個人事業主はパソコン代を経費にできる?計上のやり方や注意点を解説

パソコンは多くの個人事業主にとって欠かせない業務ツールですが、「この購入費用は経費にできるの?」と疑問を持つ方も少なくありません。実際、事業用途で使用していればパソコン代は経費として計上可能ですが、金額や使用目的によって処理方法が異なります。本記事では、パソコン代を経費にする際の判断基準や計上方法、減価償却や按分のポイント、注意すべき点についてわかりやすく解説します。
パソコン代は経費にできる?個人事業主が押さえるべき基本

個人事業主として事業を行ううえで欠かせないのがパソコンです。事務作業、顧客とのやり取り、請求書の作成、Webサイトの更新など、パソコンは多くの業務に必要不可欠な道具となっています。そんなパソコン代が経費として計上できるのかどうかは、多くの個人事業主が気になるポイントです。
結論から言えば、パソコン代は事業に必要な支出であれば経費として計上することが可能です。ただし、すべてのケースで経費にできるわけではなく、パソコンの用途や購入金額、使用状況などによって扱い方が異なります。ここでは、個人事業主がパソコン代を経費に計上する際に知っておくべき基本的なルールや考え方を解説します。
経費にできるパソコンの条件とは
まず大前提として、パソコン代を経費にするには「事業のために使用していること」が必要です。つまり、プライベートでの利用を主とするパソコンは経費にできません。パソコンを経費として認めてもらうためには、業務に使用していることを明確に説明できる必要があります。
たとえば以下のようなケースであれば、パソコン代は経費として認められる可能性が高くなります。
- Webデザイナーが業務用として使用するパソコン
- ライターが記事作成やクライアントとの連絡に使うパソコン
- 税理士が会計ソフトを使用して業務を行うためのパソコン
一方で、同じパソコンをプライベートにも使っている場合は「家事按分(かじあんぶん)」を行い、業務使用割合に応じた金額だけを経費に計上する必要があります。たとえばパソコンの使用時間のうち60%が事業用、40%が私用であれば、購入費の60%を経費として計上する形になります。
さらに、事業開始前にパソコンを購入していた場合でも、開業届を提出し、事業に使用していることが明確であれば、「開業費」として計上することが可能です。ただし、領収書や使用開始時期などの証拠をしっかりと残しておくことが重要です。
勘定科目は何を使う?
パソコンを経費として計上する際には、会計処理上の「勘定科目」の選定が必要になります。勘定科目は、パソコンの購入金額や会計処理の方法によって異なります。
10万円未満の場合:消耗品費
取得価額が10万円未満のパソコンは、「消耗品費」として一括で経費計上が可能です。この場合、減価償却の必要はありません。購入した年に全額を費用として計上できるため、処理もシンプルで節税効果も即座に得られます。
10万円以上の場合:資産計上が必要
パソコンの取得価額が10万円以上の場合は「固定資産」として扱い、「減価償却」を行う必要があります。減価償却とは、資産を複数年にわたって少しずつ費用計上していく会計処理のことです。勘定科目としては「工具器具備品」や「減価償却費」が使われます。
なお、青色申告をしている個人事業主は、30万円未満のパソコンについて「少額減価償却資産の特例」を適用すれば、一括で経費計上が可能になります。この特例を使うと、原則的には複数年にわたる減価償却が必要な資産でも、購入年に全額を経費とすることができます。
その他の費用はどう扱う?
パソコンの購入に付随する以下のような費用も、条件を満たせば経費にできます。
- ソフトウェアの購入費用(業務で使用する場合)
- パソコン設定費用やデータ移行サービス費用
- 外付けハードディスク、モニター、キーボードなどの周辺機器
これらは「消耗品費」または「通信費」などとして処理することが多く、金額や使用目的によって判断されます。
参考:個人事業主はパソコン代を経費にできる? 計上方法や注意点を解説
金額別で異なる!パソコン代の経費計上方法

個人事業主がパソコン代を経費に計上する際は、「購入金額」によって処理方法が大きく異なります。10万円未満か、それ以上か、そして青色申告の有無によって適用できる制度も変わってきます。
ここでは、購入金額別に経費処理のルールを整理し、それぞれの計上方法について詳しく解説します。特に10万円以上のパソコンについては複数の選択肢があり、どの処理を選ぶかによって節税効果や会計処理の手間も変わるため、自身の状況に応じて適切な方法を選びましょう。
10万円未満のパソコン:消耗品費で一括計上
パソコンの購入金額が10万円未満(税抜)であれば、「消耗品費」として一括で経費に計上することができます。これは会計処理上も非常にシンプルで、当年度の経費として全額を計上できるため、すぐに節税効果を得ることが可能です。
例
税抜価格が98,000円のノートパソコンを購入した場合、消耗品費として98,000円をその年の経費として処理できます。
この場合、固定資産として管理する必要がないため、減価償却の計算や資産台帳の作成も不要です。ただし、税込で10万円を超えると、経費としての処理が複雑になるため、「税抜価格」で判断する点に注意が必要です。
10万円以上20万円未満のパソコン:3つの処理方法
パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合、以下の3つの処理方法が選べます。どの方法を選ぶかは、申告の種類(青色か白色か)や事業主の方針によって異なります。
減価償却で処理する
原則的な処理方法は「減価償却」です。パソコンの法定耐用年数は4年とされており、毎年均等に償却していくのが基本です。
たとえば、パソコンを16万円(税抜)で購入した場合、4年間で毎年4万円を減価償却費として経費に計上していくことになります。
- 【勘定科目】:工具器具備品(資産計上)、減価償却費(費用計上)
- 【備考】:事業用と私用の兼用なら按分計算が必要
一括償却資産として処理する
白色申告者や青色申告者に関わらず、取得価額が10万円以上20万円未満の資産は「一括償却資産」として処理することも可能です。この方法では、3年間で均等に償却することができ、法定耐用年数よりも早く全額を経費計上できます。
16万円のパソコンを一括償却資産として処理する場合、各年に約5.33万円ずつ償却します。
- 【メリット】:減価償却よりも早く費用計上できる
- 【デメリット】:初年度に全額計上はできない
少額減価償却資産の特例を使う(青色申告者限定)
青色申告をしている個人事業主に限り、30万円未満の資産については「少額減価償却資産の特例」を適用できます。この制度を使えば、本来は数年にわたって費用計上すべき資産を、購入した年に全額を一括で経費計上することが可能になります。
この特例の適用には、以下の条件があります。
- 資産の取得価額が30万円未満であること
- 年間の合計金額が300万円まで
- 青色申告者であること
この方法は、減価償却の手間を省きつつ節税効果を最大限に高めたい場合に非常に有効です。
参考:個人事業主はパソコンを経費にできる?購入金額別で計上処理を解説
20万円以上30万円未満のパソコン:処理方法の選択肢

20万円以上30万円未満のパソコンについても、青色申告をしている個人事業主であれば、少額減価償却資産の特例を適用して一括で経費計上することが可能です。
たとえば、25万円のパソコンを購入した場合でも、年間300万円の上限内であれば、その年の経費として25万円を全額計上できます。
一方で、この特例を使用しない場合は、以下の2つの選択肢があります。
- 法定耐用年数(4年)に基づいて減価償却する
- 資産管理台帳に登録し、耐用年数の途中で売却や廃棄を行った場合に対応する
この金額帯のパソコンは、スペック的にも業務用として中核を担うモデルが多く、使用頻度や利用目的に応じて最適な会計処理を選ぶことが重要です。
30万円以上のパソコン:資産計上と減価償却が基本
パソコンの購入金額が30万円以上になると、たとえ青色申告者であっても少額減価償却資産の特例は使えません。この場合、原則通り「固定資産」として資産計上し、法定耐用年数(4年)に基づいて減価償却を行います。
処理例
40万円のパソコンを購入した場合、4年間にわたって各年10万円を減価償却費として経費計上します。
この場合、初年度に全額を経費にできないため、節税効果は分散されますが、税務上は適正な処理となります。
注意点
- 分割払いやリース契約であっても、所有権が移転する契約であれば資産計上が必要です。
- 購入時に支払った保証費用や初期設定費用も取得価額に含める必要があります。
- プライベート利用との兼用であれば、家事按分が求められます。
30万円を超えるパソコンは、デザイナーや動画編集者、エンジニアなど専門職向けの高性能モデルに多く、業務の生産性を高める投資として有効です。ただし、会計処理においては記録・管理が複雑になるため、帳簿付けに慣れていない場合は会計ソフトや税理士の活用を検討するのも一案です。
参考:パソコンの勘定科目は?10万円・30万円など価格ごとの経費処理と仕訳例
ケース別:特殊な購入方法の経費計上

個人事業主がパソコンを購入する際、その購入方法はさまざまです。一括購入だけでなく、分割払いやリース契約、中古品の購入、複数台の同時購入といったケースもあります。これらの購入方法によっても、経費計上の方法や勘定科目は異なってくるため、正しい会計処理を理解しておくことが重要です。
分割払い・リース契約の場合の処理方法
分割払いでパソコンを購入した場合、一括で支払っていなくても、契約内容に基づいてパソコンの「所有権」が個人事業主側にある場合は、原則として資産計上が必要です。たとえば、30万円のパソコンを3回払いで購入しても、購入時点で全額を取得したとみなされるため、取得価額30万円として減価償却の対象になります。
- 所有権がある=資産計上+減価償却
- 支払方法に関係なく、購入時点の金額で処理
一方で、リース契約の場合は、リースの種類によって処理方法が異なります。具体的には次の3つの契約形態があります。
- 所有権移転ファイナンス・リース
資産計上し、減価償却を行う。分割払いに近い処理。 - 所有権移転外ファイナンス・リース
会計処理上はリース料として毎月の支払いを「賃借料」などで費用処理可能。 - オペレーティング・リース
サブスク型に近く、支払い額をそのまま「リース料」や「賃借料」として経費にできる。
リース契約の処理は複雑になりやすいため、契約内容をよく確認したうえで、必要に応じて税理士や会計ソフトのサポートを受けましょう。
中古パソコンを購入した場合の耐用年数
中古パソコンを購入した場合でも、業務用であれば経費として計上可能です。ただし、新品と違い「耐用年数」の扱いが異なります。
パソコンの法定耐用年数は通常4年ですが、中古品については次のような短縮が認められています。
- 法定耐用年数の全部を経過している場合:耐用年数は一律2年
- 法定耐用年数の一部を経過している場合:残存年数に一定の計算式を用いて耐用年数を再算定
たとえば、製造から3年経過した中古パソコンを購入した場合、残存耐用年数は1年となり、計算式に基づいて新たな耐用年数を設定します。
また、10万円未満または青色申告による少額減価償却資産の特例が適用できる金額であれば、一括で経費処理することも可能です。
中古品であっても、領収書や仕様情報、製造年・型番などを残しておくと、税務調査時にスムーズな説明が可能になります。
複数台購入した場合のポイント
個人事業主が同時に複数台のパソコンを購入するケースも少なくありません。たとえば、業務の拡大に伴いノートパソコンを2台、デスクトップを1台導入するといった場合です。
このようなケースでは、1台あたりの取得価額に注目することがポイントです。
- 各パソコンの金額が10万円未満であれば、それぞれ「消耗品費」として一括経費計上が可能
- 10万円以上30万円未満の場合は、「一括償却資産」または「少額減価償却資産の特例」での処理を検討
また、周辺機器やソフトウェア、初期設定料がパッケージとしてまとめて請求されている場合は、それらを含めた総額で判断する必要があります。
複数台まとめて購入したからといって合計額で30万円を超えていても、1台あたりの取得価額が30万円未満であれば、青色申告者なら特例適用の余地があります。ただし、年間300万円の上限には注意が必要です。
参考:パソコンの勘定科目とは? 購入時の仕訳例やポイントをわかりやすく解説!
関連費用も忘れずに!周辺機器・設定費・ソフトウェアの取り扱い

個人事業主がパソコンを業務用に購入する際、意外と見落としがちなのが「本体以外の関連費用」の存在です。実務では、パソコン本体とあわせてモニターやマウス、ソフトウェアの購入、初期設定サービスなども必要となるケースが多く、これらの費用をどのように経費として処理するかを正しく理解しておくことが重要です。
経費にできる範囲をしっかり押さえ、適切な勘定科目で処理を行えば、無駄なく節税に繋げることができます。
経費にできる周辺機器・ソフトウェアとは
パソコンとあわせて購入する周辺機器やソフトウェアも、業務目的であれば原則として経費に計上できます。以下は、代表的な「経費として認められる」周辺機器・ソフトウェアの一例です。
周辺機器の例
- モニター(外付けディスプレイ)
- キーボード・マウス・トラックパッド
- 外付けハードディスク・SSD
- プリンター・スキャナー
- ノートPCスタンド、冷却台など
- LANケーブルやUSBハブなどの接続機器
ソフトウェアの例
- オフィスソフト(Microsoft Office、Google Workspaceなど)
- 会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)
- グラフィックソフト(Adobe Illustrator、Photoshopなど)
- ウイルス対策ソフト
- プログラム開発環境(IDE)やデザインツール
これらは業務遂行に必要なツールであるため、「消耗品費」や「通信費」「ソフトウェア費」などとして経費処理が可能です。重要なのは、明確に事業用であることを示せること。たとえば、プライベート用途との共用であれば「家事按分」が必要になります。
また、購入金額が10万円を超える周辺機器(高額なモニターなど)は、固定資産として減価償却の対象になることがある点にも注意が必要です。
取得価額に含めるべき費用の範囲
パソコン本体の取得にかかる費用には、周辺機器やソフトウェアだけでなく、初期設定費用・運搬費用などの付随費用も含まれる場合があります。これらは会計上「取得価額」に含めるべき項目とされることが多く、計上方法に注意が必要です。
取得価額に含める可能性がある項目
- パソコンの初期設定費用(業者に依頼した場合)
- データ移行費用
- 配送料・設置費
- 保守契約や延長保証(内容に応じて按分または償却が必要)
- セットアップに必要な特殊ケーブルや変換アダプター
これらの費用は、パソコンの取得に不可欠な費用として「取得価額」に含めて資産計上し、減価償却を行うか、または個別に消耗品費・業務委託費などの勘定科目で処理することになります。
たとえば、パソコン本体が28万円、設定費が2万円というケースでは、合計30万円として扱うのが原則です。この場合、青色申告者が「少額減価償却資産の特例」を使いたい場合でも、合計額が30万円を超えると対象外になる可能性があるため、明細の確認と会計判断が重要です。
処理のポイントと注意点
- レシートや領収書の明細は必ず保管すること。本体と付随費用が分かれている場合、個別処理がしやすくなる。
- セット購入の場合は明細が分からないこともあるため、納品書等で内訳を確認する。
- 保守契約やサブスクリプション形式のソフトウェアは「前払費用」として処理する場合も。
業務上の必需品である以上、パソコンの周辺費用も正確に計上することで、経費の漏れを防ぎ、確定申告の精度向上につながります。節税にも直結するため、細部まで丁寧に記録を取り、根拠のある処理を心がけましょう。
参考:【事例で解説】パソコンの勘定科目とは?ケース別に購入時の仕訳例まとめ
プライベートとの兼用は要注意!家事按分の考え方

個人事業主がパソコンを経費に計上する際に、必ず意識しておくべきなのが「家事按分(かじあんぶん)」です。家事按分とは、業務用と私的利用が混在する支出について、事業に使った割合だけを経費として計上する考え方です。
とくにパソコンのように、仕事とプライベートで兼用するケースが多いアイテムは、家事按分を適切に行わなければ、経費として否認される可能性があります。ここでは、家事按分の計算方法や記録の取り方、注意すべきポイントについて解説します。
業務使用割合を明確にして按分計算
家事按分の第一歩は「業務使用割合」の把握です。つまり、そのパソコンをどの程度、業務のために使っているかを客観的に示す必要があります。
以下のような方法で、業務利用の割合を算出するのが一般的です。
使用時間に基づいて算出する方法
たとえば、1日あたりの使用時間が8時間のうち、5時間を業務用、3時間を私用とする場合、業務使用割合は「62.5%」になります。
使用日数に基づいて算出する方法
週5日は業務で使用し、週末は私用で使っているといったケースでは、業務使用割合は「約71%(5日/7日)」となります。
使用機能に基づいて按分する方法
1台のパソコンで仕事用のアカウントと私用のアカウントを分けて使っている場合、それぞれの使用状況や保存データ、アクセス履歴などから比率を出す方法もあります。
パソコン代を按分して経費計上する場合は、この「業務使用割合」に応じて、取得価額や付随費用、減価償却費もすべて案分処理する必要があります。
たとえば、30万円のパソコンを60%の業務用途で使用している場合、経費として計上できるのは18万円相当です。これを耐用年数に応じて分割し、毎年の経費とすることになります。
家事按分の記録例と注意点
家事按分を行う際は、業務利用の実態を記録として残すことが重要です。税務調査が入った場合などには、合理的な根拠をもとに按分比率を説明できなければ、経費として認められないリスクがあります。
記録の取り方の例
- 使用時間を記録するアプリやツール(例:RescueTime、Togglなど)を活用する
- 使用日や時間帯をエクセルで簡単にメモしておく
- クラウドサービスのログイン履歴や操作ログを保存する
- 事業用と私用で使用するソフトやフォルダを分けておく
按分処理での注意点
- 安易に「50%」などの一律割合で処理しない(根拠が求められる)
- 年ごとに利用状況が変わる場合は、毎年割合を見直す
- 少額の支出でも、繰り返すと合算金額が大きくなるため、丁寧に処理する
また、帳簿上の処理だけでなく、確定申告書類(青色申告決算書や収支内訳書)においても、事業経費の根拠が問われる場面があるため、普段から証拠を整えておくと安心です。
参考:個人事業主はパソコンを経費にできる?勘定科目や処理の方法も解説!
青色申告で節税効果を高めよう

パソコン代を経費にするだけでなく、より高い節税効果を狙うのであれば、「青色申告」を活用するのが有効です。青色申告には最大65万円の特別控除や専従者給与の経費計上など、個人事業主にとってメリットが大きく、なかでも注目すべきなのが「少額減価償却資産の特例」です。
通常、10万円以上のパソコンは減価償却を行い、複数年にわたって費用計上する必要がありますが、この特例を使えば、30万円未満のパソコンでも購入した年に一括で経費として処理できます。ここでは、この制度の活用条件と申告手続きの効率化に役立つ会計ソフトについて解説します。
少額減価償却資産の特例を活用する条件
青色申告をしている個人事業主であれば、「少額減価償却資産の特例」により、30万円未満のパソコンを購入した場合、取得した年に全額を経費として計上することが可能です。この制度を使えば、耐用年数による減価償却の手間を省きつつ、即座に節税効果を得られます。
適用条件
この特例を活用するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 青色申告をしていること(承認申請書の提出済み)
- 取得価額が1台あたり30万円未満(税抜)の資産であること
- 事業の用に直接供されるものであること(業務用)
- 1年間でこの特例を使って経費計上できる合計額は300万円まで
たとえば、1台28万円のパソコンを2台購入しても、合計56万円なので特例の対象となります。ただし、仮に複数台の合計が300万円を超える場合、超えた分については通常の減価償却で処理する必要があります。
また、注意点としては「取得価額に付随費用が含まれる」ことです。設定費用や配送費などを含めて30万円を超えると、この特例は使えません。見積書や領収書の内訳を確認し、合計金額の扱いに気をつけましょう。
確定申告ソフトを使えば申告もスムーズ
青色申告の手続きや減価償却の処理は複雑に思われがちですが、近年はクラウド型の確定申告ソフトを活用することで、大幅に効率化することができます。
代表的な確定申告ソフトには以下のようなサービスがあります。
- freee会計:自動仕訳機能が充実。銀行口座・クレジットカードと連携し、取引を自動分類。青色申告決算書や確定申告書類も自動で作成。
- マネーフォワードクラウド確定申告:UIがわかりやすく、レポート機能も充実。スマホからの入力・申告にも対応。
- やよいの青色申告オンライン:初心者向けに特化し、帳簿付けが初めての人でも安心して使える構成。低価格でスタートしやすい。
これらのソフトを使えば、以下のような処理がスムーズに行えます。
- 減価償却の自動計算
- 少額減価償却資産の特例適用チェック
- 青色申告決算書の自動作成
- e-Taxへの対応(電子申告も可能)
とくに少額減価償却資産の特例については、条件を満たしている資産を自動で判別し、適用可能かを確認してくれる機能も備わっているため、制度を正しく活用するうえで非常に便利です。
さらに、ソフトには業務割合を入力して家事按分を反映する機能もあり、パソコンのような兼用機器の処理にも対応可能。経理作業にかかる時間を削減し、申告ミスを防ぐという点でも、導入のメリットは大きいといえるでしょう。
青色申告の制度は、正しく活用すれば個人事業主にとって強力な節税手段となります。パソコンなどの業務用資産を購入する際は、30万円未満かどうかを意識し、少額減価償却資産の特例の活用を検討しましょう。さらに、会計ソフトを併用すれば、複雑な計算や帳簿作成も自動化され、経理初心者でも青色申告の恩恵を十分に受けることができます。
参考:パソコンは経費計上できる?勘定科目や処理方法を紹介!【個人事業主・法人必見】
個人事業主がパソコンを経費にするにあたってよくある質問

パソコン代の経費計上については、個人事業主だけでなく、副業や開業準備中の方からも多くの疑問が寄せられます。ここでは特に質問の多い3つのポイントを取り上げ、わかりやすく解説します。
サラリーマンの副業でもパソコンは経費にできる?
はい、副業であっても事業としての活動実態があり、業務のためにパソコンを使用している場合は経費にできます。たとえば、Webライターや動画編集者、アフィリエイト運営など、報酬を得る活動を行っているケースが該当します。
ただし、給与所得と事業所得は区別されるため、「副業が事業所得に該当すること」が前提です。具体的には、継続性・独立性があり、反復して収益を得ているかどうかが判断基準となります。
また、パソコンを本業と兼用している場合は、家事按分を適用して業務利用分のみを経費に計上する必要があります。按分の割合を明確に記録しておけば、税務署にも説明しやすくなります。
開業前に購入したパソコンは経費になる?
開業前に購入したパソコンも、事業に使用する目的であれば「開業費」または「事業用資産」として経費に計上可能です。パソコンを購入した時点では事業を開始していなくても、後に開業届を提出し、事業に使用していることが明確であれば問題ありません。
処理方法は以下の2つの選択肢があります。
- 開業費として「繰延資産」に計上し、任意のタイミングで償却
- 減価償却資産として耐用年数に基づき費用計上
いずれの場合も、領収書や購入日時、使用目的が確認できる書類を保管しておくことが重要です。購入日と開業日の関係性を証明できるように、帳簿やメモも準備しておきましょう。
領収書がないときの対処法は?
パソコンの購入時に領収書を紛失した場合でも、以下のような代替資料があれば、経費として認められる可能性があります。
- クレジットカードの明細やネットバンキングの利用履歴
- ECサイト(Amazonや楽天など)の購入履歴・注文履歴
- 納品書や保証書、パッケージに記載された情報
- 販売店が発行する再発行領収書(対応可能な場合)
領収書がない場合は、支払日・支払先・金額・商品内容が特定できる証憑類をセットで保管することが重要です。また、摘要欄や帳簿に「○月×日 Amazonでパソコン購入」などと記録を残しておくことで、税務署に対しての説明責任を果たしやすくなります。
参考:個人事業主必見!パソコン代を経費として計上する方法をわかりやすく解説
まとめ:パソコンの経費計上は「金額」と「使い方」で決まる

個人事業主がパソコン代を経費に計上するためには、「金額の区分」と「業務での使用実態」が重要なポイントです。10万円未満であれば消耗品費として一括計上が可能ですが、それ以上になると減価償却や特例の適用が必要になります。
また、プライベートと兼用している場合には家事按分を行い、業務に使った割合だけを経費として処理する必要があります。青色申告を活用すれば、30万円未満のパソコンも一括で経費にできるなど、節税効果をさらに高めることも可能です。
パソコン本体だけでなく、周辺機器や設定費用、ソフトウェアなども事業用であれば経費対象になります。帳簿付けや確定申告が不安な方は、クラウド会計ソフトの導入も検討し、手間なく正確な処理を心がけましょう。適切な処理を行うことで、無駄のない節税と信頼性の高い経理が実現できます。