、正しく給与を支払えば、節税と家族への報酬の両立が可能になります。
参考:個人事業主が青色申告をするには?やり方や条件を分かりやすく解説
赤字の繰越・繰戻しによる節税

事業が赤字になった場合でも、青色申告をしていれば損失の繰越や繰戻しによって節税効果が得られます。
純損失の繰越控除(最長3年間)
青色申告者は、事業で生じた赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越すことが可能です。たとえば、1年目に100万円の赤字を出し、2年目に200万円の黒字が出た場合、課税対象となる所得は200万円-100万円=100万円になります。
純損失の繰戻し還付
さらに、前年に黒字で納税していて、今年赤字になった場合は、前年度に支払った所得税の一部を還付してもらうことも可能です(繰戻還付)。
これらの制度は白色申告では利用できないため、不安定な収益構造の事業を営む個人事業主にとって、強力なリスクヘッジとなります。
その他の特典(減価償却、貸倒引当金など)
青色申告には、上記以外にも事業運営に役立つさまざまな特典があります。
少額減価償却資産の一括償却
通常、10万円以上30万円未満の資産は数年にわたって減価償却する必要がありますが、青色申告者であれば年間300万円まで一括で必要経費に計上することが可能です。これはパソコンや事務機器などの購入時に非常に便利です。
貸倒引当金の設定
将来の売掛金の貸し倒れに備え、見込み額をあらかじめ経費として計上できるのが「貸倒引当金」です。青色申告者であれば、売掛金や貸付金の一定割合を損金として見積もることができ、税負担を抑える効果があります。
更正の制限
青色申告者は、帳簿が適切に記録・保存されている限り、税務署による課税処分が制限される「更正の制限」という保護も受けられます。これにより、不当な課税リスクを回避できるという安心感も得られます。
参考:青色申告とは?白色申告との違いや確定申告の方法をわかりやすく解説
青色申告のデメリットと注意点

青色申告には多くのメリットがありますが、個人事業主にとって必ずしも「簡単で楽な申告方法」というわけではありません。節税効果が大きい分、一定の手間や知識、準備が求められます。ここでは、青色申告を選択するうえで注意しておきたいデメリットと実務上のポイントについて解説します。
複式簿記での記帳が必要
青色申告で65万円または55万円の特別控除を受けるには、複式簿記による帳簿記帳が必須条件です。複式簿記とは、「借方」と「貸方」に分けてすべての取引を記録する会計方式で、簿記の知識がなければ難しく感じることもあります。
たとえば、売上や経費の内容をただ記録するだけでなく、現金・預金・売掛金などの勘定科目に仕分けし、帳簿上で整合性を保つ必要があります。これに加えて、仕訳帳や総勘定元帳といった帳簿の作成と保存も求められます。
市販の会計ソフトやクラウド会計サービスを活用すれば記帳の負担は軽減できますが、それでもある程度の会計知識や業務時間は必要です。
所得税の青色申告承認申請書が必要
青色申告を始めるには、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この書類を提出して承認を得なければ、どれだけ帳簿を整えていても青色申告を行うことはできません。
申請の提出期限は、開業日から2か月以内またはその年の3月15日までです。期限を過ぎてしまうと、その年の青色申告はできず、白色申告で確定申告を行うことになります。特に、初めて開業する個人事業主や副業から本格的に事業化した人にとっては、この提出タイミングが非常に重要です。
また、青色事業専従者給与を経費に計上する場合は、別途「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出も必要です。これらの手続きが漏れていると、節税効果を十分に得ることができません。
書類管理と事務負担が増える
青色申告は税務署からの信頼が厚い反面、それに伴って書類管理の手間や事務的な作業が増えるという側面もあります。作成した帳簿や領収書、請求書などの関連書類は原則として7年間の保存義務があり、誤って破棄してしまうと調査時に不利になる可能性があります。
また、決算期には「青色申告決算書」と「確定申告書B」を作成し、期限までに提出しなければなりません。提出方法には税務署への持参・郵送・e-Taxによる電子申告などがありますが、いずれにせよ期限厳守が原則です。
そのため、帳簿の記載から書類整理、確定申告書類の作成までを計画的に進める必要があるのが青色申告の実態です。事務作業が苦手な方や、事業に専念したい方は、会計ソフトの導入や税理士への依頼を検討するのも一つの手です。
青色申告を始めるための手続きと提出書類
青色申告は、個人事業主にとって大きな節税効果をもたらす有利な制度ですが、利用するには事前の手続きと確定申告時の適切な書類提出が欠かせません。ここでは、青色申告を始めるための基本的な流れと、必要な提出書類について詳しく解説します。
開業前に提出すべき「青色申告承認申請書」
青色申告を行うには、まず「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。これは、青色申告をしたいという意思を税務署に届け出て、承認を受けるための申請書です。この手続きを行っていない場合、どれだけ丁寧に帳簿をつけていても、青色申告として認められず、白色申告扱いとなってしまいます。
提出期限
「青色申告承認申請書」の提出期限は以下の通りです。
- 新規開業した場合:事業開始日から2か月以内
- すでに事業を行っている場合:その年の3月15日まで
たとえば、1月10日に事業を開始した場合、申請書の提出期限は3月10日になります。提出が遅れると、その年は青色申告ができず、翌年からの適用となってしまうため、特に開業直後の個人事業主は期限に注意が必要です。
提出先・方法
申請書は、納税地を管轄する税務署に提出します。方法は以下の3つです。
- 税務署の窓口に持参
- 郵送
- e-Tax(電子申告)
提出後、特別な通知が来ることはありませんが、税務署が受理した時点で承認されたとみなされます。念のため、提出時の控えを保管しておくと安心です。
記載項目の例
申請書には以下のような情報を記入します。
- 氏名・住所・事業の内容
- 所得の種類(事業所得、不動産所得など)
- 記帳方式(複式簿記/簡易簿記)
- 決算期(通常は12月31日)
- 所得の種類ごとに提出する帳簿の種類
書き方が不安な場合は、国税庁のWebサイトや各種会計ソフトのサポートを活用するとスムーズです。
確定申告で提出が必要な書類一覧

青色申告の承認を受けた後は、毎年の確定申告に必要な書類を作成・提出する必要があります。以下は、個人事業主が青色申告で提出する基本的な書類一覧です。
1. 確定申告書B(第一表・第二表)
個人事業主の所得税申告に使用する基本書類です。事業所得や各種控除、税額などを記入します。控除対象となる社会保険料や医療費、寄附金などもこの書類で申告します。
2. 青色申告決算書(全4ページ)
事業の年間収支をまとめた書類で、以下のような情報を記載します。
- 損益計算書(収入・経費・利益)
- 貸借対照表(資産・負債の状況)
- 月別売上高・仕入高の内訳
- 減価償却資産の明細
複式簿記で記帳している場合、この「青色申告決算書」が特別控除の根拠になります。適切に作成されていないと控除が受けられない可能性があるため、慎重に作成しましょう。
3. 各種控除証明書
所得控除を受けるために、以下のような証明書の添付も必要です。
これらは提出書類ではなく「添付」書類になるため、忘れずに申告書と一緒に出す必要があります。
4. その他必要に応じて提出する書類
以下の書類は、個人事業主の事業内容や申告内容に応じて必要となることがあります。
- 青色事業専従者給与に関する届出書(事前提出)
- 収支内訳書(青色申告でない所得がある場合)
- 消費税の確定申告書(課税売上が一定額を超える場合)
参考:【個人事業主向け】確定申告のやり方や注意点、必要書類を解説!
青色申告のやり方と提出の流れ

青色申告を行うには、正確な帳簿作成から書類提出まで、いくつかの手順を踏む必要があります。個人事業主にとっては、慣れない作業も多くあるかもしれませんが、ひとつひとつの工程を押さえておけば、毎年の確定申告もスムーズに進められるようになります。
ここでは、青色申告のやり方と提出の流れを3つのステップに分けて解説します。
1. 帳簿の作成と記帳方法
青色申告を行うためには、日々の取引を記録した帳簿を作成することが基本です。個人事業主は、売上・仕入・経費・資産・負債などのすべての金銭の流れを正確に記録する義務があります。
記帳方式の選択
青色申告特別控除を受けるには、以下のいずれかの記帳方式を選ぶ必要があります。
- 複式簿記(最大65万円または55万円の控除対象)
- 簡易簿記(単式簿記)(10万円控除の対象)
複式簿記では、「仕訳帳」と「総勘定元帳」という2種類の帳簿が中心となります。取引を「借方」と「貸方」に分けて記録し、仕訳帳に記入した内容を総勘定元帳に転記していきます。
帳簿作成には、以下のような方法が一般的です。
- 手書きで記帳(簿記の知識が必要)
- Excelなどの表計算ソフトを使用
- クラウド型の会計ソフト(freee、やよい、マネーフォワードなど)
会計ソフトを使えば、仕訳の自動化やレポート出力が可能になり、記帳のミスや手間を大幅に削減できます。特に事業規模が大きくなるほど、ツール活用の恩恵は大きくなります。
2. 青色申告決算書と確定申告書の作成
帳簿をもとに、確定申告に必要な書類を作成します。主に提出が必要なのは以下の2つです。
青色申告決算書
個人事業主が作成する青色申告決算書は4ページ構成となっており、内容は以下の通りです。
- 損益計算書(収入、経費、利益)
- 貸借対照表(資産・負債のバランス)
- 月別売上・仕入の内訳
- 減価償却資産の明細
この書類により、事業の収益性や資産状況が明らかになり、特別控除の根拠にもなります。記帳ミスがあると控除が適用されない場合もあるため、正確に作成しましょう。
確定申告書B
青色申告をする個人事業主が使用するのは「確定申告書B」です。こちらには、総所得額・所得控除・課税所得額・納税額などを記入します。
さらに、医療費控除やふるさと納税などの控除を申請する場合は、それぞれの証明書類を添付します。保険料控除や扶養控除などの申請も忘れずに記載しましょう。
3. 提出方法の選択(郵送・持参・e-Tax)
作成した書類は、所轄の税務署へ提出します。提出方法は以下の3通りです。
郵送で提出
- 書類一式を封筒に入れて郵送します。
- 税務署の控えが必要な場合は、返信用封筒と切手を同封しておくと控えが返送されます。
- 消印日が提出日となるため、期限ギリギリでも当日消印であれば有効です。
税務署に持参して提出
- 最寄りの税務署に直接持ち込む方法です。
- 職員による簡易チェックを受けられることもあり、控えに受付印を押してもらえます。
- 繁忙期は混雑するため、早めの提出がおすすめです。
e-Tax(電子申告)
- 国税庁の「e-Tax」システムを利用して、オンラインで申告書を提出する方法です。
- 電子申告を選ぶと、青色申告特別控除の65万円が適用される要件のひとつになります。
- マイナンバーカードとICカードリーダーが必要ですが、スマホと専用アプリを使えば簡単に完結できます。
会計ソフトを使えば、e-Taxとの連携もスムーズに行えるため、初心者でも安心して提出できます。控除を最大限活用したい個人事業主は、e-Taxでの提出がおすすめです。
青色申告をスムーズに行うためのポイント

青色申告は節税効果の高い制度ですが、その一方で「手続きが難しそう」「帳簿作成が大変そう」と感じる個人事業主も少なくありません。実際、複式簿記や申告書の作成など、専門的な知識や作業時間が必要になる場面も多いのが実情です。
そこで、青色申告をスムーズに進めるためには、確定申告ソフトの活用や税理士への依頼といった手段を上手に取り入れることが重要です。このセクションでは、それぞれのメリットや費用感について詳しく解説します。
確定申告ソフトを使った効率的な方法
近年では、青色申告に対応したクラウド型の会計・申告ソフトが多数登場しており、個人事業主の間でも導入が進んでいます。代表的なソフトには以下のようなものがあります。
- freee(フリー)
- マネーフォワード クラウド確定申告
- 弥生の青色申告 オンライン
これらの確定申告ソフトは、帳簿作成から決算書・申告書の作成、さらにはe-Taxによる電子申告まで一連の流れを自動化・効率化してくれるのが特徴です。
ソフトを使うメリット
- 自動仕訳で記帳が簡単に 銀行口座やクレジットカードを連携すれば、取引データを自動で取り込み、AIが仕訳候補を提案してくれます。仕訳の知識がなくても安心です。
- レポート機能で経営状況を可視化 月次の収支やキャッシュフロー、売上分析など、事業の健康状態をリアルタイムで把握できます。
- 申告書類が自動作成できる 必要な情報を入力していくだけで、青色申告決算書や確定申告書Bが自動で完成。提出もオンラインで完結できます。
- 最大65万円控除にも対応 電子申告に対応しているため、青色申告特別控除65万円の条件を満たすことができます。
費用の目安
- 月額1,000円〜3,000円程度(年額プランで割引あり)
- 無料プランも一部あり(機能制限つき)
特に初めて青色申告をする個人事業主にとっては、こうしたソフトを導入することで作業時間の削減やミスの防止が期待できるため、大きな助けとなるでしょう。
税理士に依頼するメリットと費用相場
会計ソフトを使っても「複式簿記が不安」「控除の適用ミスを避けたい」と感じる場合、税理士に依頼するという選択肢も有効です。特に、売上規模が大きくなった個人事業主や、複数の事業を掛け持ちしているケースでは、専門家のサポートが心強いものになります。
税理士に依頼するメリット
- 帳簿作成から申告書作成まで丸投げ可能 領収書や通帳のコピーを渡すだけで、帳簿の記帳・決算書作成・申告書作成をすべて任せられます。
- 節税対策のアドバイスが受けられる 必要経費の判断や控除の最適な適用方法など、税務のプロならではの視点で助言してもらえます。
- 税務調査にも対応してもらえる 万が一、税務署から調査が入った場合にも、税理士が対応してくれるケースが多く安心です。
- 時間と手間を削減できる 確定申告時期は多忙になりがちですが、事務作業を外注することで本業に集中できる環境が整います。
費用の目安
- 単発で確定申告のみ依頼する場合:3万円〜10万円程度
- 記帳代行+確定申告セット:5万円〜15万円程度
- 顧問契約(月次+年次申告込み):月額1万円〜+決算料
費用は事業の規模や依頼範囲によって異なりますが、経費として計上できるため、コスト以上のメリットを得られることも少なくありません。
個人事業主の青色申告に関するよくある質問

青色申告と白色申告、どちらが得?
節税の観点から見ると、青色申告のほうが圧倒的に有利です。最大65万円の青色申告特別控除をはじめ、赤字の繰越や専従者給与の経費計上など、税負担を軽減する制度が多数用意されています。一方、白色申告は記帳が簡単で手続きもシンプルですが、特別な控除が一切なく、節税効果は期待できません。将来の事業拡大や安定的な運営を考えている個人事業主であれば、青色申告を選ぶことをおすすめします。
青色申告は副業でもできる?
副業であっても、事業所得や不動産所得がある場合は青色申告が可能です。ただし、継続的に収入があり、事業性が認められることが前提となります。副業収入が雑所得に該当する場合は青色申告の対象外となるため、収入の内容や性質を確認することが重要です。副業でもしっかりと事業として成立しているなら、青色申告による節税メリットを活用しましょう。
青色申告は取り消されることがある?
青色申告は、税務署の承認を得て利用できる制度ですが、不適切な申告や帳簿管理の不備があると取り消されることがあります。たとえば、帳簿を保存していない、仮装・隠ぺいがある、無申告を繰り返すなどの場合、青色申告の承認が取り消され、白色申告に戻されてしまいます。特別控除などの恩恵が失われるため、日頃から適正な記帳と申告を心がけましょう。
参考:青色申告とは?初めてでもわかりやすい基礎知識やメリット・デメリット
個人事業主の青色申告に関するまとめ

青色申告は、個人事業主が確定申告を行う上で、非常に大きな節税効果を持つ制度です。複式簿記や事前申請といったハードルはあるものの、最大65万円の特別控除や赤字の繰越、家族への給与の経費化など、白色申告では得られないメリットが豊富に用意されています。
事業規模や知識レベルに応じて、会計ソフトや税理士の力を活用すれば、青色申告は十分に実現可能です。確定申告の精度を高め、安定した経営を続けるためにも、青色申告への切り替えを前向きに検討してみてはいかがでしょうか。しっかり準備をすれば、あなたの事業の強い味方となってくれるはずです。