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フリーランスが経費にできる費用とできない費用とは?経費に関する注意点も解説

フリーランスとして確定申告を行う際に重要になるのが「経費の計上」です。正しく経費を申告すれば課税所得を減らせるため、節税につながります。しかし、「これは経費にできる?」「どこまで認められる?」と迷うケースも多く、誤った処理は税務調査の対象になることも。

本記事では、フリーランスが経費にできる費用・できない費用の具体例を挙げながら、経費計上に関する注意点をわかりやすく解説します。

フリーランスにとっての経費とは?まずは基本を理解しよう

フリーランスにとっての経費とは?まずは基本を理解しよう

フリーランスとして活動していると、「経費」という言葉を頻繁に耳にするようになります。確定申告の際にも「どこまで経費にできるのか?」「これは経費になるのか?」と悩む場面も多いでしょう。経費の正しい理解は、節税や収支管理のうえで非常に重要です。この章では、フリーランスにとっての経費の基本と、その目的やメリットについてわかりやすく解説します。

経費とは「事業に必要な支出」のこと

そもそも経費とは、「フリーランスが事業を行う上で必要と判断される支出」のことを指します。たとえば、Webデザイナーが仕事で使うために購入したパソコンやデザインソフト、ライターが取材で使う交通費、エンジニアが業務に必要な書籍を購入した場合など、事業との関係性が明確な出費は経費として認められる可能性が高いです。

国税庁の定義でも、「収入を得るために直接必要な費用」とされており、あくまで仕事のための支出であることが前提です。反対に、プライベートの支出や業務と無関係な費用は、たとえ仕事に関連しそうに見えても経費とは認められません。

フリーランスにとって、経費の判断基準は「その支出が業務に必要だったかどうか」に尽きます。明確な線引きが難しい支出については、領収書や説明文書などを残しておくことで、税務調査時にも安心です。

経費を計上する目的とメリット

経費を正しく計上することで、フリーランスにとって多くのメリットがあります。特に以下の2点は、すべてのフリーランスが意識しておきたいポイントです。

節税につながる

フリーランスの所得税や住民税は、年間の「所得」に対して課税されます。この所得とは、売上(収入)から経費を差し引いた金額のことです。つまり、経費として計上できる支出が多ければ多いほど、所得が少なくなり、結果として納める税金も少なくなります。

たとえば、年間の売上が500万円のフリーランスが、100万円分の経費を計上した場合、課税対象となる所得は400万円となります。これが経費をまったく計上しなければ、500万円に対して税金がかかることになり、納税額に大きな差が出るのです。

また、青色申告をしている場合は、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるため、節税効果がさらに高まります。適切に経費を計上することは、フリーランスにとって非常に効果的な節税手段のひとつです。

利益を正しく把握できる

もうひとつの大きなメリットが、「フリーランスとしての事業の実態を把握できること」です。日々の経費を記録し、帳簿にまとめておくことで、自分のビジネスにどのくらいの支出があるのか、月ごと・年ごとの利益はどれくらいなのかを明確に把握できます。

利益を可視化することで、将来の資金計画や投資判断、価格設定の見直しなどにも役立ちます。特にフリーランスは、収入が不安定になりがちな働き方だからこそ、日頃から経費を意識した管理が必要不可欠です。

また、経費の記録を習慣化しておくと、確定申告の際に慌てることもなくなります。帳簿が整っていれば、税理士に依頼する際の手間も削減でき、ミスや漏れの防止にもつながります。

参考:フリーランスにおける経費とは?経費にできる・できないの境目や注意点について解説

経費として認められる費用の具体例

経費として認められる費用の具体例

フリーランスにとって経費を適切に計上することは、節税や正確な利益把握において非常に重要です。では、どのような支出が「経費」として認められるのでしょうか。この章では、日常的に使われる代表的な経費と、特定の業種に特有の経費について、フリーランスの実務に即して解説していきます。

日常的に使う経費の代表例

まずは、多くのフリーランスが共通して使っている「代表的な経費項目」について見ていきましょう。これらは職種を問わず広く該当するため、経費に含め忘れないよう日々の記録を徹底することが大切です。

パソコンや周辺機器の購入費

フリーランスの多くが業務で使用するパソコンやその周辺機器(モニター、キーボード、プリンターなど)は、代表的な経費項目のひとつです。ただし、購入金額が10万円以上になる場合は「固定資産」として減価償却の対象になる点に注意が必要です。減価償却とは、複数年に分けて費用として計上する方法です。

なお、「少額減価償却資産の特例」を活用すれば、30万円未満の備品であれば一括で経費処理できる場合もあります。青色申告をしているフリーランスであれば、積極的にこの特例を活用することで、節税につながる可能性があります。

通信費(インターネット・スマホ)

自宅のインターネット回線やスマートフォンの通信料も、業務に使用していれば経費に含めることが可能です。ただし、プライベート利用との混在が避けられない場合は「家事按分」という形で、業務で使った割合を明確にして計上する必要があります。

たとえば、スマホの利用時間のうち半分が業務に関係していれば、月額料金の50%を通信費として計上する、といった方法が取られます。按分の根拠が説明できるよう、利用実態や内訳はメモに残しておくと安心です。

地代家賃・水道光熱費(家事按分)

自宅を事務所として使用しているフリーランスは、家賃や水道光熱費の一部を経費にすることが可能です。これも「家事按分」によって、業務で使用している割合を算出し、その分のみを経費計上します。

例えば、家の一室(10畳中2畳)を業務専用スペースとして使用している場合は、全体の20%にあたる家賃や光熱費を経費とするのが一般的です。面積だけでなく、使用時間も加味して按分率を決めることが望ましく、税務調査時に根拠が問われたときのためにも、図面や記録を残しておきましょう。

文房具などの消耗品費

文房具、印刷用紙、封筒、名刺などの消耗品費もフリーランスにとっては重要な経費です。金額が比較的少額で、使用期間が1年未満のものについては「消耗品費」として一括で処理できます。オンラインショップで購入した際の明細や納品書も、領収書と合わせて保管しておくと安心です。

交通費・出張費・セミナー参加費

取材や打ち合わせ、セミナー参加などで発生する交通費や出張費も経費になります。電車代・バス代・新幹線代・ガソリン代・宿泊費など、業務のために移動したことがわかる記録を残しておきましょう。

また、スキルアップや業務の質を高める目的で受講したセミナーや研修も「研修費」「雑費」などとして経費計上可能です。ただし、単なる趣味の講座や業務との関連が薄い内容の場合は経費として認められない場合もあるため注意が必要です。

特定業種ならではの経費

特定業種ならではの経費

次に、職種によって特有の経費が存在するケースを見ていきましょう。ここでは特に、クリエイター、エンジニア、ライター・編集者といった職種においてよく見られる経費を紹介します。

撮影機材(クリエイター)

YouTuber、カメラマン、動画編集者などのフリーランスは、撮影に使うカメラ機材や照明、マイク、三脚などの購入費が経費として認められます。また、編集用のソフトや音源の購入、動画素材の使用料なども業務に必要であれば経費に含められます。

ただし、高額なカメラなどは10万円を超えることが多いため、固定資産として減価償却するか、特例を使って一括計上するか判断が必要です。加えて、プライベートでも使用する場合は、使用目的に応じて家事按分を行う必要があります。

ソフトウェア使用料(エンジニア・デザイナー)

IT系のフリーランスが利用する、AdobeCreativeCloud、Figma、VisualStudio、サーバー代、クラウドストレージ(GoogleDrive、Dropboxなど)などのサービス利用料は、事業に関係していれば全額経費にできます。

月額契約や年額契約の請求書・領収書をしっかり保管し、どの業務に使用しているかの記録も簡単に残しておくと安心です。複数のサービスを契約している場合は、毎月の支出を整理して見直すことで、無駄なコストの削減にもつながります。

取材費・書籍代(ライター・編集者)

ライターや編集者が仕事のリサーチ目的で購入した書籍や資料代、取材にかかる交通費、インタビュー時のカフェ代なども経費になります。特に「取材のため」と明確に目的がある場合は、支出の理由をメモしておくと経費計上しやすくなります。

また、新聞や雑誌、ニュースサイトなどの有料会員費も、情報収集を業務に活かしているのであれば経費対象です。クライアントから依頼されたテーマに関連する場合は、業務との因果関係が証明しやすく、税務上も正当な経費と認められる可能性が高まります。

参考:個人事業主やフリーランスの経費とは?具体例や判断基準を解説

経費として認められない費用の例

経費として認められない費用の例

フリーランスとして節税を意識し、さまざまな支出を経費として計上したいと考えるのは自然なことです。しかし、すべての支出が経費として認められるわけではありません。経費にできない支出を誤って計上すると、税務調査で否認されたり、ペナルティが科されたりする可能性もあります。この章では、経費として認められない代表的な支出を整理し、注意すべきポイントを解説します。

プライベート性が高い支出はNG

フリーランスとしての支出であっても、事業との直接的な関係性がない、もしくは私的な目的が強い支出については、経費として認められません。特に以下のような費用は注意が必要です。

スーツや私用のカバン

仕事で着るからといって、スーツやバッグなどの被服費を経費にすることは、原則として認められていません。なぜなら、スーツは誰もが日常生活で着用する汎用性の高い衣服であり、「業務専用」とみなすことが困難だからです。

同様に、ビジネスバッグも通勤や私的な外出に利用される可能性が高く、業務専用であることを客観的に証明するのが難しいため、基本的には経費として扱えません。撮影衣装など、特殊な用途や職種に限って認められるケースはあるものの、通常のフリーランスでは控えるべきでしょう。

美容院・健康診断・旅行代

外見を整える目的で美容院に通ったり、健康管理のために人間ドックを受診したりすることも、個人の生活に関わる支出とされるため、経費計上はできません。また、仕事に関係があるように見えても、観光や娯楽が主目的となる旅行代も、業務との明確な関連性がなければ経費にはできません。

たとえば、「旅先でインスピレーションを得るための旅行」や「仕事道具を持って行ったから業務」といった主観的な理由では、税務署に経費性を認めてもらうのは困難です。あくまで業務上の目的が明確であり、証拠がそろっている場合のみ、出張費として認められる可能性があります。

生活費・家族への給与

食費・住宅費・水道光熱費・通信費など、日常生活に必要な支出は、たとえ仕事中に使っていたとしても、その全額を経費にすることはできません。これらの費用は「家事関連費」として扱われ、事業との関係性が明確であっても、家事按分によって一部のみが経費として認められます。

また、生計を同じくする家族や配偶者に支払った給与も、無条件に経費として計上できるわけではありません。経費にするためには「青色事業専従者給与」として事前に届け出が必要であり、業務内容や勤務時間、給与水準が妥当であることも条件となります。これらを満たさない場合、支払った給与は経費として認められません。

税法上認められない項目

フリーランスの事業に直接関係しているように見えても、法律上「経費」として処理できない支出があります。税務処理のルールに照らして、以下のような支出は経費として否認されるので注意が必要です。

所得税・住民税

所得税や住民税といった個人の納税義務に関する支払いは、事業に関係する支出ではないため、経費として処理することはできません。これらは所得に応じて課される個人的な税金であり、事業の原価や費用とはみなされないのです。

同様に、予定納税や延滞税などの税金も経費にはなりません。税金の支払いを経費にできない点は、多くのフリーランスが誤解しやすいポイントなので、しっかり押さえておきましょう。

罰金・違反金

交通違反の罰金や延滞金、違反行為に対する過料なども、経費にはなりません。たとえば、業務中にうっかり駐車違反をして罰金を支払った場合でも、その費用は自己責任とされ、経費には計上できません。

違反行為に起因する支出は、法律上「社会通念上、経費と認めることができない」とされており、事業に関連していたとしても不可とされています。経費にできないどころか、正当な事業費に混ぜて申告すると脱税とみなされる可能性もあるため、くれぐれも注意しましょう。

借入金の返済・敷金・保証金

事業のために金融機関から借入を行った場合、その「元本返済分」は経費にはできません。借入に伴う利息や手数料などは「支払利息」として経費計上できますが、元本そのものは負債の返済にあたるため、費用ではないとされます。

また、事務所の賃貸契約などで支払う敷金や保証金も経費とはなりません。これらは将来的に返還されることが前提の「資産」とみなされるため、支払時点での経費計上は認められていません。支出の性質を理解し、帳簿上でも「資産」として正確に管理する必要があります。

参考:フリーランスが経費にできる費用とできない費用は?経費に使われる勘定科目や経費割合の上限も解説

グレーゾーンになりやすい経費と判断基準

グレーゾーンになりやすい経費と判断基準

フリーランスとして経費を計上する際、判断に迷う「グレーゾーン」の支出は少なくありません。業務に関係しているようで、プライベートとの境界があいまいな場合、税務署によっては経費として認められない可能性もあります。特に、食費や交際費の取り扱いは注意が必要です。この章では、フリーランスが経費にできるかどうかの判断が難しいケースと、その判断基準について解説します。

食費・交際費の扱いには注意

食費や飲食代は、事業に関連していれば経費として認められることもありますが、プライベートと密接に結びついている支出のため、特に厳しい目で見られる経費項目です。どのようなケースで経費にできるか、また注意すべきポイントを整理しておきましょう。

一人のカフェ利用は経費になる?

フリーランスの中には、作業場所としてカフェを利用する人も多いでしょう。ノートパソコンを持ち込んで仕事をするスタイルは一般的になっていますが、「一人でカフェを利用した際の飲食代」が経費として認められるかはケースバイケースです。

税務署の見解としては、飲食代が「単なる私的な食事」と判断されれば経費にはなりません。たとえ仕事中であっても、昼食や休憩のためのコーヒー代などは生活費の一部と見なされる可能性が高いためです。

ただし、以下のような条件を満たしていれば、経費として認められる可能性があります。

  • 明確に「業務上の目的がある」こと(例:作業スペースの確保、打ち合わせ準備)
  • 作業内容が具体的に記録されていること(例:クライアントの資料作成)
  • 利用時間や利用頻度が過度でないこと(例:毎日のように高額なカフェ代を経費にしていると否認されやすい)

また、会計処理の際は「会議費」「雑費」など適切な勘定科目を選び、レシートには日付や用途をメモしておくと、税務調査時に説得力が増します。

取引先との飲食はどう扱う?

取引先やクライアントとの打ち合わせ、接待などで発生した飲食代については、「接待交際費」として経費に計上することができます。ただし、この場合も一定のルールと注意点があります。

【経費にするための要件】

  • 飲食が「業務に関連する内容」であること(例:商談、打ち合わせ、営業活動など)
  • 支出が常識の範囲内であること(例:高級すぎるレストランでの接待は疑義が生じやすい)
  • 支払先や同席者、目的などを明記して記録すること(例:レシートに「◯◯社との打ち合わせ」と記載)

飲食代が経費として認められるかどうかは、「業務との関連性」と「記録の明確さ」がカギです。税務署から指摘を受けないよう、誰と、いつ、どのような目的で食事をしたのかを領収書に添える形で残しておきましょう。

また、取引先との飲食であっても、配偶者や友人が同席していると「私的な飲食」と見なされる可能性があります。プライベートな要素が少しでも混ざると、全額否認されるおそれもあるため、私的支出と業務支出は明確に分けることが重要です。

【補足】家族や知人との飲食は?

たとえば「仕事の相談を家族や友人にしたから」として、その飲食代を経費にするのはリスクが高いです。実際の業務委託や契約関係がなければ、事業との関連性が認められにくく、経費にはなりません。どうしても計上したい場合は、業務内容や役割、打ち合わせの記録など、客観的な証拠をそろえる必要があります。

フリーランスにとって、経費のグレーゾーンをどう判断し、どう記録しておくかは非常に重要です。少額の支出であっても、積み重なれば大きな節税効果につながる反面、誤った計上は脱税とみなされるリスクもあります。判断に迷ったら、税理士への相談や、業務内容と支出の関係性を「記録に残す」習慣をつけることが安心への第一歩です。

領収書がない支出の処理方法

フリーランスとして活動していると、どうしても領収書がもらえない支出が発生することがあります。たとえば、個人商店での現金支払いや、割り勘時に立替えた分、タクシーで領収書をもらい忘れたケースなどが該当します。こうした場合も、業務に必要な支出であれば経費として認められる余地はありますが、証拠の不備によって否認されるリスクも高まります。

そこで役立つのが「出金伝票」や「メモ書き」などによる代替記録です。以下に、領収書がないときの対応方法を紹介します。

出金伝票の活用

領収書の代替として最も基本的な方法が「出金伝票」です。出金伝票とは、現金を支払った事実を自分で記録するための帳票で、以下のような情報を記入することで支出の証明として使えます。

  • 支払日
  • 金額
  • 支払先
  • 支払内容(目的)
  • 支払方法(現金、立替など)
  • 備考欄(理由や業務との関連性)

たとえば、取材時に立ち寄ったカフェでレシートをもらい忘れた場合でも、「◯月◯日、カフェ代として700円支出。記事執筆の取材のため」と出金伝票に記載しておけば、経費としての信頼性が高まります。

伝票は市販の専用用紙を使っても、Excelや会計ソフトのフォーマットを使っても問題ありません。確定申告時や税務調査時に備えて、他の書類とともに整理・保管しておきましょう。

メモ書きやレシートで代用できる場合も

領収書がない場合でも、代わりにレシートがあればそれを証憑書類として利用できます。レシートには店舗名、金額、日付、購入内容が記載されており、業務との関連性を補足する情報として十分に活用可能です。

また、出金伝票までは用意できない場合でも、ノートや帳簿に「日時・金額・目的」を手書きで記録しておくことで、最低限の証明となります。たとえば「2025年3月12日/500円/撮影ロケハン時の軽食代」などと記録しておくと、記憶の補助にもなります。

ただし、これらの「自己申告的な記録」はあくまで補完的なものであり、多用すると税務調査で否認されるリスクも高まります。可能な限り領収書を受け取る習慣をつけ、やむを得ない場合にだけこうした代替手段を用いるようにしましょう。

参考:フリーランスの経費ガイド|計上できるもの一覧やぶっちゃけいくらまでか

家事按分のルールと計算方法

家事按分のルールと計算方法

フリーランスとして自宅を事務所代わりに使っている場合、家賃や光熱費、通信費などの一部を「経費」として計上することができます。ただし、これらはすべての金額をそのまま経費にできるわけではなく、「家事按分(かじあんぶん)」という方法を用いて、事業に使った分だけを按分して経費とします。この章では、家事按分の対象になる費用や、按分率の決め方、注意点について解説します。

家事按分できる主な費用

家事按分の対象となるのは、事業と私生活の両方で使用される費用です。以下のような支出は、業務に使っている割合に応じて経費として計上できます。

家賃

自宅の一部を仕事用のスペースとして使用している場合、その部分に相当する家賃を経費とすることが可能です。たとえば、自宅全体が60㎡で、そのうち10㎡を仕事に使用していれば、家賃の約16.6%を按分して経費にできます。

光熱費(水道・電気・ガス)

業務時間中に使用した電気代やガス代も按分対象です。たとえば、パソコンや照明、空調を使う頻度などを考慮して、業務時間中に消費した分を割合で算出します。

通信費

インターネット回線やスマートフォンの料金も、業務に使用していれば一部経費にできます。私用と業務の使用時間や用途の割合に応じて、按分率を決めましょう。

車の維持費

フリーランスで車を使う人は、ガソリン代、保険料、車検代なども家事按分が可能です。ただし、通勤・私用がメインで業務利用が限定的な場合、全体の中での業務使用割合を具体的に示す必要があります。

按分率の決め方と注意点

家事按分では、どのくらいの割合を経費として計上するか(=按分率)を合理的に設定しなければなりません。税務署に否認されないよう、客観的な基準に基づいて按分率を決定し、根拠を記録しておくことが重要です。

面積・使用時間などを基に算出

按分率の決め方としては、主に以下の2つの方法が一般的です。

1.面積按分
事業に使っているスペース(作業部屋など)の面積を自宅全体の面積で割ることで算出します。たとえば、事業専用の部屋が10㎡、自宅全体が50㎡であれば、按分率は20%になります。

2.使用時間按分
1日のうち、何時間その支出を業務に使用しているかで算出する方法です。通信費や電気代など、時間の影響が大きい支出にはこの方法が向いています。

上記2つを掛け合わせる「複合按分(面積×時間)」を採用することで、より正確な按分が可能になります。

税務署に説明できる根拠を残す

按分率は自己申告で設定できますが、税務調査時に根拠の提示を求められることがあります。以下のような記録を残しておくと、説得力が高まります。

  • 自宅の間取り図(事業用スペースの明示)
  • 使用時間のメモやスケジュール帳
  • 電気代や通信費の明細書
  • 家族との共有状況の説明

過大に按分してしまうと、不適切な経費計上として指摘される可能性があります。正確な按分率を設定し、合理的な理由と証拠を整えておくことが、安心して経費処理を行うためのポイントです。

参考:【税理士監修】フリーランスが経費で認められる支出は?確定申告のポイントも解説

経費計上で失敗しないための注意点

経費計上で失敗しないための注意点

フリーランスとして経費を正しく計上することは、節税や資金管理の基本です。一方で、記録の不備や処理ミスによって「経費として認められない」リスクも存在します。ここでは、経費計上において特に注意すべきポイントを2つに絞って解説します。

領収書・レシートの保存は必須

経費として支出を証明するためには、領収書やレシートの保存が必要です。仮に正当な経費であっても、証憑がなければ税務署は認めてくれません。

保存期間は7年間

フリーランスが青色申告をしている場合、帳簿や領収書などの証拠書類は7年間の保存が義務付けられています(白色申告の場合は5年間)。保管が義務づけられる書類には以下のようなものがあります。

  • 領収書・レシート
  • 請求書・納品書・契約書
  • 出金伝票・メモ書き(領収書がない場合)

これらを年度ごとに封筒やファイルに分けて整理しておくことで、後から見返しやすくなり、税務調査時にも対応しやすくなります。

電子保存の要件にも対応しておく

現在では、紙の書類だけでなく電子データでの保存も認められています。ただし、電子保存には「電子帳簿保存法」の要件に準拠する必要があります。たとえば、保存した日時の記録や、改ざん防止措置(タイムスタンプなど)が必要です。

freee、マネーフォワードなどのクラウド会計ソフトでは、こうした要件に対応した電子保存が可能です。スマホでレシートを撮影し、そのまま経費登録と保管ができるため、書類の紛失リスクも減らせます。

紙とデジタル、どちらを選ぶにせよ、保存の義務と実務上のメリットを意識して、日々の経費管理を行いましょう。

税務調査で確認されるポイント

フリーランスである以上、税務調査が入るリスクは常に存在します。特に経費計上が多い場合や、収支バランスに違和感がある場合は、調査対象になりやすい傾向にあります。

事業との関連性の説明

経費として認められるかどうかの判断基準は、「その支出が事業の遂行上必要であったかどうか」です。たとえば、カフェ代や書籍代などは、業務との関係性が曖昧だと否認される可能性があります。

そのため、領収書やレシートには「何のための支出か」をメモしておくことが重要です(例:「取引先Aとの打ち合わせ」「記事執筆のための参考書籍」など)。こうした補足情報があるかないかで、税務署の判断が大きく変わることもあります。

計上ミスや不正は脱税と見なされることも

計上ミスや知識不足による誤りであっても、結果的に税額を少なくしていれば、ペナルティの対象になる場合があります。過失による修正申告で済むこともありますが、悪質なケースでは「重加算税」や「延滞税」が課されることも。

さらに、架空の領収書を作成したり、事業と無関係な私的支出を意図的に混ぜたりすると、脱税行為とみなされ、刑事罰の対象になる可能性もあります。

節税と脱税の線引きは、「適法であるかどうか」と「証拠が整っているかどうか」によって明確に分かれます。税務リスクを回避するためにも、経費の内容と根拠を正しく整備しておくことが何より大切です。

参考:個人事業主・フリーランスが経費にできるものとは?具体例や見極めのポイントを紹介

経費管理を効率化する方法

経費管理を効率化する方法

フリーランスとしての経費管理は、節税や資金管理の基礎であると同時に、確定申告に欠かせない重要な作業です。しかし、日々の領収書の整理や帳簿の記帳作業は、想像以上に時間と労力を要するものです。特に会計の知識が少ないフリーランスにとっては、大きな負担となりかねません。

そんな悩みを解決する手段として、多くのフリーランスが活用しているのがクラウド型の会計ソフトです。経費の記録から仕訳、帳簿作成、さらには確定申告書類の作成までを自動で行えるため、業務の効率化に直結します。この章では、会計ソフトを活用した経費管理のメリットについて具体的に解説します。

会計ソフトを使えばミスや手間が減らせる

クラウド会計ソフトの最大の魅力は、「自動化」によって経費管理の負担を大幅に軽減できる点です。以下では、代表的な機能とその利便性を紹介します。

仕訳や帳簿作成が自動化できる

会計ソフトには、銀行口座やクレジットカードと連携して取引データを自動取得する機能が搭載されています。たとえば、クレジットカードでソフトウェアの月額利用料を支払えば、支出情報が自動で読み込まれ、「通信費」や「外注費」などの適切な勘定科目に自動で仕訳されるのです。

これにより、手作業で一件ずつ入力していた時と比べて、ミスが減るだけでなく、記帳作業にかかる時間も大幅に短縮されます。また、繰り返し発生する取引(定額のサブスク費用など)は、ルールを設定することで自動処理されるため、日々の管理が格段に楽になります。

さらに、会計ソフトには日々の支出を分類・集計してくれる機能もあり、「何にどれくらい経費を使っているか」がグラフやレポートで一目瞭然になります。これにより、ムダな支出に気づきやすくなり、経費の見直しや予算の最適化にもつながります。

確定申告もスムーズに対応可能

クラウド会計ソフトの大きなメリットは、確定申告に必要な書類を自動で作成できる点です。日々の取引を正しく入力・連携していれば、年末になって慌てて帳簿をまとめる必要はありません。

多くの会計ソフトでは、青色申告決算書や確定申告書Bの作成をサポートしており、質問形式に答えるだけで控除の適用や必要書類の入力が完了します。さらに、e-Taxへのオンライン提出にも対応しているため、税務署に出向くことなく申告作業を完了させることができます。

特に、青色申告特別控除の65万円を受けるためには、複式簿記による帳簿作成と電子申告が条件ですが、これらも会計ソフトを使えば簡単にクリアできます。税務処理の知識がないフリーランスでも、ソフトの指示に従うだけで制度のメリットを最大限に活かせるのは非常に大きな利点です。

また、帳簿や領収書の電子保存にも対応しているため、ペーパーレス化を進めたい人にとっても便利です。スマートフォンのカメラでレシートを撮影するだけでクラウドに保存でき、領収書の整理や紛失リスクを大きく減らすことができます。

【主なクラウド会計ソフトの例】

  • freee会計:初心者でも直感的に使えるUIが魅力。スマホ対応も充実。
  • マネーフォワードクラウド確定申告:自動連携が強力。多機能ながら高い操作性を実現。
  • 弥生会計オンライン:税理士との連携機能があり、書類出力や帳簿管理がしやすい。

いずれもフリーランスに特化したプランが用意されており、試用期間もあるため、まずは実際に触ってみて、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。

参考:個人事業主・フリーランスが知るべき"経費"一覧【税理士監修】。経費にできる、できないの基準も解説

よくある質問

よくある質問

フリーランスとして経費を計上する際には、税務や会計に関する疑問がつきものです。ここでは、経費に関して特に多く寄せられる質問と、その回答をわかりやすくまとめました。

Q.経費の上限はある?

基本的に、経費には「金額の上限」は設けられていません。ただし、経費の内容や金額が売上に対して不自然に多い場合、税務署から調査対象とされる可能性があります。たとえば、売上が年間100万円しかないのに、経費が300万円あるといったケースでは、事業実態そのものが問われることになります。

また、接待交際費や交際費など、一部の勘定科目には業種や所得区分によって制限が設けられている場合もあります。いくらまでが妥当なのか不安な場合は、過去の実績や同業他者の平均値などを参考にするのが安心です。

Q.売上がないときも経費計上できる?

はい、可能です。フリーランスの経費は「収入を得るために要した支出」が原則ですので、売上が発生していない月や赤字の年度でも、実際に業務に使った支出であれば経費に計上できます。

たとえば、仕事の準備段階で購入した備品や、案件獲得のための交通費・広告費なども対象となります。開業初年度や閑散期は売上が少なくなることもありますが、それを理由に経費を除外する必要はありません。

ただし、長期的に売上ゼロが続く場合、事業性を問われる可能性があるため、きちんとした収支計画と記録が重要です。

Q.クレジットカード払いでも経費にできる?

もちろん可能です。クレジットカードで支払った業務関連の費用も、支出の内容が明確であれば経費に計上できます。むしろ、カードの利用明細が証拠書類として使えるため、現金よりも管理がしやすい側面もあります。

注意点として、プライベート用のカードと業務用の支出を混在させないことが重要です。可能であれば、業務専用のクレジットカードを1枚用意し、業務支出だけをまとめるようにすると記帳作業がスムーズになります。

Q.経費計上が税務調査の対象になることはある?

あります。特に、経費の金額が売上に対して大きすぎる場合や、業務との関連性が不明な支出が多い場合は、税務署から調査を受けるリスクが高まります。

また、経費の内容が曖昧で、領収書や証拠書類が不十分なケース、個人の生活費と混在している場合なども注意が必要です。経費が適正かどうかは、帳簿の記載や証拠書類の保管状況から判断されるため、日頃から丁寧な記録を心がけましょう。

参考:個人事業主・フリーランスの家賃は確定申告で経費にできる?按分計算の方法も解説!

経費を正しく理解し、フリーランスの収支を最適化しよう

経費を正しく理解し、フリーランスの収支を最適化しよう

フリーランスにとって経費の適正な管理は、節税や資金繰りの効率化に直結する重要な業務です。事業に必要な支出を正しく経費として計上することで、納税額を抑えるだけでなく、利益や経営状況を把握することも可能になります。

一方で、プライベートな支出や不明確な支出を誤って経費に含めてしまうと、税務調査で否認されるリスクもあるため、注意が必要です。領収書の保存や帳簿の記録を徹底し、必要に応じて家事按分や会計ソフトも活用しながら、効率的かつ適正な経費管理を心がけましょう。

正しく経費を理解し、活用できれば、フリーランスとしての事業運営はより安定し、将来に向けた資金計画や投資判断にも役立ちます。収支の最適化を目指し、今からできる経費管理を始めましょう。

経費の管理は、単に「領収書を集めて帳簿にまとめる」作業ではなく、フリーランスとしての収支を見える化し、事業の健全性を保つための重要な工程です。会計ソフトを導入することで、経費の記録から申告までを一元化でき、作業時間の短縮やミスの防止、そして安心感という大きなメリットが得られます。