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フリーランス新法とは?制定の背景や内容を徹底解説

近年、働き方の多様化によりフリーランス人口が急増していますが、その一方で報酬未払い・不当な契約・ハラスメントといった課題も深刻化しています。そうした背景を受けて制定されたのが「フリーランス新法」です。

本記事では、フリーランス新法の概要や制定の背景、フリーランスと発注者が守るべきルール、そして今後の影響について、わかりやすく解説します。安心して働くためにも、ぜひチェックしておきましょう。

フリーランス新法とは?その目的と意義

フリーランス新法とは?その目的と意義

なぜフリーランス保護の法律が必要なのか

2024年11月1日より施行された「フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」は、フリーランスと企業の間における取引の適正化を目的とした新たな法律です。近年、働き方の多様化が進み、フリーランスとして働く人の数は年々増加しています。副業・兼業の広がり、リモートワークの普及、デジタル技術の発展により、会社に所属せず個人で業務を請け負う働き方が一般的になりつつあります。

しかしその一方で、フリーランスという立場の不安定さや取引の不透明さが大きな社会課題として浮上してきました。契約書が取り交わされないままの業務依頼、報酬の支払い遅延、突然の契約解除ややり直し依頼など、企業側と対等な関係で交渉することが難しいケースが後を絶ちません。

こうした背景から、これまで「フリーランス・ガイドライン」として示されてきた内容を法制化し、フリーランスの就業環境を法的に保護・整備することが求められるようになりました。それが「フリーランス新法」です。公正取引委員会や厚生労働省など関係省庁が連携し、フリーランスの取引の実態調査をもとに制定されたこの新法は、発注事業者の義務や禁止事項、フリーランスに対する保護措置などを明確に定めています。

これまでグレーゾーンとされていた取引慣行が、法的に規制対象となることで、フリーランスとして働く人が安心して仕事を受けられる環境が整いつつあります。単なる「推奨」や「努力義務」ではなく、法律に基づく強制力があることが最大の特徴です。

「特定受託事業者」と「特定業務委託事業者」とは

フリーランス新法では、保護の対象となるフリーランスを「特定受託事業者」、義務を負う発注側企業を「特定業務委託事業者」と定義しています。

特定受託事業者とは、法人格を持たない個人(または一定の小規模法人)で、他者から業務の委託を受けて報酬を得ている人を指します。つまり、いわゆるフリーランスや個人事業主、場合によっては一人会社の経営者も該当する場合があります。ただし、常時雇用されている従業員を持たないことが前提です。

一方で、特定業務委託事業者とは、継続的に業務委託を行っている企業や個人事業主などが該当し、フリーランスに対して一定の責任と義務を持つ存在です。フリーランスに業務を依頼する企業が、この定義に当てはまります。

このように、誰が保護対象で、誰が義務を負うのかを明確に定義していることが、フリーランス新法の重要なポイントです。フリーランス本人も、自身が「特定受託事業者」に該当するかどうかをしっかり理解し、自分の立場や権利を把握しておく必要があります。

なお、副業としてフリーランス活動を行っている会社員や、契約の形式が曖昧な業務委託も、状況によってはこの法律の対象になる可能性があるため注意が必要です。

参考:フリーランス新法とは|内容、背景、罰則、影響をわかりやすく解説

フリーランス新法が制定された背景

フリーランス新法が制定された背景

フリーランスの増加と取引トラブルの実態

近年、フリーランスとして働く人が急速に増えています。副業・兼業の解禁や働き方改革、IT技術の発達により、正社員という働き方に縛られない「フリーランス」という働き方が定着しつつあります。内閣官房「新しい資本主義実現本部」などの調査でも、日本国内におけるフリーランス人口は462万人以上に達しており、就業者全体のおよそ7%を占める規模です(2023年時点)。

しかし、このような広がりの裏で、取引に関するトラブルも多く発生しています。例えば、業務を受注したにもかかわらず契約書が交わされないケース、納品後の報酬未払いや支払い遅延、不当な値下げややり直し要求、仕事と無関係な商品の購入を強要されるなど、フリーランスという立場の弱さが原因となって不利益を被る事例が数多く報告されています。

公正取引委員会が2020年から実施した実態調査では、約6割以上のフリーランスが何らかのトラブルや不利益を経験していると回答しています。企業とフリーランスの間には契約の明文化が進んでおらず、法的保護が不十分だったことが、こうした問題の温床となっていました。

ガイドラインから法制化への流れ

このような現状を受けて、2021年には「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が内閣官房・厚生労働省・公正取引委員会などの連携により策定されました。このガイドラインは、発注者とフリーランスの適切な契約関係や報酬支払い、ハラスメント防止といった観点から、望ましい対応を示したものでした。

しかし、あくまでも「努力義務」にとどまっていたため、法的拘束力がなく実効性に乏しいという課題がありました。そのため、ガイドラインを補強する形で、フリーランス保護を法的に担保する必要性が高まり、2023年に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(通称:フリーランス新法)」が国会で可決されました。

こうして、ガイドラインの内容が一部明文化され、違反には罰則も適用される新法が2024年11月1日に施行されることとなったのです。

他の法制度(下請法・独禁法・労働法)との関係

フリーランス新法は、既存の法制度との関係性を整理したうえで制定されました。これまでもフリーランスに対する不当な扱いは、「独占禁止法」や「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」によって規制される余地はありました。しかし、これらの法律は適用条件が限定的で、実際にフリーランスが保護を受けるにはハードルが高かったのが実情です。

例えば下請法は、親事業者と下請事業者の資本金規模などに応じて適用が決まるため、個人のフリーランスが対象外になるケースも多くありました。また独占禁止法は、不当な取引制限などの「独禁法違反」に該当する行為について網羅的にカバーしているとはいえ、具体的な取引内容にまでは踏み込めない場面も少なくありませんでした。

一方、労働関係法(労働基準法など)は、企業に雇用されている「労働者」を保護する法律であり、業務委託契約のもとで働くフリーランスには原則として適用されません

このように、既存の法律ではカバーしきれなかったフリーランスの保護を、より網羅的かつ実務的に担保するために制定されたのがフリーランス新法です。法律の適用範囲が明確に定義されており、企業側に義務が課されることで、フリーランスとの取引環境に大きな変化がもたらされると期待されています。

参考:フリーランス新法いつから?施行日と5大変更点

フリーランス新法の対象者と定義

フリーランス新法の対象者と定義

対象となるフリーランスの範囲

フリーランス新法では、保護の対象となるフリーランスを「特定受託事業者」と定義しています。これは、法人格を有しない個人(または一部の小規模法人)で、継続的に他者から業務委託を受け、報酬を得ている者を指します。いわゆるフリーランスや個人事業主、SOHOなどが該当します。

具体的には、以下のような条件を満たす個人が「特定受託事業者」となります。

  • 自らの名前または屋号で業務を請け負っている
  • 業務遂行にあたり、指揮命令関係が存在しない(つまり、労働者ではない)
  • 継続的に業務委託を受けて報酬を得ている
  • 常時使用する従業員を使用していない(1人ビジネスが基本)

たとえば、ライター、デザイナー、エンジニア、動画編集者、コンサルタントなど、業務委託契約を結んで働いている個人がこの定義にあてはまります。なお、副業や兼業でフリーランス活動を行っている会社員も、条件次第では保護対象になる場合があります。

一方で、雇用契約に基づく労働者や、大規模法人の経営者などはこの定義に該当しません。フリーランスとして業務を行っていても、指揮命令関係が明確である場合や勤務時間が拘束されている場合には、労働者として別の法制度(労働基準法等)が適用される可能性があります。

そのため、自身がフリーランス新法の対象となるかどうかは、「契約の形式」ではなく「実態」によって判断される点に注意が必要です。

適用される発注事業者の条件

フリーランス新法において、フリーランスに業務を依頼する側――すなわち企業や団体などの「発注者」は、「特定業務委託事業者」としてさまざまな義務を負うことになります。

この「特定業務委託事業者」とは、特定受託事業者に対して継続的に業務を委託する事業者を指します。継続的とは、単発ではなく定期的に依頼する関係を持っているケースを指し、週単位・月単位の取引が継続している状態が典型です。

特定業務委託事業者に該当するのは、以下のような法人や個人事業主です。

  • 企業(資本金の大小は問わない)
  • フリーランスに業務を外注している個人事業主
  • プラットフォーム運営会社(クラウドソーシング系も含む)

つまり、特定受託事業者と取引を行うあらゆる企業が、原則としてこの法律の適用を受けると考えておくべきです。

この法律の目的は、取引関係の力関係により不利益を被りやすいフリーランスを守ることにあるため、発注側に対しては特に厳格なルールが設けられています。具体的には、契約内容の書面交付義務、報酬の支払期限、募集情報の明示、ハラスメント対策などが定められており、違反した場合には行政指導や罰則の対象となることもあります。

なお、1回限りの依頼であっても、「実質的に継続的」とみなされる場合は特定業務委託事業者としての義務を負う可能性もあります。したがって、フリーランスと業務委託契約を結ぶあらゆる発注者が、自身の立場と責任を明確に理解しておく必要があるでしょう。

参考:フリーランス新法とは?対象や事業者が取るべき対応、違反時の罰則について解説

フリーランス新法で定められた発注側の義務

フリーランス新法で定められた発注側の義務

2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注側の事業者に対して具体的な義務が定められました。これは、フリーランスが取引上不利な立場に置かれることを防ぐため、契約の透明性や報酬支払い、労働環境整備に関するルールを明確化するものです。

発注側、すなわち「特定業務委託事業者」に該当する企業や個人事業主は、以下の義務を正しく理解し、適切に対応する必要があります。

契約条件の書面明示義務

フリーランス新法では、業務を委託する際に契約条件をあらかじめ書面または電磁的記録で明示することが義務化されました。これは、口頭での曖昧な契約や、条件の不一致によるトラブルを未然に防ぐことを目的としています。

明示が求められる主な項目は以下のとおりです:

  • 業務内容・成果物の内容
  • 報酬の額および支払期日
  • 納品期限
  • 業務の実施場所
  • 契約期間
  • 契約解除の条件

これらの情報は、紙の書面だけでなく、PDFや電子契約ツールを利用した電磁的交付も可能です。freeeやクラウドサインなどの電子契約サービスを使えば、実務上の対応もスムーズになるでしょう。

この義務に違反した場合、行政指導や報告徴収の対象となり、悪質な場合には勧告・公表などの措置が取られる可能性があります。

報酬支払義務(60日以内など)

フリーランス新法では、フリーランスへの報酬について契約で定めた支払期日までに支払う義務が明記されています。特に重要なのが、「契約書に期日を定めていない場合でも、納品日から60日以内に支払う必要がある」という点です。

また、再委託(フリーランスがさらに外注するケース)の場合には、30日以内の支払いを求められることもあり、報酬遅延に対する罰則が実効性を持って規定されています。

これは、フリーランスが資金繰りに困ることを防ぎ、安定した経済活動を維持できるようにするための重要な措置です。過去には、納品後数か月以上も報酬が支払われず、フリーランスが泣き寝入りする事例が多発していました。新法ではこのような事態を明確に違法とし、早期の支払いを徹底することを求めています。

的確な募集情報の表示

SNSやクラウドソーシングサービス、求人サイトなどを通じてフリーランスを募集する場合、募集内容を正確かつ明確に表示する義務も新たに課されました。

具体的には、以下の情報を記載する必要があります:

  • 委託者の氏名または名称
  • 所在地・連絡先
  • 業務の内容・場所
  • 報酬の金額または算定方法
  • 勤務条件(作業時間や成果物納期など)

これにより、フリーランスが業務を受託する前に必要な情報を正確に把握できるようになります。募集情報が不十分であったり、実際の条件と異なっていた場合は、虚偽表示として法律違反に該当する可能性もあるため、発注者側は細心の注意が必要です。

参考:フリーランス法は下請法とどう違う?発注者に必要な対応を解説

出産・育児・介護への配慮義務

出産・育児・介護への配慮義務

フリーランス新法では、フリーランスのライフイベントにも配慮した契約関係の維持が求められています。具体的には、出産・育児・介護といった事情を抱えるフリーランスに対して、納期の延長や柔軟な対応を検討するなど、個別の状況に応じた配慮を行うことが努力義務として規定されています。

たとえば、育児中のフリーランスに対して一律の納期短縮や深夜対応を強制することは、不当な契約条件として問題視される可能性があります。発注者側は、フリーランスの事情に寄り添い、対等なパートナーとして信頼関係を築くことが求められます。

ハラスメント防止義務

発注者とフリーランスの間にも、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどの問題が発生することがあります。こうしたトラブルを未然に防ぐため、フリーランス新法ではハラスメント防止措置の整備義務が新たに盛り込まれました。

具体的には、以下のような対応が推奨されます

  • ハラスメント防止に関する社内方針の明示
  • 苦情受付窓口の設置
  • 相談対応の体制整備
  • 社内研修の実施など

フリーランスに対する不適切な言動や不平等な扱いは、立派な法令違反となりうるため、企業としては明確な基準を設け、対策を講じておくことが必須です。

中途解除時の予告義務と理由開示

最後に、発注者が契約期間中にフリーランスとの契約を解除する場合には、少なくとも30日前までに予告を行い、その理由を開示することが義務付けられました。

これまで、フリーランスが納品間際に突然契約解除されるケースや、理由が曖昧なまま発注を打ち切られるケースが多発しており、大きな問題となっていました。新法では、こうした一方的な契約解除からフリーランスを守るため、十分な猶予期間と明確な説明責任を発注側に課しています。

万が一、正当な理由なく突然の契約解除を行った場合は、法律違反として行政指導や制裁の対象になることもあります。したがって、契約解除の際は、書面で理由を示し、フリーランスの生活や事業継続に与える影響を最小限に抑える配慮が求められます。

このように、フリーランス新法は発注者に対して多くの義務を課し、フリーランスとの取引をより公正・対等なものにするためのルールを整備しています。発注側は今後、契約書の見直しや社内ルールの整備、情報共有の強化などを通じて、法令対応をしっかり行っていく必要があります。

参考:フリーランス新法はいつから施行?対象企業や必要な対応・罰則をわかりやすく解説

フリーランス新法で禁止される行為

フリーランス新法で禁止される行為

2024年11月に施行されたフリーランス新法は、フリーランスを不当な取引慣行から守るため、発注事業者に対して具体的な禁止行為を定めています。これまで「暗黙の了解」として行われていた不適切な対応も、フリーランス新法のもとでは明確に違法行為として扱われるようになりました。

ここでは、フリーランス新法において特に注意すべき6つの禁止行為について解説します。いずれも、フリーランスの取引の公正性を損なう行為として明確に規定されており、違反した場合には行政指導や勧告、公表などの制裁が科される可能性があります。

納品物の受取拒否

フリーランス新法では、フリーランスが納品した成果物について、正当な理由なく受け取りを拒否することを禁止しています。例えば、「思ったイメージと違う」「クライアントの都合が変わった」といった曖昧な理由での納品拒否は、法律違反となる可能性があります。

納品物が明らかに契約内容と異なっている場合を除き、発注側は成果物を受領し、契約に基づいた報酬を支払う義務を負います。成果物のクオリティが気になる場合でも、事前に契約で品質基準や検収条件を明確にしておく必要があります。

報酬の減額や買いたたき

納品後に一方的に報酬を減額したり、著しく低い金額での契約を強いる行為もフリーランス新法では禁止されています。たとえば、「他社ならもっと安くやると言っていた」といった理由で値下げを要求する、報酬を後から下げる、追加報酬を支払わずに業務範囲を拡大する、といったケースは「買いたたき」に該当します。

フリーランスは立場上、価格交渉で不利になりやすく、泣き寝入りすることも少なくありませんでした。フリーランス新法では、そうした不公正な報酬設定を法律で明確に禁止することで、対等な取引関係の実現を目指しています

成果物の返品

一度納品された成果物について、契約に違反しない限り、返品を行うことはできません。これもフリーランス新法で明示的に禁止されている行為のひとつです。

たとえば、フリーランスが契約どおりに納品したにもかかわらず、「社内の方針が変わった」「上司の判断で不要になった」といった理由で返品を求めることは、正当な根拠がなければ違法となります。返品と併せて報酬の支払いを拒否するような行為は、二重の法令違反につながります。

商品やサービスの購入・利用の強制

フリーランスに対して、取引と無関係な商品やサービスの購入を強制する行為も、フリーランス新法で明確に禁止されています。例えば、「このソフトを使って仕事をしてほしいから買ってほしい」「教材やセミナーに参加しないと案件を回せない」といったケースが該当します。

これは、業務委託の契約上は対等な関係であるべきにもかかわらず、発注者が立場を利用して経済的負担を一方的にフリーランスに押し付ける行為です。こうした慣行は、「優越的地位の濫用」として公正取引委員会の調査対象にもなります。

経済上の利益の提供要請

フリーランスに対して、報酬とは別に無償での対応や経済的な便宜を求めることも禁止行為に含まれます。たとえば「ちょっとした修正だから無料でやっておいて」「交通費は自己負担でお願い」「今後の仕事につながるから今回は無償で」といった依頼が該当します。

こうした要求は、金額的には小さくとも、継続的に積み重なることでフリーランスの経済的な損失を招きやすい行為です。契約に含まれていない労働の提供を求めることは、立場の不均衡を利用した一方的な要求とみなされ、法律により規制の対象となります。

不当なやり直し要求

フリーランス新法では、成果物に対して不当な修正ややり直しを要求する行為も禁止されています。たとえば、明らかに契約で定めた内容を超える修正、納品後の仕様変更に伴う無償修正、繰り返しの再提出を求めるといった対応が該当します。

「クライアントの好みと違ったから修正して」「想定していた使い方が変わったから作り直してほしい」といった要求も、契約上の義務範囲を超えている場合は違反です。やり直し対応が必要な場合は、契約時点で回数や範囲、料金を明示しておくことが重要です。

このように、フリーランス新法では取引の透明性と対等性を守るために、発注者が行ってはならない具体的な行為が数多く明記されています。これらの禁止事項に違反すると、発注者は行政指導・勧告・公表といった措置を受ける可能性があり、企業イメージの毀損にもつながります

フリーランスと良好な関係を築き、法令を遵守した公正な取引を行うためにも、発注者はフリーランス新法の禁止事項を正しく理解し、日々の業務に取り入れていくことが求められます。

参考:【2024年11月施行】フリーランス新法とは? 企業に求められる対応や違反時の罰則を解説

違反した場合の罰則と影響

違反した場合の罰則と影響

フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、従来のガイドラインと異なり、法的拘束力を持つ点が最大の特徴です。そのため、発注者側がフリーランス新法に違反した場合には、行政による監督や罰則、さらには社会的信用の失墜といった深刻な影響を受けることがあります。

以下では、フリーランス新法違反によって生じる代表的な2つのリスクについて詳しく解説します。

行政指導・罰金などのペナルティ

フリーランス新法に基づく義務違反が認められた場合、まずは公正取引委員会や厚生労働省からの行政指導が行われます。具体的には以下のような措置が講じられる可能性があります。

  • 報告徴収命令(法令遵守状況に関する報告提出)
  • 立入検査(事務所への調査)
  • 指導・助言(是正を促す)
  • 勧告(義務違反の是正を強く求める)
  • 公表(企業名や違反内容が公式に発表される)

さらに、これらの指導や勧告に従わない場合や、悪質性が高いと判断された場合には、過料(罰金)などの行政罰が科されることもあります。特に報告を拒否・虚偽の報告をした場合には、最大10万円の過料が課される可能性があると明記されています。

例えば、契約条件の書面明示を怠った、報酬の支払いが60日以内に行われなかった、虚偽の募集情報を公開した、などの行為は、いずれも法律違反として調査・処分の対象になります。

フリーランスとの取引は一見すると小規模なものが多く、軽視されがちですが、法律上はれっきとした「業務委託契約」であり、法令遵守が求められる正式なビジネス取引です。したがって、規模の大小に関わらず、違反行為は見逃されることはありません。

企業ブランドへの悪影響

フリーランス新法違反が公に報道された場合、発注者側の企業ブランドや社会的信用に重大なダメージを与える可能性があります。

特に近年は、企業のコンプライアンス意識が消費者や取引先から厳しく見られるようになっており、公表された企業リストは検索で簡単に確認され、SNS等でも拡散されやすい時代です。中小企業だけでなく、大手企業であっても「ブラックな発注先」としてレッテルを貼られ、炎上リスクを抱えることになります。

たとえば、ある企業がフリーランスへの支払い遅延や一方的な契約解除を繰り返していたことがフリーランス新法違反として公表された場合、採用活動や取引交渉、業界内での信用に影響を及ぼすことは避けられません。一度失われた信頼を回復するには長い時間と多大なコストが必要になります。

また、優秀なフリーランス人材との取引が難しくなることも大きな損失です。クリエイティブ業務や専門性の高いプロジェクトにおいて、優良なフリーランスは企業の競争力を支える存在です。違法行為によって「取引したくない企業」と認識されれば、事業の質やスピードにも直接的な悪影響が生じます。

フリーランスとの信頼関係は、企業活動のなかでも重要な資産のひとつです。短期的な利益を優先して違反行為を行うことは、長期的には大きなリスクを招く選択であると言えるでしょう。

以上のように、フリーランス新法違反は、法的な罰則だけでなく、企業経営そのものに深刻な影響を及ぼす可能性があります。企業側は「小規模な業務だから」と軽く考えるのではなく、フリーランスとの取引も法令に基づいたビジネス契約であることを再認識し、常にコンプライアンスを意識した対応が求められます。

参考:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ|厚生労働省

企業が今すぐ対応すべきこと

企業が今すぐ対応すべきこと

フリーランス新法の施行により、フリーランスとの取引において企業側に求められる責任と義務は大きく変わりました。これまで慣例として行ってきた取引方法が、今後は法令違反となる可能性もあります。フリーランスとの関係を適正に保ち、トラブルやリスクを未然に防ぐためには、企業として早急な対応が必要です。

ここでは、発注者である企業が今すぐ実施すべき3つの対応策を紹介します。

契約書の見直しとテンプレートの整備

最も基本でありながら重要なのが、契約書の整備です。フリーランス新法では、業務委託時に契約条件を書面または電磁的記録で明示することが義務化されているため、これまで口頭やメールベースで済ませていた企業は、契約書の導入・見直しを急ぐ必要があります。

契約書には、以下のような項目を網羅しておくことが求められます:

  • 業務内容と範囲
  • 納品期日
  • 報酬の金額と支払期限
  • 修正回数や対応範囲
  • 契約期間と解除条件

こうした情報を盛り込んだ標準契約テンプレートを用意しておくことで、取引ごとの抜け漏れを防止し、社内の業務効率化にもつながります。freeeサインやクラウドサインなどの電子契約サービスを活用すれば、やり取りもスムーズになります。

業務フローのチェック

契約書だけでなく、フリーランスとの取引プロセス全体を見直すことも不可欠です。業務の依頼から契約、納品、検収、報酬支払いに至るまでのフローが、フリーランス新法に準拠しているかどうかを確認しましょう。

特に以下の点は重点的にチェックすべきです

  • 書面交付が実施されているか
  • 報酬は60日以内に確実に支払われているか
  • 募集情報の公開内容は適切か
  • 契約解除時の予告と理由開示が行われているか

こうした業務フローに抜けや不備があると、違反リスクだけでなく、フリーランスとの信頼関係悪化にも直結します。必要に応じて、社内のルールやツール、チェックリストの整備を進めましょう。

社内への周知と教育

法令対応を徹底するには、担当者だけでなく社内全体でフリーランス新法に対する理解を深めることが不可欠です。特に現場でフリーランスと直接やり取りする発注担当者やバックオフィス部門には、最新の法制度についての教育を行い、意識の共有を図りましょう。

社内研修やマニュアル整備、FAQの作成などを通じて、以下のような知識を浸透させることが重要です:

  • フリーランスと労働者の違い
  • フリーランス新法で禁止される行為
  • 契約や報酬支払い時の注意点
  • トラブル発生時の対応フロー

フリーランス新法は、事業者とフリーランスが対等に取引するためのルールを定めた法律です。単なる法令順守にとどまらず、企業の信頼性や持続可能なパートナーシップ構築のためにも、正しい理解と社内体制の整備が不可欠となります。

フリーランス側が準備しておくべきこと

2024年11月1日に施行されたフリーランス新法は、取引の適正化とフリーランス保護を目的に制定されました。しかし、法律で保護されるとはいえ、トラブルを未然に防ぎ、安定した活動を続けるためには、フリーランス自身の意識と準備も重要です。

本章では、フリーランスとして働く人がフリーランス新法に備えて行うべき準備を2つの視点から紹介します。

契約条件の確認・交渉力の強化

フリーランス新法では、発注者に対して契約内容の書面明示が義務付けられました。これにより、契約内容が曖昧なまま仕事を始めるといった事態は減少することが期待されます。しかし、実際の現場では、フリーランスが提示された条件を内容をよく確認せずに受け入れてしまうケースも少なくありません

そこでまず重要になるのが、契約条件の正しい理解と確認です。以下のようなポイントを、契約書や業務委託書を受け取った時点でしっかりチェックしましょう。

  • 業務内容・納品物の範囲が明確に記載されているか
  • 報酬額と支払い期限が適切か(60日以内など)
  • 修正対応やリテイクの回数・範囲に上限があるか
  • 中途解約時の対応が明記されているか
  • 成果物の権利の取り扱い(著作権の帰属)が明確か

もし不明点や納得できない条件がある場合は、そのまま契約せずに交渉する姿勢が必要です。フリーランス新法は、発注者と受託者が対等な立場で契約を結ぶことを前提としているため、条件面のすり合わせを遠慮する必要はありません。

また、交渉力を高めるには、契約や法律に関する最低限の知識も欠かせません。契約書の読み方、用語の意味、よくある落とし穴などについて学んでおくことで、不利な条件を避けやすくなります。オンライン講座や書籍、セミナーを活用し、「法務リテラシー」を高めることが、安定して仕事を続けるための第一歩です。

さらに、取引履歴や成果物、連絡内容などの記録を残しておくことも重要です。メールやチャットのやりとり、業務報告、見積書・請求書などを保管しておけば、トラブルが起きた際の証拠として役立ちます。

トラブル時の相談窓口の把握

フリーランスとして活動していると、どれだけ注意していてもトラブルに巻き込まれる可能性はゼロではありません。報酬の未払い、契約解除、成果物の無断使用、ハラスメントなど、実際の相談事例も多数報告されています。

こうした万が一の事態に備えて、相談できる窓口や支援制度を事前に把握しておくことが非常に重要です。以下は、フリーランス新法施行後に整備・拡充されている主な支援窓口です。

公正取引委員会「フリーランス・トラブル110番」

公正取引委員会では、フリーランスと発注事業者の間で発生したトラブルに関する相談を受け付ける「フリーランス・トラブル110番」を設置しています。電話やメールで相談でき、状況に応じて調査や指導が行われることもあります。

  • 受付内容:契約条件、報酬、取引上の不利益など
  • 対応:匿名相談も可能、必要に応じて行政指導の対象に

厚生労働省「フリーランス総合相談窓口」

働き方に関する悩みや困りごとは、厚生労働省が設置する相談窓口でも対応可能です。ハラスメントや育児との両立など、労働環境に関する支援制度も確認できます。

自治体・業界団体・弁護士会などの支援窓口

都道府県や市区町村でも、労働相談や無料法律相談を実施している場合があります。また、業界団体(例:クリエイター協会など)や日本弁護士連合会などが行う無料の法律相談・ADR(裁判外紛争解決手続)も活用できます。

こうした相談機関の存在を知っておくことで、「泣き寝入りせずに声を上げる」ことが可能になります。重要なのは、トラブルが発生した際に迅速に動けるよう、日ごろから連絡先や相談の流れを確認しておくことです。

フリーランス新法によって制度上の後押しがあるとはいえ、最終的にはフリーランス自身の準備と判断力がトラブル回避のカギとなります。契約の場面では冷静に内容を確認し、不明点は遠慮せず確認・交渉する。そして、トラブルが発生した場合はためらわずに適切な窓口に相談する。このような意識と行動が、フリーランスとして安心して働き続ける土台を築いてくれるでしょう。

参考:令和6年11月1月施行「フリーランス新法」 押さえたいポイント

よくある質問

よくある質問

副業フリーランスにも適用される?

はい、副業でフリーランスとして活動している会社員であっても、一定の条件を満たせばフリーランス新法の適用対象になります。重要なのは、「労働者」ではなく「業務委託契約に基づいて報酬を受け取っているかどうか」という点です。

たとえば、副業として個人でライティングやデザイン業務を受託している場合、契約の形態や実態によっては「特定受託事業者」と見なされる可能性があります。雇用契約に基づかない働き方であれば、会社員であっても法的保護の対象となるため、安心して業務を進めるうえでも契約内容や支払い条件の明示を依頼しましょう。

契約書がない場合はどうなる?

フリーランス新法では、発注者に対して契約条件を事前に書面または電子データで交付する義務があります。もし契約書が存在せず、口頭やメールだけで業務が進められている場合、それ自体が法律違反に該当する可能性があります。

報酬未払い、納品拒否、不当なやり直し依頼など、トラブルの原因の多くは契約条件の不明確さに起因しています。発注者が契約書を用意しない場合でも、フリーランスの側から「契約書の作成」や「メールでの条件確認」を依頼することが重要です。

また、契約条件の証拠として、やりとりの履歴(メール・チャット・見積書など)を保存しておくことも、トラブル時の有力な証拠になります。

既存の契約にも適用される?

フリーランス新法は2024年11月1日以降に新たに開始される業務委託契約を中心に適用されますが、継続中の契約にも一部適用される場合があります。たとえば、月額固定の業務委託契約や、長期にわたるプロジェクトの契約更新などが該当します。

具体的には、2024年11月1日をまたいで取引が継続される場合、その時点から新法に基づいた義務(契約条件の明示、報酬支払い、募集情報の正確な提示など)が適用される可能性があります。

発注者・受注者双方で契約内容の再確認を行い、必要に応じて書面の再作成や支払いルールの見直しを行うことが推奨されます

参考:フリーランス新法とは?対象や義務となる対応をわかりやすく解説!

まとめ:フリーランス新法は自由な働き方の土台に

まとめ:フリーランス新法は自由な働き方の土台に

フリーランス新法の施行により、フリーランスとして働く人々が安心して業務に取り組める環境が法的に整備されました。これまで契約書の不在や曖昧な条件によってトラブルに発展していた場面でも、明確なルールが設けられたことで、対等な立場での取引が可能になります。

一方で、発注者には契約条件の明示や報酬支払、ハラスメント防止といった新たな義務が課され、フリーランスとの関係構築が今まで以上に重要な経営課題となりました。

フリーランス自身も、自らの権利を理解し、契約内容を確認する姿勢が求められます。相談窓口や支援制度を把握しておくことも、リスク回避のためには欠かせません。

自由で柔軟な働き方を支えるこの法律をきっかけに、発注者・受注者双方が信頼を築ける取引文化の醸成が進むことが期待されています。フリーランス新法は、これからの時代にふさわしい働き方を支える基盤として、今後ますます重要性を増していくでしょう。