個人事業主は車の購入費用を経費にできる?仕訳や節税の方法を解説

個人事業主として車を事業に使用している場合、その購入費用を経費にできるケースがあります。ただし、全額を一括で経費にできるわけではなく、使用割合や減価償却のルールに基づいた処理が必要です。正しく仕訳すれば節税効果も期待できますが、判断を誤ると税務調査の対象となることも。本記事では、車の購入費用を経費にする方法や仕訳のやり方、節税につながるポイントをわかりやすく解説します。
個人事業主でも車は経費にできる?基本ルールを解説

個人事業主が事業に使用する目的で車を購入した場合、その購入費用や関連費用は経費として計上できます。ただし、すべての車が経費になるわけではなく、いくつかの条件やルールを満たしている必要があります。この記事では、個人事業主が車を経費にできる基本的な条件や判断基準について解説します。
経費にできる車の条件とは?
まず大前提として、車を経費として認めてもらうには、「その車が事業のために使用されていること」が必要です。たとえば、下記のようなケースは経費計上の対象になります。
- 取引先への訪問や打ち合わせに使用する営業車
- 商品の仕入れ・配送に使用する車両
- 顧客の送迎や現場への移動に必要なサービス提供用の車
このように、事業と直接的な関係がある用途で使われる車であれば、購入費用だけでなくガソリン代・車検代・保険料といった維持費も経費として扱えます。
一方で、「家族の送迎」「旅行」「私用での買い物」など、事業と無関係な用途で使っている車については、当然ながら経費としては認められません。
また、車を購入した場合は「車両運搬具」として固定資産に計上し、減価償却で分割して経費化するのが原則です。ただし、取得価額が30万円未満の車であれば、特例により一括で経費計上することも可能です(青色申告者の場合は10万円以上30万円未満の少額減価償却資産の特例を利用可能)。
プライベート利用がある場合は「家事按分」が必要
個人事業主が使う車は、「仕事専用」だけでなく「仕事とプライベートの兼用」というケースも多いでしょう。このような場合は、全額を経費にすることはできず、「家事按分(かじあんぶん)」という処理が必要になります。
家事按分とは、業務で使った割合に応じて経費計上する方法です。たとえば、月に100km走ったうち、60kmが仕事の移動だった場合、その割合(60%)に応じてガソリン代や保険料などを経費にします。
家事按分を適切に行うには、以下のような「合理的な根拠」を残しておくことが重要です。
- 運行記録簿(日々の移動目的・距離を記録)
- カーナビの走行履歴
- ガソリン給油記録と走行距離の対比
- カレンダーや業務報告書と照合できる情報
国税庁も、合理的な算定方法に基づいて按分されているかどうかを重視しています。曖昧な按分は税務調査で否認される可能性があるため、できるだけ明確なデータを用意しておくことが重要です。
なお、家事按分は各費用ごとに個別に行う必要があります。ガソリン代は60%、保険料は70%、車検費用は50%など、使用実態に応じて按分率を調整することが認められています。
名義は本人または同一生計の家族であることが前提
もう一つの重要なポイントが、「車の所有者の名義」です。税法上、経費として認められるのは、原則として本人名義または同一生計の親族名義の車に限られます。
たとえば、以下のようなケースでは注意が必要です。
- 親の名義になっている車を借りて業務に使用している
- 配偶者の名義でローンを組んだ車を事業用に使っている
- 法人名義の車を個人事業で使っている
これらのケースでも実態として本人が購入費用や維持費を負担し、事業で継続的に使用していることが明らかであれば、一定の条件のもとで経費計上が認められることもあります。
ただし、税務署から名義と実態の乖離を指摘されるリスクが高くなるため、できるだけ「自分自身の名義」で購入した車を使うのが無難です。
また、家族の名義の車であっても、「同一生計」であることが証明できれば、按分などを前提に経費化が可能な場合もあります。例えば、配偶者名義の車を共用しつつ、個人事業で主に使用しているというケースなどです。このような場合には、家族の収入証明や扶養関係を証明できる書類も保存しておくと安心です。
参考:個人事業主の新車・中古車の経費はいくらまで?一括で経費にできる?減価償却を解説
車の購入方法別に見る経費計上のポイント

個人事業主が車を購入して経費に計上する場合、その購入方法によって経費処理のルールが異なる点に注意が必要です。車は高額な買い物となるため、「現金での一括購入」「ローンでの購入」「カーリースでの利用」など、資金繰りや節税の観点からも慎重に選ぶべきポイントがあります。
ここでは、購入方法ごとの経費計上の仕組みと注意点、中古車・新車の違いによる節税効果について解説します。
現金一括購入の場合の注意点
個人事業主が車を現金一括で購入した場合、その購入費用の全額をその年の経費として一括計上することはできません。車両は固定資産に該当するため、減価償却という会計処理によって、数年に分けて経費化する必要があります。
たとえば、普通自動車の法定耐用年数は6年、中古車であれば耐用年数が短くなるため、減価償却期間も短縮されます。減価償却の方法としては、以下の2種類があります。
- 定額法:毎年同じ額を経費にする方法(青色申告・白色申告ともに可)
- 定率法:初年度に多く、年々少なく償却していく方法(青色申告者のみ選択可)
また、取得価格が30万円未満の車であれば、青色申告者の場合は「少額減価償却資産の特例」により一括で経費計上することが可能です。白色申告者の場合でも、10万円未満であれば消耗品費として処理できます。
購入金額が大きい車については、事前に減価償却の期間と金額をシミュレーションしておくことが、資金繰りの安定や節税計画の鍵となります。
ローンで購入した場合|利息の取り扱いに注意
ローンを利用して車を購入した場合も、原則として減価償却によって本体価格を分割計上します。現金購入との違いは、支払う利息部分も経費にできるという点です。
このとき注意すべきポイントは、以下の2点です。
- 車両本体価格は固定資産(車両運搬具)として資産計上し、減価償却を行う
- ローンの利息部分は「支払利息」としてその年の経費にできる
たとえば、年間の支払いが60万円で、そのうち10万円が利息分である場合、その10万円のみがその年の経費(支払利息)となり、残りの車両代金は減価償却で分割計上されます。
また、ローンで購入した車の名義が金融機関(ディーラーローンなど)になっている場合でも、実質的に使用し、支払いを行っているのが個人事業主本人であることが明確であれば、経費計上は可能です。
ただし、リースとの違いとして、減価償却が必要な点や、所有権移転までに制約がある点などを事前に確認しておきましょう。
参考:車にかかる費用は経費にできる?経費にする条件や仕訳例などを解説
カーリースは全額経費計上が可能?

カーリースは、車の使用に対して毎月リース料を支払う契約であり、個人事業主にとっては利便性が高く、税務処理もシンプルな選択肢です。
一般的なオペレーティング・リースであれば、毎月のリース料全額を「車両費」などの経費として処理可能です。車両本体価格の減価償却処理が不要であるため、毎年の経費が安定し、青色申告特別控除の利用にも有利に働くことがあります。
カーリースを利用する際の注意点は以下のとおりです。
- 業務での使用割合が多いことが前提(家事按分が必要な場合も)
- 契約書やリース内容に業務利用目的が明記されていること
- リース料に含まれる保険料や整備費用の内訳にも注意
また、ファイナンス・リースの場合は、実質的に「購入」とみなされるため、減価償却処理が必要となるケースもあります。契約書の内容をもとに、どのタイプのリース契約なのかを必ず確認しましょう。
最近ではトヨタの「KINTO」や日産の法人カーリースなど、個人事業主向けに最適化されたプランも増えており、車の経費処理をシンプルにしたい事業主におすすめの選択肢です。
中古車と新車、どちらがお得?
車を経費にするなら、「中古車」と「新車」のどちらが良いのか。これは減価償却期間や節税効果を考慮して選ぶのがポイントです。
まず、新車の場合の耐用年数は以下の通りです。
- 普通自動車(乗用車):6年
- 軽自動車:4年
一方で、中古車については以下のように耐用年数が短縮されるため、減価償却のスピードが速くなります。
中古車の耐用年数=(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 0.2(端数切り上げ)
例えば、新車登録から4年経過した中古車であれば、耐用年数は「(6−4)+4×0.2=2.8 → 切り上げて3年」となり、3年で減価償却が完了します。
このように、中古車は短期間で経費化が可能なため、節税の面では有利です。特に売上が多く利益が出る年度に購入することで、即効性のある節税が期待できます。
さらに、中古車は価格も比較的安いため、「30万円未満」で購入できれば、一括で経費にできる特例の対象となる可能性もあります。
ただし、中古車の状態やメンテナンスコストなども含めて総合的に判断する必要があります。事業規模や用途、資金計画に応じて最適な選択肢を見極めることが重要です。
参考:車購入費は確定申告で経費にできる? 勘定科目や仕訳方法を詳しく紹介
減価償却とは?車の購入費用の処理方法

個人事業主が事業用として車を購入した場合、その費用をすぐに全額経費にできるとは限りません。高額な資産に該当する車両は、固定資産として「減価償却」によって分割して経費計上する必要があります。とくに青色申告を選択している個人事業主にとっては、適切な減価償却処理が節税対策にもつながるため、しっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、減価償却の基本的な考え方と計算方法、耐用年数の違い、定額法・定率法の違い、一括償却が可能なケースについて解説します。
減価償却の仕組みと耐用年数の違い
減価償却とは、事業用に使用する資産の取得費用を数年に分けて経費として計上する会計処理です。たとえば、100万円の車を一括で経費にせず、数年間に分けて毎年一定額を経費化していくことで、資産の価値の減少を適切に会計に反映させます。
車の減価償却を行う際には、「法定耐用年数」に基づいて期間を決定します。耐用年数は資産の種類や状態によって異なり、主に以下のように分類されます。
- 新車の普通乗用車:6年
- 新車の軽自動車:4年
- 中古車:法定耐用年数の残年数に基づき再計算
中古車の場合は、以下の計算式で新たな耐用年数を求めます。
中古車の耐用年数=(法定耐用年数−経過年数)+(経過年数×0.2)※小数点切り上げ
たとえば、6年の耐用年数がある普通自動車を4年落ちで購入した場合は、
(6−4)+(4×0.2)=2.8 → 小数点切り上げで3年
となり、3年間で減価償却が完了します。このように、中古車は短期間で経費化できるため、節税効果を早期に得たい個人事業主にとって有利な選択肢といえます。
定額法と定率法の違いと選び方
車の減価償却には、主に「定額法」と「定率法」の2つの方法があります。個人事業主がどちらを選択するかによって、経費の配分や節税のタイミングが変わってきます。
定額法とは
定額法は、耐用年数に応じて毎年同じ金額を経費に計上する方法です。たとえば、120万円の車を6年で減価償却する場合は、年間20万円ずつ経費化していきます。
- 特徴:毎年の経費額が一定で、収支計画を立てやすい
- 対象者:白色申告者、または青色申告で特に指定のない場合は定額法が適用される
定率法とは
定率法は、取得価額に一定の償却率をかけて初年度に多く、年々少なく経費に計上する方法です。償却率は資産の種類により税法で決まっており、年数の経過とともに償却額は減っていきます。
- 特徴:初年度に多く経費化できるため、利益が多い年に有利
- 対象者:青色申告者のみが選択可能(要申請)
どちらの方法を選ぶべきかは、事業の収益状況や今後の見通しによって判断しましょう。たとえば、開業初年度に利益が大きく出そうな場合は定率法を選ぶことで初年度の税負担を軽減できる可能性があります。
なお、減価償却の方法を変更する場合には、税務署への届け出が必要となるため、慎重に選択する必要があります。
30万円未満の車は一括で経費計上できる
個人事業主が購入する車両のうち、取得価額が30万円未満のものであれば、一定の条件を満たすことで一括で経費に計上することが可能です。これを「少額減価償却資産の特例」といいます。
少額減価償却資産の特例の要件
- 青色申告をしていること
- 取得価額が10万円以上30万円未満の資産であること
- 年間300万円までの範囲で適用可能
この特例を使えば、本来は耐用年数に従って減価償却しなければならない車でも、その年の経費として全額計上できるため、即時に節税効果が得られます。
また、取得価額が10万円未満であれば、申告方法に関係なく消耗品費として一括計上が可能です。たとえば、中古の軽自動車などであれば、こうしたルールを活用できるケースも少なくありません。
ただし、注意点としては以下の通りです。
- 一括経費化をした資産でも、帳簿には記載が必要
- 同一年度内で300万円を超える場合は通常の減価償却が必要
- 青色申告承認申請書の提出が事前に必要
こうした特例は、事業規模が小さく資金繰りに余裕がない個人事業主にとって非常に有効な節税手段となるため、積極的に活用を検討しましょう。
参考:個人事業主の車購入は経費にして節税できる?仕訳や節税ポイントなどもおさえよう
車関連で経費にできるもの・できないもの

個人事業主が車を所有・使用する際には、購入費用だけでなく、さまざまな維持費や周辺費用が発生します。しかし、それらすべてが経費として認められるわけではありません。どの支出が経費計上でき、どの支出が対象外なのかを理解することは、税務リスクを避けるためにも非常に重要です。
ここでは、車に関する費用の中で経費として認められるもの・認められないものの違いや、よく使われる勘定科目・仕訳例について整理して解説します。
経費として認められる費用一覧
個人事業主が事業用に車を使用している場合、次のような費用は経費として計上することが可能です。
これらの費用は、「仕事のために必要であること」が明確であれば、家事按分などを通じて経費計上が可能となります。
経費として認められない主な支出
一方で、以下のような支出は、たとえ車に関係していても経費として認められないケースが多いため注意が必要です。
- 私用目的でのみ使用した車にかかる費用:家族の送迎、買い物、旅行など
- 交通違反の反則金・駐車違反金などの罰金類:国税庁通達で経費計上を認めないとされている
- 家族のためだけにかかったガソリン代や保険料:事業との関連性がないもの
- 高級車の過剰装備や趣味用途の改造費用:業務との因果関係が薄いもの
- 個人名義で明確に業務使用が証明できない車:名義や使用実態に一貫性がないケース
特に罰金関係は明確に「経費不可」と定められており、税務調査でも厳しく見られるポイントです。経費処理の際は、業務との関係性が説明できるかどうかを基準に判断しましょう。
よく使われる勘定科目と仕訳例
個人事業主が車関連の費用を帳簿に記帳する際には、以下のような勘定科目を使用するのが一般的です。
仕訳例:ガソリン代を現金で支払った場合(家事按分80%)
(借方)車両費 8,000円 / (貸方)現金 10,000円
(借方)事業主貸 2,000円
仕訳例:自動車税を銀行振込で支払った場合
(借方)租税公課 34,500円 / (貸方)普通預金 34,500円
帳簿記録の際には、領収書や明細書の保管が必須です。支出内容を明確にして、税務署に対しても説明可能な状態を保つようにしましょう。
参考:【税金対策】個人事業主は車を経費にして節税できる?おすすめの購入方法や計算方法を解説!
【仕訳例付き】車の購入・維持費の処理方法

車にかかる費用は「購入費用」と「維持費用」に大別されます。個人事業主として正しく経費処理を行うには、支出内容に応じた勘定科目の使い分けと仕訳のルールを理解しておくことが重要です。ここでは、車の購入方法や維持費ごとに具体的な仕訳例を紹介します。
新車・中古車を現金で購入した場合の仕訳
個人事業主が事業用として車を購入した場合、その購入費用は原則として「車両運搬具」として固定資産に計上し、耐用年数に応じた減価償却を行います。
【仕訳例:新車を現金で120万円で購入した場合】
(借方)車両運搬具 1,200,000円 / (貸方)現金 1,200,000円
減価償却を行うことで、毎年の経費として一部を計上していきます(例:耐用年数6年・定額法の場合、年間200,000円)。
【減価償却費の仕訳】
(借方)減価償却費 200,000円 / (貸方)減価償却累計額 200,000円
中古車を購入した場合は、耐用年数を短縮して減価償却できるため、早期に経費化したい場合には有利です。
ローン・リース契約の仕訳方法
車をローンで購入した場合は、車両本体価格を「車両運搬具」として資産計上し、利息部分のみを「支払利息」として経費に計上します。
【仕訳例:ローンで120万円の車を購入、初回支払いが元金10万円+利息5,000円】
(借方)車両運搬具 1,200,000円 / (貸方)未払金 1,200,000円
(借方)未払金 100,000円 / (貸方)普通預金 105,000円
(借方)支払利息 5,000円
一方、カーリース(オペレーティング・リース)の場合は、支払いの都度「車両費」などとして全額経費にできます。
【仕訳例:月額リース料40,000円を口座振替】
(借方)車両費 40,000円 / (貸方)普通預金 40,000円
ただし、ファイナンス・リースの場合は実質的に購入と見なされ、減価償却が必要となるため契約内容をよく確認しましょう。
車検・ガソリン代・保険料の仕訳例
日常的に発生する車の維持費も、事業利用分に限って経費として認められます(私用と兼用の場合は家事按分を行う)。
【仕訳例:ガソリン代10,000円を現金で支払い(80%を事業利用)】
(借方)車両費 8,000円 / (貸方)現金 10,000円
(借方)事業主貸 2,000円
【仕訳例:任意保険料30,000円をカード払い(全額事業用)】
(借方)損害保険料 30,000円 / (貸方)未払金 30,000円
【仕訳例:車検費用60,000円を口座引き落とし(70%事業利用)】
(借方)車両費 42,000円 / (貸方)普通預金 60,000円
(借方)事業主貸 18,000円
このように、使用割合に応じて適切な勘定科目と仕訳処理を行うことが、税務上の信頼性確保に直結します。記録と証拠書類の保管も忘れずに行いましょう。
参考:確定申告で自動車購入費用を経費にする方法や仕訳を個人事業主向けに解説!新車と中古車の減価償却の違いが分かる
節税効果を高めるポイントと注意点

個人事業主が車を購入・使用することで得られる節税効果は小さくありません。しかし、正しく制度を理解せずに経費計上をすると、税務調査で否認されるリスクもあります。ここでは、節税効果を最大化するための具体的なポイントと注意点を解説します。
青色申告で最大65万円控除を狙う
節税効果を高めたい個人事業主にとって、青色申告の選択は非常に重要です。青色申告者であれば、複式簿記と決算書の提出によって、最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。
さらに、青色申告者には「少額減価償却資産の特例」も適用可能です。これにより、30万円未満の車両をその年の経費として一括計上できるため、現金一括購入や中古車の取得時に大きな節税効果を得られます。
また、減価償却においても「定率法」が選択でき、初年度に多く経費を計上することで当期の利益を圧縮し、税負担を抑えることが可能です。
家事按分の根拠は記録を残しておく
車を仕事と私用で兼用している場合、「家事按分」が必要ですが、按分割合に根拠がないと税務署から否認される恐れがあります。節税を成功させるには、按分の合理性を記録として残すことがカギです。
- 運転日報やカーナビ履歴で業務利用を可視化
- 月ごとの走行距離や目的の一覧表を作成
- ガソリン代の領収書に使用目的をメモ
これらを保存しておくことで、按分割合の正当性を客観的に証明できます。記録が曖昧なまま経費にしてしまうと、税務調査時にトラブルになりやすいため注意しましょう。
節税目的での車購入に潜む落とし穴
車の購入を「節税目的」で安易に進めるのは危険です。経費にできるとはいえ、現金流出が伴うためキャッシュフローを悪化させる可能性があるからです。
また、以下のような点も落とし穴となり得ます。
- 高額な車を購入しても、減価償却で数年に分けてしか経費化できない
- 家事按分の割合が大きすぎて実質的な経費にならない
- 趣味性の強い車や高級車は、事業との関連性が問われやすい
節税を狙うなら、中古車やカーリースの利用、年度内の購入タイミング調整、青色申告の活用など、実務に沿った計画的な対策が必要です。
参考:個人事業主の車は経費にできる?仕訳の方法や注意点、節税についても解説
よくある質問

開業前に購入した車は経費にできる?
個人事業主になる前に購入した車であっても、開業後に事業用として使用していれば経費に計上することが可能です。ただし、全額を経費にするのではなく、「開業後に使用を開始した時点での時価」を基に減価償却資産として扱います。
たとえば、開業前に100万円で購入し、開業時の時価が60万円であれば、その60万円を取得価額として減価償却を行います。開業届提出後の事業用利用が明確であること、使用開始日や使用目的を記録しておくことが重要です。
また、青色申告を選択している場合は、「開業費」や「車両運搬具」としての適切な計上が求められるため、会計処理に不安がある場合は税理士に相談するのが安心です。
家族名義の車も経費にできる?
家族名義の車でも、実質的に個人事業主本人が使用し、維持費も負担している場合は、条件付きで経費計上が可能です。ただし、名義が異なることで税務署から指摘を受けやすくなるため、以下のポイントに注意が必要です。
- 同一生計の家族であることが証明できる(扶養控除などの記録がある)
- 維持費(ガソリン代・保険料・税金)を事業主が支払っている
- 業務利用の実態があり、使用履歴や按分記録が残っている
こうした条件を満たしていれば、たとえ名義が配偶者や親のものでも、合理的な範囲で経費にできる場合があります。ただし、名義変更を行うほうが後のトラブルを避けやすくおすすめです。
副業の個人事業主でも経費にできる?
会社員として働きながら副業で個人事業主として活動している場合でも、副業で使用する車にかかった費用は、業務に関連していれば経費に計上可能です。
たとえば、副業でハンドメイド商品の納品や打ち合わせ、仕入れに車を使用している場合、その移動にかかったガソリン代や駐車場代は経費対象となります。
ただし、給与所得と事業所得は明確に区別されるため、副業で使った分のみを按分して経費計上する必要があります。また、副業で使う車が家族と兼用である場合は、事業利用割合の記録(家事按分の根拠)も残しておきましょう。
参考:自動車税の勘定科目は? 仕訳方法や個人事業主の家事按分なども解説
まとめ:正しい処理で車の購入を節税に活かそう

個人事業主が車を購入・使用する際には、適切に処理することで大きな節税効果が得られます。特に、減価償却や家事按分の正しい理解と、青色申告の活用によって、経費として計上できる金額を最大化することが可能です。
一方で、処理方法を誤ると税務調査で否認されたり、余計な税負担が発生したりするリスクもあります。たとえ家族名義の車や開業前に購入した車であっても、実態に即した記録と証拠書類があれば経費化できるケースは多いため、丁寧な記帳と管理を心がけましょう。
車の経費処理はやや複雑ですが、その分、正しく活用できればキャッシュフローの改善や税負担の軽減に直結する重要な経営戦略となります。制度を理解し、正しい処理で車の購入を節税に活かしていきましょう。