フリーランスの年収はどのくらい?職種別の年収の相場や年収の上げ方も解説

フリーランスとして働くことに興味があっても、「実際にどれくらい稼げるの?」と年収が気になる方は多いはず。収入は職種やスキル、働き方によって大きく異なり、同じ働き方でも年収に差が出るのがフリーランスの特徴です。成功すれば高収入も可能ですが、安定的に稼ぐには工夫や戦略も必要です。
本記事では、フリーランスの職種別年収の相場と、収入を上げるための具体的な方法についてわかりやすく解説します。
フリーランスの年収はどのくらい?平均・中央値・手取りをチェック

フリーランスとして働くことを考えたとき、多くの人が気になるのが「実際にどれくらい稼げるのか?」という点でしょう。特にフリーランスは会社員のように固定給がないため、年収は人によって大きく異なります。本記事では、フリーランスの平均年収や中央値、さらには年収から実際に手元に残る「手取り」の金額まで、データをもとに詳しく解説します。
フリーランス全体の平均年収と中央値
さまざまな調査結果によると、フリーランス全体の平均年収はおよそ300〜600万円程度に収まるケースが多いです。例えば「PE-BANK」や「フリーランス協会」の調査では、600万円未満がボリュームゾーンとなっており、中でも300〜500万円の年収層が最も多いという結果が出ています。
一方で、年収の「中央値」は約250〜350万円程度とも言われており、平均と比較してやや低めです。これは一部の高年収フリーランスが全体の平均を押し上げているためであり、フリーランスの年収は「格差が大きい」ことを示しています。
実際に年収1000万円を超えるフリーランスも存在しますが、その割合は決して高くなく、5〜10%程度にとどまると言われています。逆に、年収200万円未満で活動しているフリーランスも一定数おり、「どの職種・働き方を選ぶか」が年収に直結する現実が見えてきます。
手取り年収の計算方法とシミュレーション
フリーランスの年収を見る際には、「手取り額」にも注目が必要です。というのも、フリーランスは税金や社会保険料を自ら支払う必要があるため、額面通りの年収がそのまま使えるお金になるわけではありません。
手取り年収を計算するには、以下のようなステップが必要です。
- 年収(売上)から必要経費を差し引く
- 所得控除(基礎控除・青色申告特別控除・社会保険料控除など)を適用
- 課税所得に応じた所得税・住民税を計算
- 国民健康保険料・国民年金などの保険料を加味
- 上記を差し引いた額が「手取り」となる
また、消費税の納税義務がある場合(前々年の課税売上が1,000万円超など)は、さらに納税額を考慮する必要があります。
たとえば、年収600万円のフリーランスが200万円の経費を使った場合、所得は400万円。ここから控除や税金、保険料を差し引くと、手取りはおおよそ300万円前後になります。詳しくは次項でシミュレーションしてみましょう。
年収600万・1000万の手取りはいくらになる?
ここでは、フリーランスの代表的な年収帯である600万円と1000万円について、実際にどれくらいの手取りになるかを見てみましょう。
年収600万円の場合
年収1000万円の場合
これらのシミュレーションからもわかるように、フリーランスの年収からは多くの支出が差し引かれ、実際に使える金額は想像より少ないことがあります。特に社会保険や消費税の扱いによって手取りが大きく変わるため、しっかりと試算しながら働き方や年収目標を設定することが重要です。
参考:フリーランスの年収は?職種別の平均手取り相場や収入アップの方法を紹介
フリーランスの職種別年収相場

フリーランスの年収は、職種によって大きく異なります。スキルや実務経験、需要の高さ、報酬単価などが収入に直結するためです。ここでは、代表的な5つの分野に分けて、各職種における年収の目安や特徴を解説します。
エンジニア系:プログラマー・インフラ・クラウド
ITエンジニアは、フリーランスの中でも高収入を狙いやすい代表的な職種です。特にプログラマーやシステムエンジニア、クラウドエンジニアは専門性が高く、年収も比較的高水準にあります。
- プログラマー・システムエンジニア:500万〜800万円
- フロントエンド/バックエンドエンジニア:600万〜900万円
- インフラ・ネットワークエンジニア:500万〜850万円
- クラウドエンジニア(AWS等):700万〜1000万円超
実際に、フリーランスエンジニアの中には年収1000万円を超える人も珍しくありません。報酬単価が高く、稼働率が安定すればそれだけ収入も上がります。また、エージェントを経由することで、高単価案件に継続的に参画することも可能です。
参考:フリーランスエンジニアの平均年収はどのくらい?必要なスキルも紹介
クリエイティブ系:Webデザイナー・動画編集など
クリエイティブ系の職種は、個人のセンスや実績によって収入差が出やすい分野です。需要が高い一方で、競争も激しく、単価が比較的抑えられる傾向にあります。
- Webデザイナー:300万〜600万円
- グラフィックデザイナー:250万〜500万円
- 動画編集者・映像クリエイター:200万〜500万円
- UI/UXデザイナー:400万〜700万円
副業からのスタートもしやすく、実績があれば独立後に案件を得るのも難しくありません。特にWebデザインや動画制作は、企業のSNS・マーケティング支援の需要とともに案件数が増加しています。
ライター・編集者・マーケター系
文章力やマーケティングスキルを活かせる職種では、実績と専門性が報酬に直結します。特にSEOやWeb広告、SNSマーケティングに強い人材は、高単価案件を獲得しやすくなります。
- Webライター:200万〜400万円
- 編集者:250万〜500万円
- コンテンツディレクター:400万〜600万円
- Webマーケター:400万〜800万円
ライターの場合、単価は文字単価で計算されることが多く、専門性(医療・金融・ITなど)があると高単価を狙えます。マーケターや編集職は、戦略設計や改善提案ができるスキルが求められ、その分収入水準も高めになります。
コンサル・士業・専門職系
フリーランスの中でも、特に高収入が期待できるのがコンサルティングや士業系の職種です。これらの職種は専門知識や国家資格が必要であることが多く、報酬単価が非常に高いのが特徴です。
- ITコンサルタント/PMO:700万〜1200万円
- 中小企業診断士/経営コンサル:600万〜1000万円
- 税理士・会計士・社労士など士業:500万〜1500万円
戦略支援やプロジェクトマネジメント業務では、月額単価100万円を超える案件もあり、法人向け業務の経験があると重宝されます。また、複数クライアントと契約することで安定収入を得ている事例も多く見られます。
サービス業・インフルエンサー系
対人スキルや企画力を活かしたサービス業や、個人の影響力を活かすインフルエンサーは、収入に幅がある職種です。実績・人脈・発信力が直接年収に影響するため、ブランディングが重要になります。
- カウンセラー・コーチ・講師系:200万〜600万円
- フリーランス講演家/研修講師:300万〜700万円
- インフルエンサー/YouTuber:0〜1000万円以上
これらの職種は、「稼げる人」と「稼げない人」の格差が非常に大きいのが特徴です。SNSやブログでの継続的な発信によりフォロワーを増やし、広告収益や案件獲得につなげる工夫が収入アップには不可欠です。
各職種の年収相場はあくまで目安であり、経験年数・スキルレベル・営業力によって大きく上下します。フリーランスとして安定した収入を得るには、単価だけでなく「稼働時間」「案件の継続性」「経費管理」といった複数の視点から年収全体を設計することが求められます。
参考:【完全版】フリーランスの年収・給料は?|年収アップの方法や職種別にみた相場なども解説
フリーランスの働き方別年収の違い

フリーランスと一口に言っても、その働き方はさまざまです。会社員のかたわらで副業として取り組む人もいれば、本業として独立し、自営業として活動する人もいます。さらに、高度な専門性を武器に大手企業と契約し、高単価案件を手がけるプロフェッショナル型のフリーランスも存在します。この章では、それぞれの働き方の特徴と、年収の目安を比較しながら解説します。
副業・複業としてのフリーランス
副業型のフリーランスは、会社員としての本業を持ちながら、週末や空き時間に個人で収入を得るスタイルです。最近では働き方改革や副業解禁の流れにより、多くの人が副業フリーランスとしての一歩を踏み出しています。
このタイプの特徴は、本業の収入があるため収入のリスクが低いことです。反面、時間的制約が大きいため、請け負える案件数や稼働時間は限られ、年収も比較的低めに留まる傾向があります。
- 副業フリーランスの年収目安:50万円〜200万円程度
- 収入源の例:Webライティング、動画編集、SNS運用、イラスト制作、クラウドソーシング案件
複業型の場合は、2〜3つのスキルや職種を並行して活動するケースもあります。たとえば、平日は会社員、週末は講師やマーケターとして活動するなど、多様な働き方が可能です。
年収自体は控えめですが、「副収入の確保」や「スキルの実践活用」「将来の独立準備」といった目的に適した働き方です。
本業としての自営業・自由業型フリーランス
自営業型のフリーランスは、本業として独立し、自分のスキルやサービスで生計を立てるスタイルです。開業届を提出し、個人事業主として活動する人も多く、確定申告や税務管理をすべて自身で行います。
このタイプは、案件の選定や稼働時間を自由に決められるメリットがある一方で、収入の安定性に課題があるのも事実です。案件が安定すれば年収は上がりますが、仕事が途切れればその分収入も落ちます。
- 自営業型フリーランスの年収目安:300万〜600万円程度
- 職種例:Webデザイナー、ライター、カメラマン、整体師、カウンセラー、講師など
年収500万円以上を目指すには、単価アップ・リピート案件・営業力の強化などが欠かせません。また、節税対策や経費管理をしっかり行えば、同じ年収でも手取りを増やすことができます。
「収入の自由度」と「自分の責任で稼ぐ力」をバランスよく求められる働き方であり、継続的なスキル向上とマーケティング力が成功の鍵を握ります。
プロフェッショナル型フリーランス
プロフェッショナル型フリーランスとは、高度な専門知識や実績を活かし、企業から高単価で直接依頼を受けるタイプのフリーランスです。多くはフリーランスエージェントを通じて大手企業と契約し、プロジェクトベースで働いています。
この働き方では、週3〜5日の常駐またはリモート勤務で月単価60〜100万円以上の案件に参画するケースも多く、年収1000万円超えも十分に現実的です。
- プロフェッショナル型フリーランスの年収目安:700万〜1500万円
- 職種例:エンジニア、PM/PMO、ITコンサルタント、UI/UXデザイナー、データアナリストなど
高単価案件に加え、複数企業と業務委託契約を同時進行で行う人もおり、売上規模が法人並みになるケースもあります。一方で、クライアントとの信頼関係の構築、成果責任、継続的なスキルアップなど、自己管理能力とビジネス感覚が強く求められます。
また、法人化(マイクロ法人)することで節税しながら収入を安定させる人も多く、「フリーランス=一人社長」として働く選択肢もあります。
このように、フリーランスの年収は「何をするか」だけでなく、「どう働くか」によっても大きく変わってきます。副業フリーランスで少しずつ経験を積みながら、本業フリーランス、さらにはプロフェッショナル型へとキャリアを伸ばす人も多くいます。
参考:フリーランスの平均年収と手取りはいくら?中央値や職種別年収の目安と1,000万円を目指すポイント
フリーランスと会社員の年収・手取り比較

フリーランスと会社員では、同じ年収であっても最終的な手取り額が大きく異なることがあります。年収に対する税金や保険料の負担、福利厚生の有無などが異なるためです。この章では、税・保険制度の違いや福利厚生の観点から両者を比較し、実際に年収600万円・1000万円のケースでどれほど手取り差が出るのかを見ていきましょう。
税金や保険料の違い
フリーランスは、所得税・住民税・国民健康保険・国民年金など、あらゆる税金や保険料を自己負担で支払う必要があります。一方で会社員は、所得税や住民税が給与から天引きされるうえ、健康保険や厚生年金の一部を会社が負担してくれます。
たとえば、健康保険料や年金保険料は、会社員が加入する社会保険制度では会社と従業員で折半(約半分ずつ負担)される仕組みですが、フリーランスは全額自己負担です。
また、会社員は年末調整があるため確定申告が不要なことも多いですが、フリーランスは原則として毎年確定申告が必須です。税額の調整や経費計上の手間も含め、フリーランスは収支管理のスキルが必要とされます。
社会保険・福利厚生の差
フリーランスと会社員の大きな違いとして挙げられるのが、社会保険制度と福利厚生です。
会社員は、以下のような公的保障が受けられます。
- 健康保険(傷病手当金、出産手当金など含む)
- 厚生年金(将来的な年金受給額が国民年金より多い)
- 雇用保険(失業手当が受けられる)
- 労災保険(業務中のケガに保障が出る)
- 企業による福利厚生(住宅手当、交通費、退職金制度など)
一方でフリーランスは、基本的に国民健康保険・国民年金のみに加入し、自身で任意の保険や共済制度を選んで補完する必要があります。失業保険や出産手当金などは対象外となり、収入が途絶えた際のセーフティネットが弱いのが実情です。
年収600万円・1000万円で比べる手取りの違い
ここでは、実際に年収600万円および1000万円のケースで、フリーランスと会社員の手取り額の違いをシミュレーションしてみましょう。
年収600万円の場合
【会社員】
- 社会保険料:約90万円(労使折半)
- 所得税・住民税:約60万円
- 手取り:約450万円
【フリーランス】
- 経費:150万円(仮定)
- 所得控除後の課税所得:約350万円
- 所得税・住民税:約50万円
- 国民年金・国民健康保険:約70万円
- 手取り:約330万円
→差額:約120万円
年収1000万円の場合
【会社員】
- 社会保険料:約150万円(労使折半)
- 所得税・住民税:約160万円
- 手取り:約690万円
【フリーランス】
- 経費:300万円(仮定)
- 所得控除後の課税所得:約550万円
- 所得税・住民税:約100万円
- 国民年金・国民健康保険:約100万円
- 消費税:約40万円(インボイス登録あり)
- 手取り:約460万円
→差額:約230万円
このように、同じ年収でも手取り額には100万円以上の差が生じることがあるのが実態です。ただし、フリーランスは経費を柔軟に使える、節税対策がしやすいといった利点もあるため、必ずしも不利というわけではありません。
参考:フリーランスの年収目安はいくら?手取りの平均や職種別収入の相場
フリーランスで年収を上げる方法とは?

フリーランスとして活動する以上、より高い年収を目指したいと考えるのは自然なことです。しかし、年収アップのためにはただがむしゃらに働くのではなく、戦略的に「単価を上げる」「収入源を増やす」「手元に残る金額を最大化する」ことが重要です。この章では、フリーランスが年収を上げるために実践すべき具体的な方法を5つ紹介します。
単価の高い職種・分野を選ぶ
年収を左右する大きな要素の一つが「選ぶ職種・分野」です。フリーランスとして高収入を得ている人の多くは、需要が高く、専門性が求められる分野で活躍しています。
たとえば、以下のような分野は報酬単価が高くなりやすい傾向があります。
- IT・エンジニア系(クラウド、セキュリティ、AI関連)
- Webマーケティング・SEOコンサルティング
- 法務・税務・財務系の士業
- データ分析・BIツールの導入支援
これらの分野は、企業の課題解決に直結するため、成果報酬や月額契約で高単価を提示されることが多いです。もし現在の職種が低単価の案件に偏っているなら、収入構造そのものを見直すのが年収アップの近道になります。
スキルアップ・資格取得を続ける
フリーランスにとって、スキルは最大の資産です。市場価値を高めるには、継続的なスキルアップと資格取得が欠かせません。トレンドに合わせた学習を怠らず、時代のニーズに応じたスキルを身につけることで、より高単価な案件への参画が可能になります。
例えば:
- エンジニアであればAWS認定資格やPythonなどの言語習得
- マーケターであればGoogle広告認定資格やGA4の分析力
- デザイナーであればUI/UXの専門知識やFigmaの活用技術
- ライターであればSEO、構成力、取材対応力の強化
これらを学びながらポートフォリオや実績を更新し続けることで、「選ばれるフリーランス」になることができ、報酬交渉も有利に進められます。
フリーランスエージェントの活用

高収入を目指すフリーランスが活用している手段のひとつが「フリーランスエージェント」です。エージェントを通じて企業と業務委託契約を結ぶことで、月額単価50万円〜100万円の案件を継続的に受注することが可能になります。
代表的なエージェントには以下のようなものがあります。
- レバテックフリーランス
- ITプロパートナーズ
- CrowdTech
- MidWorks
- PE-BANK
これらのサービスは、営業活動や契約処理、トラブル対応までサポートしてくれるため、本業に集中しやすくなるという利点もあります。ただし、マージン(手数料)が引かれる点には注意が必要ですが、それを補って余りある案件単価の高さが魅力です。
高単価案件の受注や実績づくり
単価を上げるには、「価格交渉できる立場」に立つことが重要です。そのためには、これまでの実績を明確に可視化し、信頼感を高める工夫が必要です。
具体的には以下のような取り組みが効果的です。
- 自身のサイトやSNSで実績・成果物を公開
- ポートフォリオを定期的にアップデート
- お客様の声や事例紹介を掲載
- 提案書や見積もりでプロとしての姿勢を示す
また、高単価の案件を獲得するためには、単発よりも継続契約を狙うのが効果的です。長期的な信頼関係を築きやすく、収入の安定にもつながります。
経費の見直しと節税で手残りを増やす
フリーランスの年収アップは「売上を増やすこと」だけではなく、「手元に残る金額を増やすこと」でも実現可能です。特に重要なのが経費の見直しと節税の工夫です。
以下のような取り組みで、実質的な手取りを増やせます。
- 青色申告による65万円控除の活用
- 小規模企業共済・iDeCoなどの所得控除の活用
- 必要経費の正確な計上と家事按分
- 領収書・帳簿の管理をクラウド会計で効率化
また、一定以上の年収に達した場合には法人化を検討することで、社会保険料や所得税の節税にもつながります。手取りを最大化するためには、税理士に相談しながら適切な節税対策を行うことが大切です。
参考:フリーランスって稼げるの?年収は?フリーランスのメリット・デメリットとその実態
フリーランスの年収に関わる税金と節税の基本

フリーランスとして活動する上で避けて通れないのが「税金」の問題です。会社員とは異なり、フリーランスは自ら所得を申告し、各種税金を納める必要があります。年収を正しく把握し、効率よく手元にお金を残すには、税金の仕組みを理解した上で、効果的な節税対策を講じることが不可欠です。この章では、フリーランスに関わる代表的な税金と、知っておきたい節税の基本について解説します。
所得税・住民税・個人事業税の計算方法
フリーランスが支払う税金のうち、もっとも基本となるのが「所得税」「住民税」「個人事業税」です。これらは年収(売上)から経費を差し引いた「所得」に対して課税されるため、正確な計算が求められます。
- 所得税
所得税は国に納める税金で、課税所得に応じて5〜45%の累進課税が適用されます。控除を活用し、課税所得を下げることが節税のポイントです。 - 住民税
住民税は都道府県・市区町村に納める地方税で、一律10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)が基本。前年の所得に基づいて課税されるため、翌年の納税を見越した資金管理が重要です。 - 個人事業税
特定の業種(サービス業、コンサル、デザインなど)に該当する場合、年間所得290万円を超えると、3〜5%の個人事業税が課されます。対象外の業種もあるため、自分の業種が該当するかは自治体のHPで確認しておくとよいでしょう。
これらの税額は青色申告特別控除(最大65万円)や各種所得控除を活用することで抑えることが可能です。
消費税とインボイス制度の影響
フリーランスにとって、もうひとつ大きな税金が「消費税」です。消費税は本来、事業者が売上に上乗せして預かり、国に納める仕組みですが、免税事業者(前々年の売上が1,000万円以下)であれば納税義務はありません。
しかし、2023年10月に導入されたインボイス制度により、免税事業者の立場が変わりました。インボイス(適格請求書)を発行できないと、取引先が仕入税額控除を受けられず、結果として非課税のフリーランスが仕事を失うリスクも出てきたのです。
そのため、多くのフリーランスが課税事業者として登録(インボイス発行事業者)する動きが進んでいます。ただし、これにより消費税の納税義務が発生し、たとえば年間売上が800万円・課税売上700万円だった場合、約70万円程度の消費税納税が発生する可能性があります。
インボイス制度への対応は、収入の継続性と節税負担のバランスを見ながら判断する必要があります。
控除・経費を活用した節税方法
フリーランスが節税するためのもっとも基本的な方法は、「控除の最大活用」と「経費の正しい計上」です。以下の対策を実践することで、課税所得を減らし、結果として納める税金を軽減できます。
所得控除の活用
- 基礎控除(48万円)
- 青色申告特別控除(最大65万円)
- 社会保険料控除(国民年金、健康保険)
- 小規模企業共済やiDeCoなどの所得控除
- 扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除など
これらを適切に申告することで、実質的な税負担を大きく抑えることが可能です。
経費の見直しと家事按分
事業に必要な支出は「経費」として計上でき、所得を圧縮する=税金が減るという仕組みです。たとえば、パソコン代、通信費、ソフト代、書籍、打ち合わせの交通費などが対象となります。自宅兼事務所であれば、家賃や光熱費の一部も「家事按分」により経費として認められます。
会計ソフトの活用
仕訳や帳簿管理を効率化するには、会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)の導入が効果的です。自動連携や青色申告書類の作成機能があるため、節税と同時に作業時間も削減できます。
参考:【2024年版】フリーランス職種別年収ランキング!フリーランスの給料や年収を紹介
【年収別】シミュレーションで見るフリーランスの手取り額

フリーランスとして活動する際、見た目の年収だけでなく「実際に手元に残る金額(手取り)」を把握することが重要です。なぜなら、フリーランスは会社員と異なり、税金や社会保険料をすべて自分で負担する必要があるからです。さらに、事業にかかる経費も年収から差し引かれるため、額面年収と手取り額には大きな差が生じます。
ここでは、年収300万円・500万円・800万円・1000万円の場合に、どの程度の手取りが見込めるのか、税金や保険料を含めたシミュレーションを通じて解説します。
年収300万・500万・800万・1000万のシミュレーション
以下は、フリーランスとしての活動を前提に、一般的な経費率や控除額を想定して試算したシミュレーションです(青色申告特別控除65万円適用、扶養なし、インボイス制度対応済みの前提)。
年収300万円の場合
年収500万円の場合
年収800万円の場合
年収1000万円の場合
税金・保険料・経費を差し引いた実際の収入
これらのシミュレーションからも明らかなように、フリーランスの実質手取りは、年収の70〜80%前後に収まることが多いです。ただし、以下のポイントによって手取り額は大きく変動します。
- 経費の使い方:パソコン、ソフト、通信費、外注費などを適切に経費化できれば、所得を圧縮できます。
- 控除の活用:青色申告、iDeCo、小規模企業共済などを活用することで、課税所得をさらに減らせます。
- 社会保険料:所得に連動するため、年収が上がると保険料も増加します。
- インボイス登録の有無:課税事業者になれば消費税の納税が発生しますが、取引継続や信頼確保のためには必要になる場合もあります。
また、一定の年収を超えた段階で「法人化(マイクロ法人化)」を検討することで、社会保険や税金の負担を抑える選択肢も見えてきます。フリーランスとして収入が安定してきたら、単なる売上アップだけでなく、手取りを最大化する仕組みづくりが重要です。
参考:【2025年版】フリーランスの平均年収は?働き方別・職種別の収入ランキングをご紹介
よくある質問

Q.フリーランスの年収1000万円を目指すには?
フリーランスとして年収1000万円を達成するには、単価の高い職種を選び、専門性と実績を積み上げることが重要です。特にエンジニア、ITコンサル、マーケター、士業などは高単価案件が豊富であり、月単価80万円以上の案件に年間12ヶ月稼働することで現実的に到達可能です。また、営業力やブランディング、フリーランスエージェントの活用も年収アップに直結します。
Q.フリーランスの平均年収は高い?低い?
フリーランスの平均年収は、調査によって異なるものの300万〜600万円程度がボリュームゾーンとされています。会社員と比べて高いと感じるかは業種や働き方によりますが、実際は「高収入の一部」と「低収入の多数」に分かれる傾向があり、平均だけでなく中央値や分布を見て判断することが大切です。
Q.年収が増えたら法人化したほうが得?
年収が800万円〜1000万円を超える頃からは、法人化を検討するメリットがあります。法人にすることで社会保険の切替ができ、所得分散や経費処理の幅が広がるため、節税効果が大きくなる可能性があります。ただし、法人設立や維持にコストがかかる点、事務手続きが煩雑になる点も踏まえた上で検討が必要です。税理士への相談が効果的です。
Q.フリーランスは稼げないって本当?
「フリーランスは稼げない」というのは一部の事例に基づくイメージであり、適切な戦略とスキルがあれば十分に稼ぐことは可能です。実際、フリーランスとして活躍し、年収1000万円以上を稼ぐ人も多く存在します。逆に営業力や継続案件の確保ができない場合、収入が不安定になるのも事実です。稼げるかどうかは“仕組み”と“継続的な努力”にかかっています。
参考:【2025年版】フリーランスの平均年収は?働き方別・職種別の収入ランキングをご紹介
フリーランスの年収を正しく理解してキャリアに活かそう

フリーランスの年収は、働き方や職種、スキル、営業力などによって大きく変動します。一見、自由度の高い働き方に見えますが、税金や保険料などの負担も自ら管理する必要があり、実際の手取り額は年収よりも低くなることが多いのが現実です。
しかし、年収の構造を理解し、単価の高い分野に挑戦したり、スキルアップや実績作りを行ったりすることで、確実に収入を伸ばしていくことが可能です。また、節税や法人化といった手段を活用することで、効率的に手元に残る金額を増やすこともできます。
フリーランスという働き方にはリスクもありますが、その分、自分次第で収入を大きく伸ばせるチャンスがあります。年収を正しく把握し、戦略的に行動することで、より安定したキャリアを築いていきましょう。